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第2 開示方法について
1 開示に当たっての考え方
 本研究会においては、これまで普通会計の将来的な財政負担となる事象等として、地方債のように債務として確定しているものだけではなく、債務負担行為の設定、公営事業会計等における赤字の発生、関係団体の解散に伴う未済債務の発生など、将来、普通会計において負担する可能性のある様々な事象を幅広く抽出し、法令や契約関係等に基づき、「確定債務」、「A分類」、「A’分類」、「B分類」及び「C分類」に区分し、整理・分類してきたところである。
 
 地方公共団体は、地方分権の進展に伴い、より一層の健全な財政運営を行う必要があり、そのためには、住民、議会等に対し普通会計の将来負担に関する情報を正しく理解してもらい、財政運営に関し協力を得る必要がある。そのため、開示に当たっては、住民等の視点に立った分かりやすい開示に努めるとともに、開示された数値は何を表しているのかを正しく理解してもらうことが重要であり、単に数値のみを開示すればよいのではなく、数値の持つ意味を正確かつ的確に説明することが極めて重要であると考えられる。
 具体的には、開示された数値に対し、次のような説明を行うなどして住民等の誤解を招くことのないよう配慮する必要があると考えられる。
 
 確定債務及びA分類に区分される数値については、基準日までに普通会計の債務として確定しているもの又は確定はしていないが、普通会計の負担となることが明らかなものであることを説明する必要があると考えられる。
 
 A’分類に区分されている債務保証又は損失補償に係る債務負担行為額(未確定分)については、保証先の債務不履行等が発生しなければ普通会計の負担は発生せず、また、債務不履行等が発生した場合における負担の限度額であるということを説明する必要があると考えられる。例えば、第三セクターについて、この欄に数値が計上されていても第三セクターの経営状況が良好であれば、損失補償契約に基づく負担は生じることがなく、また、第三セクターの経営状況が深刻な経営難の状況により損失補償契約の相手方である金融機関等における損害が発生し、損失補償契約に基づく負担が生じた場合であっても、損失補償に係る債務負担行為の額は負担の限度が計上されているものであって、実際に負担することとなる額は損失補償契約に基づき補てんの履行を求められる額であることを説明する必要があると考えられる。
 したがって、この債務保証又は損失補償に係る債務負担行為額(未確定分)は、保証先の債務不履行等の発生可能性等も重要な情報であることから、この発生可能性等に関する情報も併せて開示する必要があると考えられる。
 
 B分類としている公営事業会計等の実質収支赤字等の数値については、この額が直ちに普通会計の負担となるものではなく、公営事業会計等において経営の効率化や料金の適正化等により解消を図るべきものであるが、これらを実施してもなお赤字等が解消されない場合には、当該団体の判断により普通会計の将来負担となる可能性があるものであることなどを説明する必要があると考えられる。例えば、上水道事業会計において不良債務が発生しても、この額が直ちに普通会計が負担するものではなく、上水道事業会計において経営の効率化や料金の適正化等により解消を図るべきものであるが、これらを実施してもなお不良債務が解消されない場合には、当該団体の判断により普通会計が負担する可能性があるものであることを説明する必要があると考えられる。
 したがって、この公営事業会計等の実質収支赤字等の額についてはその解消の見通し等も重要な情報であることから、この解消の見通し等に関する情報も併せて開示する必要があると考えられる。
 
 C分類としている第三セクターの解散に伴う未済債務額のうち、出資の範囲内の額については、第三セクターの解散が予定されているものに限らず、基準日において、仮に第三セクターが解散した場合に発生すると見込まれる額が計上されているものであることを説明する必要があると考えられる。
 また、その解消の見通し等も重要な情報であることから併せて開示する必要があると考えられる。
 
 なお、個々の公営事業会計、関係団体の経営状況等についても併せて開示するなど、各地方公共団体全体の財政状況等を総合的に開示することも重要であると考えられる。
 この場合、第三セクターの経営状況等に関する情報については、「第三セクターに関する指針」(平成15年12月12日付総務省自治財政局長通知)に基づき、積極的かつ分かりやすい開示等に努める必要があると考えられる。
 
 1で述べた開示に当たっての考え方を踏まえ、具体的な開示方法(参考例)として「普通会計の将来負担一覧表」等を示すこととするが、これは地方公共団体の自主的な判断に基づき、普通会計の将来的な財政負担について開示する場合の参考例を示したものであり、将来負担となる事項別及び発生主体(普通会計内、公営事業会計、組合等、地方独立行政法人、地方三公社、第三セクター)別にまとめたものである。
 なお、これ以外に当該団体において、将来負担として認識しているものや開示が必要と考えられる情報がある場合には、適宜追加する必要があると考えられる。
 また、実際に開示を行う際には、単に様式のみを示すのではなく、開示の趣旨や開示対象とする個々の事項、用語等についての説明を加えるなど、できる限り住民等が理解しやすいように工夫するとともに、住民等のニーズ等に合わせ、適宜内容の充実を図る必要があると考えられる。
 
 この欄には、発生主体別に次のような金額を計上することが考えられる。
 なお、【開示データ】の記載内容は、「2 整理・分類に当たっての考え方」【金額】の再掲である(以下、各欄とも同様)。
【開示データ】
○普通会計内
・基準日における地方債残高
・基準日における他会計等からの長期借入金残高
・基準日における地方債残高について将来支払う予定の利息の総額
・基準日における他会計等からの長期借入金残高について将来支払う予定の利息の総額
○公営事業会計
・基準日における企業債残高のうち、繰出基準に基づき普通会計が負担すべき額
・基準日における企業債残高について将来支払う予定の利息の総額のうち、繰出基準に基づき普通会計が負担すべき額
○一部事務組合等
<公営事業以外の事業を実施する組合等>
・基準日における組合等の地方債残高のうち、当該団体の普通会計で負担すべき基準日の翌日以降の支出予定額
・基準日における組合等の地方債残高について将来支払う予定の利息のうち、当該団体の普通会計で負担すべき基準日の翌日以降の支出予定額
<公営事業を実施する組合等>
・基準日における組合等の地方債又は企業債残高のうち、当該団体の普通会計で負担すべき基準日の翌日以降の支出予定額
・基準日における組合等の地方債又は企業債残高について将来支払う予定の利息のうち、当該団体の普通会計で負担すべき基準日の翌日以降の支出予定額
○地方独立行政法人
・基準日における地方独立行政法人管理特別会計からの長期借入金残高のうち、負担基準(仮称)に基づき当該設立団体の普通会計が負担すべき額
・基準日における地方独立行政法人管理特別会計からの長期借入金残高について将来支払う予定の利息の総額のうち、負担基準(仮称)に基づき当該設立団体の普通会計が負担すべき額
 
(留意点)
 この欄に計上された金額は発生主体別の総額であるため、地方債残高や他会計からの長期借入金残高などの内訳については、次のような附表を併せて開示することも考えられる。
 
[附表]
 「附表1-1 他会計等からの長期借入金借入先別内訳表」において、他会計等からの長期借入金残高及び支払予定利息額について、その借入先別(各会計、基金別)の内訳を、「附表1-2 公営事業会計等が発行する地方債又は企業債(普通会計負担分)の発行主体別内訳表」において、公営事業会計等が発行する地方債又は企業債のうち、普通会計が負担すべき地方債又は企業債残高及び支払予定利息額について、その発行主体別(各会計、法人別)の内訳を記載する。







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