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東京財団研究報告書2004-7 国際協力NGO活性化の方策

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


2-4. 市民からNGOの資金循環のしくみ:ACTを活用した新たなNGO財源の提言
2-4-1. はじめに
 現在多くのNGOが、重要な資金源であった郵貯の助成額の大幅な減少、長年にわたる景気の低迷による一般市民・企業等からの資金支援の減少、一般市民のNGOに対する理解不足等の様々な問題により財政面で課題を抱え、NGOの活動、組織運営の大きな阻害要因となっている。本編では公益信託という枠組みを利用し昭和59年にわが国初の募金型の公益信託としてアジア諸国の支援事業に資金助成を展開しているアジア・コミュニティー・トラスト(以下ACT)を取り上げ、新たな資金調達の方法として、現行の枠を超え発展的な公益信託としての可能性を提案するものである。
 
2-4-2. 公益事業支援の粋組みとしての公益信託制度とACT
A. 公益信託とは
 公益信託とは、個人や法人が委託者となって一定の公益目的のため財産を信託し、受託者がその財産管理・運用し公益目的を実現する制度で、通常信託銀行が受託者として委託者が意図する公益事業を実施する制度である。
 わが国においては公益活動の主体として、財団法人と並んで公益信託力が利用されているが、公益信託制度は大正11年に信託法に制度として規定されたものの実際には50年以上にわたって利用されず、戦後わが国経済の拡大による法人・個人の財産形成の進展と、民間による公益活動の意識の高揚により昭和52年5月に第1号の公益信託が組成され、平成15年3月末現在で受託件数は572件、受託残高で712億円となっている。
 
B. 財団法人との比較
 財団法人と比較した場合、公益信託の特色としては共にその設定、設立に際して、公益目的や管理、運営に関する規定を定める必要があること、及び主務官庁の許可を必要とする点は同じである。
 一方で財団法人の様に相当規模の基本財産、専任の職員を置く必要はなく、維持運営費を節約して信託された財産を公益活動のために効率的に活用できる。
 また、公益信託は比較的小規模の財産の設定が可能で、小口資金を集めて設定したり、信託元本の追加も出来、信託財源を取り崩して給付財源とする等弾力的な運営が可能である。
 さらに公益信託は不特定多数の受益者保護の観点より信託管理人を定めることができ、公益目的の適正な執行のために受託者の補助的な機関として運営委員会を設置することが可能で、特定公益信託、認定特定公益信託ではこれが義務付けられている。
 
C. ACT(アジア・コミュニティー・トラスト)
 ACTは昭和54年11月に設立されたわが国初の募金型公益信託で設立以来アジア地域の教育・青少年育成・文化保全・農村開発・保険・医療に取り組む草の根レベルの市民組織に対し資金助成を行っている。平成15年3月末で合計371百万円の信託残高に拡大し、平成15年度にはアジア地域4カ国11団体の事業に対して1411万円の助成を実施しており、公益信託の枠組みを活用したACTの実績は高く評価されている。
 
ACT/特記事項
・運営委員会事務局/(特活)国際協力NGOセンター・受託者/幹事 中央三井信託銀行ほか邦銀信託5行
・主務官庁/外務省アジア大洋州局地域政策課・認定特定公益信託/ACTへの寄付金に税控除の優遇措置適用
・10百万以上の資金拠出の委託者が希望すれば助成目的の指定が出来、当該出資者の名前も付すことができる。
 
ACTの事業内容
・ACTは、アジア諸国において次のような事業を行う団体に対して助成を行っている。
・農業の振興および社会開発に寄与する事業
・学術研究ならびに教育・文化の振興に関する事業
・医療、保健衛生および社会福祉の向上に寄与する事業
・青少年の健全な育成に寄与する事業
・自然環境の保護その他人間環境の保全に寄与する事業
 
2-4-3. ACTの枠組みを活用したNGOへの有効な資金供給の提言
 現在のNGOの現状・問題点を踏まえ、公益信託の分野において国際協力関連事業の代表的存在であり、実績のあるACTを活用し、わが国のNGOの活性化を図るための具体的な資金調達の提言と致したい。
 
A. ACTの可能性
・ACTは本邦初の募金型の公益信託で設立以来四半世紀の間、アジアを対象地域とした公益活動、国際協力事業に助成を実施し着実に成果を上げている。実績とノウハウ・ネットワークを保有する優良公益信託として、国際協力事業におけるアジアの重要度が高まりつつある中でわが国の国際協力事業の代表的な公益信託である。
・ACTは募金型の公益信託であり、一方で資金拠出の委託者が希望すれば、一定額以上の資金拠出であれば助成目的の指定ができ、当該出資者の名前も付した個別目的の助成が可能な集合住宅的な性格を持つ公益信託である。
 現状、NGOの事業活動等に対する広報、宣伝活動の強化が叫ばれるなかではACT及び国際協力事業の宣伝、広報活動を展開しながら、資金の拠出を募る募金型の公益信託の活用は単なる資金基盤の強化にとどまらず、NGO活動に対する社会の理解を深めうる有力な資金調達の手段となり得るものである。
 また、大口の個人・法人の資金提供に対しては資金提供者の意図を反映し、出資者の名を付した個別の助成も可能であり、個人の篤志家、企業の社会貢献活動の受け皿としても利便性の高い構造となっている。
・ACTの主たる助成先は、アジア各国の現地のNGOであるが、一方でアジアにおける日系NGOの事業にも資金的支援は可能である。現在、わが国の多くのNGOは寄付金の資格控除が与えられておらず、日本の景気低迷が長期化している中、資金獲得に困難を来している。こうした状況を打破し、わが国のNGOのアジアにおける協力活動を活性化し促すためにも、ACTの認定特定公益信託制度はわが国のNGOの有力な資金源となり得るものである。
 
