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東京財団研究報告書2004-7 国際協力NGO活性化の方策

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


3-4. 財政
 JANIC「NGOデータブッック'98」(e: 152)によると、平均的なNGOの財政規模は2000万から3000万円である。同データブックに掲載されている368団体中、収入1億円以上のNGOは32団体あり、その上位10団体の収入合計は約100億円で、NGOセクター全体の収入の52%にも達する(e: 152)。さらに、そのうち58%を4つの国際的NGOの日本支部が占めており、これらの団体が日本で活動しているNGO全体の収入の30%を占めることになる(e: 152)。
 財務状況の現状分析をしたJANICの『国際協力NGOの体質強化支援策に関する調査研究』では、JANIC発行の『国際協力NGOダイレクトリー2000』に掲載されている387団体中、以下の基準を満たし、第一部として掲載されている238団体が対象となっている(c: 19)。
−1999年4月現在、2会計年度以上の活動の実績があること。
−1998年度の支出実績が海外協力中心型団体は300万円以上、国内での外国人支援及び教育・提言中心型団体は100万円以上、ネットワーク型団体は50万円以上の実績があること。
−財源の25%または100万円以上が自己資金(会費、寄付金、事業収入、基金運用益等)で賄われていること。
−財務状況等が広く公開されていること。
 
(表3-1)238団体の収入規模内訳
収入規模 団体数(割合)
1000万円未満 54 (23%)
1000万円以上〜2000万円未満 46 (19%)
2000万円以上〜3000万円未満 42 (18%)
3000万円以上〜5000万円未満 27 (11%)
5000万円以上〜1億円未満 29 (12%)
1億円以上 40 (17%)
  238 (100%)
出典:  (特活)国際協力NGOセンター『国際協力NGOの体質強化支援策に関する調査研究』、2001年、20ページ。
 
 表3-1をみると、収入規模が1000万円に満たない団体が238団体中54団体、すなわち23%にのぼっていることが分かる。これに、上記の条件を満たしていない第二部に掲載されている団体を合わせると、全掲載団体387団体中200団体近く(約5割)が1000万円を下回る収入規模で活動していることになる。収入規模が2億円以上の団体が22団体あるものの、「NGO」間の規模の格差は明かである(c: 20-21)。
 収入源の一つとして会費収入や寄付金、基金運用益、事業収入から成る自己財源があるが、寄付金の割合が大きいというNGOが多い。しかし、大口の寄付金を確保しているNGOの活動内容をみてみると、里親制度を推進している団体、宗教信徒や賛助企業等特定の支持層を持つ団体、そして緊急救援活動を行っている団体が多く、それ以外の大半のNGOは会費や事業収入等、他の項目の収入額が低く、相対的に割合では寄付金が大きくなっているというのが現状といえる(C: 23)。
 民間助成金と政府補助金・委託金については、前者が後者の3分の1の割合である。これは、国際協力活動に対して拠出される助成金額が絶対的に少なかったり、助成活動をしている民間の団体数自体が少ないということも一因であるが、受け手と出し手の情報交流不足や、各団体において申請書作成に必要な時間と労力をさくことができないという現状もある(C: 23)。このような民間助成金と比較すると、公的資金を得ているNGOは238団体中149団体(63%)と割合が高い。しかし、これら公的資金を全く受けていない団体が87団体(37%)を数えることから、公的資金へのアクセスは必ずしも十分とはいえない。これは、申請手続きの煩雑さや、使途目的の制限に加えて、敢えて公的資金に頼りたくないというNGO側の意見もあることも理由の一つとして考えられる。
 次に、支出についてである。表2-2(c: 24)は、238団体の総支出236億3043万円を費目別にあげたものである。
 
(表3-2)支出の費目別内訳
事業運営費(注) 167億4,659万円(70.9%)
事務管理費 27億5,383万円(11.7%)
繰越金・その他 41億3,001万円(17.4%)
  合計 236億3,043万円(100%)
 
注:事業運営費の海外事業費と国内事業費の内訳は次の通り。
 
海外事業費 108億1,445万円(全支出の45.8%、事業費の65%)
国内事業費 37億2,946万円(同15.8%、同22%)
海外/国内別不明分 22億268万円(同9.3%、同13%)
  合計 167億4,659万円(同70.9%、同100%)
出典:  (特活)国際協力NGOセンター『国際協力NGOの体質強化支援策に関する調査研究』、2001年、24ページ。
 
