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私はこう考える【ダム建設について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2002/06/19 毎日新聞朝刊
[記者の目]川辺川ダム建設計画=米岡紘子(熊本支局)
◇県は独自案提示すべきだ−−住民は「反対」の流れに
 熊本県相良村に川辺川ダム建設を計画している国土交通省は「地元の賛成」を錦の御旗(みはた)に、計画を推進してきた。強固なスクラムを組み、建設を促進する流域自治体の首長は、同省にとって都合の良い存在だったが、その団結がほころび始めている。潮谷義子知事は、潮流の変化を読み取り、ダム建設問題に反映させるべきだ、と思う。
 建設推進の大きな流れが変わったのは、4月7日だ。川辺川本流の球磨川流域の最大自治体の八代市で初めてダム反対を表明する市長が誕生。5月19日には八代市での県議補選でも反対を訴えた候補が当選した。建設に伴い、漁業権の強制収用が焦点となっている球磨川漁協でも、総代選挙(定数100人)で、3分の1ほどだった反対派が半数近くにまで勢力を広げた。
 計画発表から36年。国交省は昨年末、川辺川を漁場とする球磨川漁協の漁業権収用裁決を県収用委員会へ申請した。裁決は年内にも出ると見られ、収用が承認されれば、本体着工可能となる。その着工を前に、住民が「ダム反対」の意思を示し始めた。
 一方、県民の声を代弁するはずの県だけが姿勢を明確にしていない。潮谷知事の口から出るのは、賛否いずれともとれる発言ばかりだ。民意の流れをくめば、知事は国交省にダム建設中止を求めるべきだ、と思う。
 川辺川ダムは治水を主目的にかんがい、発電も担う多目的ダムとして計画された。川辺川は、体長30センチを超えるアユが取れる日本有数の清流といわれ、建設反対の声は強かった。昨年11月、民間研究者による川辺川研究会が「河川改修で治水は可能」とするダム不要の代替案を発表、建設に疑問を投げかける動きが活発になった。
 知事は、建設と代替案のどちらが妥当な治水案かを見極めるため、国交省と研究者を論じ合わせる「住民討論集会」の開催を打ち出した。これまで2回開かれたが、議論は平行線をたどっている。23日には3回目の集会が開かれる。論議することに意義はあるが、二つの案を闘わせ「論ばくされた方が負け」という手法には無理がある。結局、もたもたしているうちに収用委は裁決を出してしまう。
 研究会の代替案は、環境や財政にも配慮している点が支持されている。多くの住民が反対するのは、ダムが川や海、流域の生態系を破壊するからだ。清流と自然の恵みを失い、残るのはただのコンクリートの塊だけになる。
 日本が近代河川工法の見本としてきた欧米では、「ダム」から「あふれさせる治水」に方向転換している。オランダのライン川では堤防に水門を造り、はんらん原に吸収させる試みをしている。ドイツのバーデン・ビュルテンベルク州でも、13の遊水地を作って洪水を防ぐ計画を進めている。川があふれることを前提とし、場所を選んで安全にはんらんさせるという、近代以前の日本が行っていた方法だ。
 国交省自体、97年の河川法改正で治水と環境の両立や、住民との対話を盛り込んだ。00年末には諮問機関「河川審議会」もあふれさせる治水への転換を答申。与党も、開発で損なわれた河川や干潟などの自然を元に戻す公共事業を促進する「自然再生推進法案」の成立を目指している。
 日本でも環境に配慮する動きが大きくなってきた。なのになぜ、国交省は川辺川ダムを強硬に推し進めるのだろうか。すでに事業費の3分の2の1749億円を費やしたからなのか。
 北海道の堀達也知事は北海道開発庁の千歳川放水路計画に対し、「千歳川流域治水対策検討委員会」を設置、検討を重ねて99年に中止に追いやった。岩手県の増田寛也知事も98年11月、国の補助金をつぎ込み8割が完成していた奥地等産業開発道路(県道)の工事中止を決めた。いずれも自然保護を訴える住民の反対が根底にあり、知事が県民の意をくみ取り、はっきりと意思を示したのだ。
 住民討論集会を始めた潮谷知事を見て「本当は反対では」と思っている県民は多いが、一方で知事は「(推進してきた)歴代知事とスタンスは変わらない」と言う。あいまいな発言は二枚舌に映る。
 「事業主体は国ですから」。何度も聞いたセリフを、知事は繰り返すのか。洪水を受けるのも清流を失うのも住民だ。県が真剣にダム問題に取り組むのなら、知事がリーダーシップをとり、自然との共生の観点を含めた独自の治水案を国に突き付けるべきだ。
 
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