日本財団 図書館


熊倉 峰広(くまくら みねひろ)
(昭32.10.13生)
東京都武蔵村山市
 
 読書嫌いの生徒が、部分読みで多くの本に触れ、読後感の交換により他の生徒の異った読み方を知り、自分にとっての「名作」の発見に至る、ユニークな「味見読書」法を考案・実施され、効果を上げてこられた。
(推薦者 東村山市教育委員会)
 
Mr. Minehiro Kumakura
(Born on October 13, 1957)
Musashimurayama City, Tokyo
 
 Mr. Minehiro Kumakura has devised and introduced a unique "tasting reading method," which has been highly effective. In this method, students who dislike reading are allowed to try many books by reading parts of them, and then exchange impressions on the book to learn what other students think, thus leading to the discovery of their own "masterpiece."
 Recommended by Higashimurayama City Board of Education
 
 7年前、前任校で普段本を読まない生徒が実は読まず嫌いであることを知った熊倉教諭は、最後まで読まなくてもよい、つまらなければ他の本に移ってもよいと告げて生徒達に見合いそうな本を薦めてみた。すると終わりまで読まなくてもよいと知った生徒達は安心して読書するようになった。これが「味見読書」と名付けたユニークな読書指導が始まるきっかけとなった。
 東村山中学校で熊倉教諭が実践している味見読書は、学年毎に目標と実践方法を変え、読書に対して段階を踏んだ指導を行うことにより、読書に対する生徒の姿勢を前向きなものに変える効果を示した。
 第1学年においては、教師が15冊の課題図書を選んで、1冊づつ作者の経歴、粗筋などを授業時間に紹介する。選書の条件は、生徒が安易に飛びつく作品は避け、生徒が容易に受け入れ可能な伝統的名作か、テーマに深みがあり生徒が理解できるベストセラーであることとした。紹介が済んだ時点で15冊を3セット用意し、独自の方法で限られた時間内に生徒間で回覧、つまみ読み(味見読書)をさせ、一言感想を書かせる。生徒は必ずしも全作品に感想を書く必要はない。各自が自分にとっての「名作」を発見することが目的である。
 第2学年では、味見読書の後、短い感想文を生徒間で交換させ、同じ本を読んでも人によって様々な見方・感じ方があることを知る。読書を媒介とした生徒相互のコミュニケーションを通して自分にとっての名作発見の手がかりを得させる。
 第3学年では、味見読書の後、人生の岐路を前にした生徒達が、作品に描かれた様々な人物の生と死の姿を垣間見て感じたことをメールで交換し、自分自身の生き方を考えるきっかけとする。
 味見読書の特徴は、普段本を読まない、どちらかと言えば読書嫌いの生徒を対象にして効果を挙げているが、生徒の多くは、もっと味見読書の時間が欲しかったとの感想を述べている。少ししか読めないので余計に続きが読みたくなるのが味見読書の醍醐味であり、狙いの一つでもある。
 
 
受賞の言葉
 記念すべき第1回目の同賞を受賞させていただき、大変光栄に思っております。これまで行われてきた読書指導・読書推進というものは、なかなか日の当たらない地味な活動でしたが、この賞の設立によって多くの人達に注目されていくことを願います。私の活動がその一助になれば、これほど嬉しいことはありません。
 
 
 
田所 雅子(たどころ まさこ)
(昭29.5.10生)
静岡県田方郡
 
 こどもの読書環境改善のため自宅に「わんぱく文庫」を開設して厳選した良書を供し、幼稚園や小学校でお話会を開き、PTAや先生方に読書環境づくりの大切さを訴えるなど、こどもの読書推進に積極的に活躍されている。
(推薦者 浅田美由紀)
 
Ms. Masako Tadokoro
(Born on May 10, 1954)
Tagata-gun, Shizuoka Prefecture
 
 Ms. Masako Tadokoro has been actively promoting reading for children. To improve the reading environment for children, she has opened the "Naughty Kids' Library" at her home, which provides carefully selected good books, and also holds story-telling sessions at kindergartens and elementary schools and shows the importance of the reading environment to PTAs and teachers.
 Recommended by Ms. Miyuki Asada
 
 平成4年、天城湯が島町に転居した田所さんは、町に図書館もなく(小さな図書室はあった)、小学校の図書室は30年前と変わらぬその読書環境の貧しさに驚いた。子ども達に読ませたい本の入手も困難だった。そこで出来ることから動こうと考え、町の図書室でお話し会を始め、1年の準備の後自宅に「わんぱく文庫」を開設した。図書は、自分で買ったり譲って貰ったりして約800冊を集めた。転居前には地域文庫を開き、児童文学の専門家の下で絵本やお話について勉強していたので、子ども達にとって良い本だけを揃えたいと「わんぱく文庫」の蔵書は厳しく選び抜いた。
 田所さんは「本当に良い本は心の糧になる。子ども達が無理矢理ではなく、自分から本を読むようになれば」と考え、そのための種まきを死ぬまで続けよう、今の子どもが大人になって我が子に良い読書環境を作ってやるように、今自分に出来ることをこつこつ続け、広めて行こうと考え、活動を続けている。
 田所さんは「お話し会の出前」と称して幼稚園や小学校に出かけてお話しを聞かせ、「絵本講座」の名で学校PTAや先生方に読書環境づくりの大切さを訴え、湯が島小学校の図書の整理や図書購入のアドバイス等を行ってきた。平成8年からは「朝の読み聞かせ教室」(現「お話しの玉手箱」、週2回)を開設し、更には、仲間と勉強会を開いて、大人の資質向上を図り、子どもの文化環境を豊かにするための活動を広げている。こうした活動の結果、町の図書館や小学校の図書室に絵本が増え、3校ある町の小学校の全てに読み聞かせボランティアのPTAが活動するようになり、先生方との勉強会を継続して行うことで読書活動の普及と活発化に貢献している。
 
 
受賞の言葉
 学校図書館や子供の育つ文化環境の貧しさを何とかしたいと、十数年、様々な活動を続けてきました。それを認めて頂き、力強い励ましを頂いたと思っています。副賞で学校図書と、文庫の本を増やすことができました。これからも、これまでの活動を一層充実させ頑張って行くつもりです。
 
 







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