 表3-2を見ると、支出の内訳の大きな割合を占める事業運営費には、民間助成金、政府補助金・委託金、会費、寄付金が充当されている。つまり、NGOの収入の多くは直接事業運営に計上されている。そこで問題となってくるのが人件費を含めた事務管理費の不足である。この一因として、前節でも触れたように、民間助成金や公的資金等の使途が必ずしも自由ではない上に人件費や事務管理費を対象としていないケースが多いことがあげられる。それに加えて、申請手続きや決算報告が煩雑なものも多いため、本来の事業を遂行する上で、むしろNGOにとって支障となってしまう場合もありうる。しかしこれらの制約が課される原因として、政府内部での一連の不正が大きな社会問題となったために、政府資金の支出のあり方が極めて厳しくなったことがあげられる。一方、NGO側においても一部のNGOでの不正な経理処理が明るみになることもあった。
 NGOの透明性を改善するためには、充分な財務状況の公開も必要と言えるだろう(c: 29)。また、能力的、組織的など、あらゆる面において事業遂行能力を高めることは、資金獲得のためだけではなく、NGOの活動のためにも必要な取り組みである。そのためにも組織の基盤整備や人材確保に加えて、収入規模が1000万円に満たないNGOの場合は、事業費を確保するだけで精一杯で、人件費まで確保できないという現状がある。これらの団体は概して副業等他の収入源を持つボランティアとして関わっているスタッフに支えられている。
 2000万円から5000万円の収入規模の団体においても、有給専従スタッフを確保できてはいても充分とは言えず、一人あたりの人件費をおさえたり、有給スタッフの数を押さえるといった対応を余儀なくされている。収入規模が1億円以上の団体では、10名程度のスタッフを確保し、福利厚生においても何らかの手当がある。しかし、大半のNGOが先述の苦しい状況におかれているというのが現状である。
 人件費・事務管理費確保の難しさに加えて、もう一つ民間助成金や政府補助金・委託金の問題点としてあげられるのは、単年度主義や精算主義が多いため、必ずしも必要な時期に必要な資金を確保することができず、多くの場合、事業の立ち上げ段階で、ある程度の資金が必要になることである(c: 26-27)。
 前節で触れたように、財源確保の難しさと切迫度は、開発協力、緊急救援、開発教育、政策提言、連携構築など、活動分野によって差があり、それによって、マネージメントやマーケティングのやり方に違いが見られる。それぞれの活動分野に対する市民の理解度や興味も違うため、例えば募金についても、理解を得やすくアピール度の高い緊急援助の方が、開発教育や政策提言などよりも集まりやすいと言われている(c: 3-18)。
 
3-5. 広報・渉外
 以上のように、人材や財政という具体的な問題をふまえて、個々のNGOの努力とあわせて必要とされるのが、課題解決を可能にするためのシステム面での変革である。人材面と財政面において悪循環を生み出しており、現在のシステム内での状況改善は非常に難しい。むしろ、社会的認知度・理解度を向上しながら、財源確保等のシステム上の問題を解決しなければ効果的な活性化は望めないといえる。個々のNGOで効率化を図ったり、NGO間の連携を強める等、NGOセクター内の努力だけではなく、国際協力活動の意義に対する理解を社会一般に広め、そのアクターとしてのNGOを支援する重要性を市民と行政に働きかけることが課題といえる。
 そのような働きかけで必要とされるのが、マネージメント力の向上と効果的なマスメディアとの連携である。マネージメント力・マーケティング力と財源確保のつながりは深い。この点は、欧米型のNGOの安定ぶりが示している。3節で触れた収入規模から分かるように、収入規模や会員数からみると欧米型NGOの方が基盤が安定している。日本生まれのNGOの財政基盤が脆弱であるもう一つの理由は、景気低迷により、個人、企業、財団などからの寄付や会費収入が獲得しにくい中、効果的に説得力のある広報活動を充分に行うことができない点にある。団体とその活動に対する透明性を高めると同時に、民間からの資金を集めるための、抜本的な寄付システムの構築が必要である。
 マスメディアは、政府とNGOの関係にも変化をもたらした。ODAの実施方法に対するマスメディアの批判などから、政府とNGOの対話がより活発に行われるようになった。また、このような対話の活発化により、NGOのフェローシップ事業や、事業委託など、JAICAの様な政府系機関とNGOとの協力関係も増えてきた(e: 151)。
 また、NGOの活動に対する市民の認職向上において、マスメディアの果たす役割は大きい。1992年リオデジャネイロで開催された地球サミット以降、様々な国際会議に政府代表団に加わってNGOが参加したことや、紛争や途上国の開発問題においてNGOが果たす役割などの報道を通じて、NGOの活動が地球的に必要とされているという意識が日本市民の間に少しずつ浸透してきたといえる。新聞で「NGO」という言葉が登場する頻度も大幅に増えている。このように、NGOに対する認識が深まった要因として、環境や経済などを含めて国境や国家を越えたグローバルな問題を提起し、それに取り組む活動に対する不透明性を取り除く媒体としてマスメディアとの連携は欠かすことができない(e: 150)。
 また、透明性の向上とNGO間・NGO−市民間の連携促進という点においては、マスメディアだけではなく、インターネット上のウェブサイトで団体情報を公開したり、Eメールや電子掲示板(BBS)でのやりとりなど、積極的かつ有効な情報伝達メディア全般の活用が求められる。従来、NGOの活動の傾向として、それぞれが独立性が高く、あまり協力関係が発達してこなかった点が問題としてあげられる。しかし、現在はNGOの間に一種のコミュニティ意識が芽生え始めており、情報交換や政府に対する働きかけでの協働、JANICによる合同新人研修が実施されるなど、NGOコミュニティが育ちつつある。
 
参考資料:
a. 伊藤道雄「NGOの国際協力活動」、毛受敏浩編著『国際交流・協力活動入門講座I: 草の根の国際交流と国際協力』明石書店、2003年。
b. (特活)国際協力NGOセンター『国際協力NGO活動に携わる人材の能力開発および待遇・福利厚生に関する実態調査報告書』、2001年。
c. (特活)国際協力NGOセンター『国際協力NGOの体質強化支援策に関する調査研究』、2001年。
d. (特活)国際協力NGOセンター「国際協力NGOダイレクトリー2002」、2002年。
e. 毛受敏浩「国際協力・国際交流とNPO」、中村陽一・日本NPOセンター編『日本のNPO/2000』日本評論社、2000年。







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