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私はこう考える【死刑廃止について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1991/12/10 毎日新聞大阪夕刊
元最高裁判事、団藤重光さん 死刑廃止運動に情熱
 
 元最高裁判事の東京大名誉教授、団藤重光さん(78)が今、死刑廃止運動に情熱を注いでいる。法相に死刑執行停止を求める文書を送り、自説を発展させた新著を出版、来春にはシンポジウムに参加する。「社会運動には参加しない」といっていた刑法学の大家が、喜寿を超えて死刑制度の「壁」に挑む。
 宮沢政権が発足した翌日の十一月六日朝、団藤さんは衆院議員会館の田原隆新法相の部屋に一通のファクシミリを送った。「現行法の運用上も、死刑執行を絶無にしたいものと念願しております」「執行命令書に署名捺印(なついん)なきよう格別のご配慮を賜りたくお願い申し上げます」。数日後に店頭に並ぶ新著「死刑廃止論」(有斐閣)を参考書として紹介しながら、死刑執行の停止を求めた。団藤さんが法務大臣に死刑制度についての意見を述べるのは今回が初めて。「田原さんは理科系の方だと聞いていたので、知識を持ってから判断してもらいたかった」からだ。しかし、田原法相からの返事はない。
「死刑廃止論」が異例の売れ行き
 新著「死刑廃止論」は各国の死刑廃止論の流れを解説し、自説の理論的結論としての廃止論を展開。法律書では異例の売れ行きで、有斐閣によると、一万冊印刷した初版の在庫が三週間でほぼなくなり、再版を検討中という。
 若いころから死刑制度に疑問を持ちながらも、廃止論に踏み切れなかった団藤さんにふんぎりがついたのが二年前。八九年十月にロンドンで死刑廃止運動を続けるアムネスティ・インタナショナル本部を訪れてからだ。暗証番号を使って開ける鉄の扉を二回も通らなければ、目指す相手に会えないほど厳重な警備をしてまで活動している姿を目の当たりにした。「危険にさらされながら、私利私欲を離れ人権を守ろうとする熱意に、私も協力しなければならない」と実感した。
被告の家族から「人殺し」のば声
 最高裁判事時代、死刑判決を下した。傍聴席にいた被告の家族らしい人から「人殺し」というば声を浴びせられたことがある。状況証拠しかない裁判だったが、「合理的疑いを超える心証」のため、「誤判の危険は否定できない」と悩みながらも死刑にせざるをえないケースだった。「死刑と無期懲役の判断は、裁判官個人のセンスの問題で、裁判官によって被告の生死が分かれる。裁判に携わる多くの人が矛盾を感じているはず」「誤判の場合のやり直しがきかない死刑判決を出すことが許されるのだろうか」。こんな思いが廃止論の下敷きにある。
 「社会運動には参加しないつもりだったが、死刑問題は別。必要ならばどこへでも出向きたい」と話す。来年三月には、死刑廃止運動団体「フォーラム90」と協力、死刑問題を考えるシンポジウムを開催。一九八二年、死刑存置論が多数を占めていたなかで死刑廃止に踏み切ったフランス・ミッテラン政権下の法務大臣、バダンテール氏(現・憲法審議会議長)を招き、ともにパネリストになる。
国内では2年間死刑執行されず
 死刑廃止は世界の動きになっている。国連は一昨年、死刑廃止条約を採択し、今年七月に発効した。日本はまだ批准しておらず、「制度廃止、執行停止の具体的プログラムはない」(法務省)としているものの、同省刑事局は「国会でも取り上げられ、死刑廃止運動が盛り上がりをみせている認識はある」と来年、総務庁に世論調査を依頼する方針。
 関係者によると、国内ではこの二年間、死刑は執行されていない。
 団藤重光(だんどう・しげみつ) 岡山県出身、一九三五年東大法卒。同大学助教授、教授、法学部長、慶大教授を歴任。この間、四七年に司法省(現法務省)嘱託として、現行の刑事訴訟法の生みの親となった。七四年から八三年まで最高裁判事。「刑法綱要」「刑法紀行」(日本エッセイストクラブ賞)などの著作がある。
 
 
 
 
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