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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/07/14 毎日新聞朝刊
[クローズアップ2002]長野「ダム」要、不要論争 「予想洪水量」で対立
 
 田中康夫・長野県知事の不信任のきっかけとなった2県営ダムの建設問題。「ダムでなくては洪水を防げない」と主張する県議側と「脱ダム宣言」を掲げ「河川改修で十分」とする知事側の溝は深い。流域住民の安全、環境への影響などをめぐるダムの問題は近年、国際的にも論議されている。不信任に伴う選挙戦では、ダム問題が改めて争点となる。県民が出す結論は、ダム建設に揺れる全国の自治体にも大きな影響を与える。
【望月靖祥、柴沼均、木村健二】
◇「高級車」か「大衆車」か
 ダム問題を話し合ってきた「県治水・利水ダム等検討委員会」が、長野市の「浅川」と、下諏訪町の「下諏訪」の両県営ダムについて「河川改修単独案(ダムなし案)」という結論を出したのは6月7日だった。約1年間の審議は、ダム推進派と脱ダム派が真っ向から対立。結局、委員15人のうち過半数を占める脱ダム派の意見が採用された。
 検討委は、知事の「脱ダム宣言」に反発した県議側が、議員提案で条例を制定し設置した。
 両者が対立したのは、予想される最大の洪水量「基本高水(たかみず)流量」。洪水時に、1秒間にあふれ出る水の量として示される。
 推進派は、浅川ダムの浅川の基本高水を毎秒450トン、下諏訪ダムの砥(と)川は同280トン、脱ダム派は浅川を同350トン、砥川を同200トンと計算した。脱ダム派の主張通りなら、河川改修で洪水は防げる。推進派はこれを超えるとして、必要性を主張する。両者の計算に差が出るのは、過去の降雨量などのデータ処理や計算法が異なるからだ。専門的な内容のうえ、どちらも主張を一歩も譲らず「神学論争」と評した委員もいた。
 推進派は脱ダム派の計算法を「確立されていない」と批判する。委員の松岡保正・長野高専教授(都市計画)や県議は「こちらの計算法は、国の基準にそったもので、過去の実績もある」と話す。
 両派の論争は車にもたとえられた。乗客の安全のため、超高級の「ロールスロイス」を主張するのが推進派、「大衆車」でいいというのが脱ダム派というわけだ。
 脱ダム派委員の大熊孝・新潟大教授(河川工学)は「環境や財政問題を考えれば、いきなりロールスロイスではなく、段階を踏んだ論議が必要では」と語った。また、委員の藤原信・宇都宮大名誉教授(森林学)も「(仮に基本高水流量が推進派の計算通りでも)森林整備をして保水力を持たせて“緑のダム”にすれば、人工のダムによらず、治水と利水の効果は発揮できる」と主張する。
◇田中康夫知事「代替案これから」
 6月20日から始まった県議会。知事は理由をはっきり説明せず「基本高水は今後、再検証するまで現行通りにする」と述べ、基本高水流量を推進派の主張通りに設定した。
 これではダムが必要になるが、知事は「森林整備、遊水池の設置などの代替措置で対応できる」と説明。県議側は「遊水池の建設場所があるのか」などとただした。これに対し知事は「具体案はこれから詰める」と答えるにとどまったことから、混乱に拍車がかかった。
 検討委委員で、不信任案に賛成した浜康幸県議は「現実には遊水池をつくる場所はない。住民の生命と財産を守るにはダムしかない」と言い切る。
 知事は7月11日、県庁に「治水・利水対策推進本部」を設置した。自ら本部長になり、代替案の検討を行うという。
◇中止は安いのか
 検討委によると、2ダムの建設を続けると、浅川ダムは257億円、下諏訪ダムは236億円かかる。中止すると、それぞれ128億円、15億円で済む。しかし、これとは別に、既に受け取った国の補助金の返還などが必要になる可能性がある。検討委はその場合、浅川ダムで421億円、下諏訪ダムで40億7000万円と試算した。
 浅川ダムでは業者への補償金として、00年度分3265万円が既に支払われ、01年度分も1416万円を払う予定だ。補助金について、国土交通省河川局は「具体的な計画を聞いていないため判断できないが、従来も正当な理由があれば返還を求めていない」と話す。
◇浅川ダム事業は50%終了
 浅川と砥川は、周囲の土地より高い場所を流れる部分がある「天井川」だ。浅川では1939年に19人が亡くなる鉄砲水が起き、95年の集中豪雨でも約1000戸に避難勧告が出された。砥川も71年に床下・床上浸水(計36戸)があり、四つの橋りょうが流失した。このため、浅川ダム、下諏訪ダムは、85年と93年に事業を始めた。浅川ダムはダム本体工事の入札も終わり、事業の50%を終了している。両ダムとも地元で反対運動が起きている。知事の「脱ダム宣言」によって県内9ダムが検討対象になった。浅川、下諏訪は他ダムに比べて工事が進んでいたため、最初に審議を始めた。
◇中止なら代替案必要−−東京大の高橋裕名誉教授(河川工学)の話
 ダムの必要性をめぐる議論は、今や長野だけの問題ではない。建設地域によってダムをめぐる環境は異なり、一概に賛否は言えないが、建設中止なら代替案は必要だ。田中知事は森林整備や遊水池と言っているようだ。森林の育成は治水上も重要だが、効果が出るまでには長い時間がかかるし、効果の証明も難しい。遊水池も設置場所によっては住民移転が必要になる。
 
 
 
 
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