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愛知県及び三重県沿岸海域における
平成15年4〜9月期のプレジャーボート海難の状況
第四管区海上保安本部交通部安全課
 
1 プレジャーボート海難の発生状況
 愛知県及び三重県沿岸海域における平成15年4〜9月期のプレジャーボート海難隻数は33隻で、前年に比べ2隻増加している。
 これらの海難により、死亡・行方不明となった人は1人で、前年に比べ1人増加している。(図1)
 
海難隻数とそれに伴う死亡・行方不明者数(4〜9月期)・図1
 
2 用途別海難の状況
 海難を起こした33隻のプレジャーボートを用途別に見ると、モーターボートが18隻(54.5%)と例年どおり最も多く、次いで水上オートバイ5隻(15.2%)、ヨット4隻(12.1%)の順となっている。
 全体では前年同時期に比べ2隻増加しており、水上オートバイが5隻減少したものの、ヨット、手漕ぎボート、ゴムボート、その他(和船等)が増加したことによる。(図2)
 
用途別海難発生状況(4〜9月期)・図2
 
3 種類別海難の状況
 海難の種類別に見ると、衝突、乗揚げがそれぞれ7隻(21.2%)と最も多く、次いで機関故障5隻(15.1%)、運航阻害4隻(12.1%)、推進器障害3隻(9.1%)の順となっており、昨年同時期とほぼ同様の傾向である。(図3)
 
海難種類別の推移(4〜9月期)・図3
 
4 原因別海難の状況
 海難の原因別に見ると、見張り不十分6隻(19%)、気象海象不注意、水路調査不十分がそれぞれ3隻(9%)、操船不適切、船位不確認がそれぞれ2隻(6%)といった運航の過誤によるものが21隻で全体の64%を占め、さらに機関取扱不注意、火気可燃物取扱不注意を加えた人為的要因によるものは26隻と全体のおよそ8割となっており、毎年同様の傾向である。(図4)
 
海難原因(4〜9月期)・図4
 
5 今年発生した特異事例海難
 今年の同時期のプレジャーボート海難で特に目を引く事例が2件あった。1件目は、7月にヨット経験半年の68歳の男性が、たった一人で日本一周を目指し、蒲郡を出港した後、和歌山県の田辺沖で消息を絶ち、巡視船艇のべ15隻、海上保安庁及び海上自衛隊の航空機10機を投入した大捜索を展開した結果、捜索開始三日目に発見され、無事に最寄りの港に入港させたといった事例である。
 1月にヨットを購入し、春頃からヨットの練習を開始し、回りの忠告を振り切って7月に出港したもので、外洋において自船の位置を把握するための航海計器として、陸上で使用するカーナビを搭載していたため、陸岸からある程度離れると画面に地図が表示されず、自船の位置が分からなくなってしまったという、無謀極まりないものであった。
 GPSの普及とともに、このような海難が全国的に増加傾向にあることから、海難審判庁においても「GPSと海難」という海難分析集が発刊されている。(その要約版を文末で紹介する。)
 2件目は、8月に連続して3件、ヨットやモーターボートが三河湾の佐久島近傍の浅瀬に乗揚げたといった事例である。
 これらは何れも水の上ならどこでも走れるといった甘い認識の下、自船位置の把握、詳細な水路調査を怠っていたことに加えて、海上標識のルールを十分理解していなかったことが原因であった。
 第四管区海上保安本部では、リーフレット等でマリーナ、プレジャーボートのオーナー等への安全指導を行うとともに、ホームページ等でも事例を紹介し、広く安全運航を呼びかけている。
参考事例
 GPS自動航跡記録装置を過信し、発生した事故事例について(四日市海上保安部)
1. 発生年月日
平成10年7月13日 午後9時30分頃
2. 発生場所
四日市港北ふ頭東側護岸築造工事現場
3. 事故船舶要目
(1)プレジャーボートA号(仮称) (2)全長8.6m (3)当時速力 約15kt
4. 事故概要
 プレジャーボートA号に船長他4名が乗船し、7月13日午前中に四日市港を出港し、日中は鳥羽港にて用務を行い、日没後の午後7時30分頃鳥羽を出港、四日市港富洲原船溜りへ帰港すべく自船に備え付けのGPSを頼りに四日市港を航行中、GPSの画面に映し出された港内の状況が正しいものと思い込み、前方の見張りを怠っていたため、GPSの画面には映っていなかった築造中の四日市港霞ヶ浦北ふ頭東側埋立地護岸に正面衝突した。
 この衝突により同乗者1名が全治6ヶ月の負傷を受け、四日市海上保安部は同船船長を業務上過失傷害等にて検察庁に書類送検した。
 
 GPS画像は、レーダーでも海図でも無く、地形、海岸線は機械作成当時の不確実な沿岸線を参考として標示した物にすぎない。







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