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4 参考(資産について)
(1)考え方
 これまで、普通会計の将来的な財政負担となる事象等として、地方債の発行や債務負担行為の設定などの「負債」的な要素について整理・分類してきたが、今回のテーマに関連し、現金等により回収できるものと見込んでいた資産が回収不能になることは、新たな支出を伴うものではないが実質的には新たな支出を行うことと同等の財政負担を生じさせると考えられることから、普通会計における「資産」的な要素についても、資産の回収可能性を把握し、参考情報として開示する必要があると考えられる。
 また、将来的な財政負担に充当可能な財源として財政調整基金の残高などの資産の額についても把握し、参考情報として開示することが望ましい。
 
 開示対象について、資産の種類(総務省方式のバランスシートに計上される資産)別に整理すると、「有形固定資産」については、売却を目的としないものが大半であることから、そもそも回収可能性の考え方が当てはまらないこと、「基金」及び「現金・預金」については、ペイオフによる預金の払戻し停止等は個々の団体において対策を講じることにより回避すべきものであること、また、税等の「未収金」については、当然に全額回収を目指すべきものであることなどから、開示対象とすべき資産は、「投資及び出資金」及び「貸付金」に限定することとする。
 なお、貸付金については、回収可能性等により一部開示対象から除外することとするがその理由は次のとおりである。
(除外理由)
 貸付金のうち、中小企業貸付金等のいわゆる制度融資については、貸付先の経営状況等により、回収不能となる場合があるため、開示する必要があると考えられるが、多数の融資先が存在し、これらの全てについての回収可能性を把握することが実務上困難であることなどから、開示対象からは除外することとする。
 
分類表
(拡大画面:137KB)
 
(開示対象とする資産)
資産の種類 開示の適否 理由
有形固定資産 対象外 売却を目的としないものが大半であり、回収可能性の考え方があてはまらないため。
基金、現金・預金 対象外 ペイオフ等については対策を講じて回避するものであるため。
未収金 対象外 当然に全額回収を目指すべきものであるため。
投資及び出資金 対象 出資金等は出資先の経営状況により回収できない場合があるため。
貸付金 対象
(一部対象外)
貸付金は貸付先の経営状況により回収できない場合があるため。
(ただし、中小企業貸付金等の制度融資については実務上困難なため対象外とする。)
 
 公営事業会計、組合等又は地方独立行政法人に対する出資金については、当該公営事業会計等の廃止等に伴い、債務の返済に充てることにより回収不能となる場合があることから、実際に廃止等を予定している公営事業会計等に対する出資金の回収不能見込額を参考情報として開示することとするが、貸付金については、既に整理したとおり、廃止等に伴い発生する未済債務を当該団体が最終的に負担する(債務を担保する)こととなるため、貸付金そのものは回収可能とみなし、開示対象からは除外することとする(図参照)。
 なお、公営事業会計等のうち非永続的な事業を行うものに対する出資金については、廃止を予定していない場合であっても、基準日における現存資産の時価(不動産鑑定評価、固定資産税評価額等合理的な算出方法に基づき算出した価格)の総額等により回収不能見込額を算定し、参考情報として開示することとする。
 
[図]
 
公営事業会計等を廃止又は解散する場合の普通会計からの出資金、貸付金の回収可能性について
 
 地方三公社又は第三セクターに対する出資金及び貸付金については、当該法人の解散に伴い未済債務が発生し、回収不能となる場合があることから、地方三公社のうち、実際に解散を予定している地方道路公社又は土地開発公社に対する出資金及び貸付金については、その回収不能見込額を参考情報として開示することとする。
 ただし、地方道路公社に対する貸付金のうち当該団体が管理する路線の新設等に要したものについては、既に整理したとおり、当該団体が最終的に負担することとなるため、賃付金そのものは回収可能とみなし、開示対象からは除外することとする。
 また、地方住宅供給公社又は第三セクターに対する出資金及び貸付金については、解散を予定していない場合であっても、基準日における資産の時価の総額(実務上困難な場合には、帳簿上の資産の総額)により回収不能見込額を算定し、参考情報として開示することとする。
 
(出資金・貸付金の開示対象)
出資先・貸付先 出資金 貸付金
公営事業会計 債務の返済に充てることにより回収不能となる場合があるため、開示の対象 回収可能とみなし、開示の対象外
一部事務組合等
地方独立行政法人
地方三公社 回収不能となる場合があるため、開示の対象
(ただし、地方道路公社に対する貸付金のうち当該団体が管理する路線の新設等に要したものについては、回収可能とみなし、開示の対象外)
第三セクター 回収不能となる場合があるため、開示の対象







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