B. ACT及び公益信託の問題点
・公益信託の公益事業推進の主体は法律上・構造上は受託者である信託銀行となっている。
 一方で通常信託銀行は金融、資産管理、記帳等の処理には長けてはいるものの、公益事業・国際協力事業等についてはノウハウの蓄積が充分でないことが多く、学識経験者等を中心とする運営委員会を置いて運営委員会の助言・指導をあおぎつつ運営を行っている。更に運営委員会も学識経験者等が散発的に招集されることが多くややもすると実質的な事業推進の主体が構造的に不明確になりがちである。
 ACTの場合、実質的な運営の主体は国際協力事業に精通した(特活)国際協力NGOセンターが運営委員会事務局として受託銀行から委託を受けACTの実質的事業運営にあたっている。
 しかしながら、運営委員会事務局に対する事務委託費は低く抑えれられ事業遂行上、実際に要している人件費、広報・募金活動費等が賄い切れず、実質的な事業運営上の障害となっており、事業が無理なく円滑に遂行される為に改善を要する点である。
 ACTの場合、特に公益事業委託者が広く多数である為に通常の公益信託勘定よりも運営上の負担が大きい。
・事業の公益性を勘案して受託者である信託銀行の信託報酬は低く抑えられているものの、受託銀行の業務遂行上の負担は監督官庁との許認可取得、報告、報告書の作成等を勘案すれば必ずしも信託報酬での作業負担を賄う収入構造にはなっていない。今後、良質で継続的な公益信託を維持、拡大する為には信託報酬の引き上げも検討を要するものと思われる。
・現在のACTでは国際協力NGOが国内で展開する事業、例えば会員、ネットワークを拡充する為の国内事業は助成の対象になっておらず、特にわが国のNGOの基盤強化の為の国内事業にも助成対象を広げることが望ましい。
・現在のACTは募金型の公益信託でありながら、広報・募金活動費の支出が限られ、必ずしも一般個人を対象とした募金促進の為の宣伝、広報活動が充分に行われていない。
 
C. ACTを活用した国際協力NGOの財源の提言
・ACTの受託資産規模を総額で50億円程度を目標とする。
(1)ACTを現在わが国の国際協力NGOが直面する問題解決の具体的な突破口とするために前述の議論、方策を検討しながら個人・企業の民間から同金額程度の資金の調達を目標としたい、信託協会の資料によればすでに本邦においても50億円以上の資産規模を持つ公益信託が実在し、ボランティア貯金の助成金が激減している状況下でかかる資産規模の公益信託を目指したい。
 
・募金型公益信託の利点を活かしたACT・NGO活動の広報・宣伝の推進と効果的な募金活動の展開。
(1)例えばACTの取り扱い信託銀行の支店網を活用した募金箱の設置、ポスターの掲示を行う。
(2)マスメディア等を利用した広報活動と募金活動を展開する。
 
・集合住宅型の公益信託の特性を活かした大口個人篤志家・企業の社会貢献ニーズの発掘と効果的なACTの信託財産の拡大。
(1)信託銀行はACTを活用することにより大口個人富裕層の社会貢献ニーズを積極的に吸収し、個人大口顧客の取り引き拡大の手段とすることも考えられる。
(2)例えば電力会社、ガス会社等に協力要請し、利用者の支払代金の一部をACTの特定口座で当該企業のイメージの向上と社会貢献に結びつけるような個別の国際協力事業と結びつける等の組み合わせも可能である。また、コンビニ・流通業界を取り込み当該業者のネットワークで集められた小額コインをACTの特口座を設定してACTの資金の拡大に結びつけることも考えられる。
 
・国際協力NGOの国内基盤強化のための事業に対する対象事業の拡大。
(1)本件は現在の国際協力系NGOが国内での事業を実施する際に資金の助成を受けることが困難であることに着目し、ACTにおいては一定の基準を設けて国際協力NGOの国内の基盤強化事業にも助成できる様に対象事業の見直しを望みたい。
 
・信託銀行と運営委員会及び運営委員会及び連携の強化とACTの推進する国際協力事業の強化。
(1)前述の通りに、例えば信託銀行内での大口個人客開拓の為の公益信託の見直しが実施され、今以上に公益信託取り引きが営業戦略上重要視され、かつ信託銀行にとって公益信託の取り引きが妙味のあるものになるのであれば、公益信託運営当事者間の連携は今以上に強固なものとなる可能性があるものと思われる。
 
・実質的な運営主体である運営委員会事務局の強化。
(1)ACTの事業を実質的に運営する事業推進担当者は当該事務局組織の所属とし、事業推進担当者、事業運営に係わる人件費・調査費・運営・募金活動費等、運営費用の事業遂行上の相応のものが事務委託費から支払われる様見直しを行い、ACT事業に特化した事務局体制を構築する。
(2)ACTに限らず国際協力事業の推進役となる人材の育成、事業の質的な維持・向上の為には実質的な事業推進部門の強化が急務である。
(3)ACT事業の実質的な運営主体である事務局機能を強化するため、最終的にACT運営に専念した独立した組織を設立する。
 
2-4-4. まとめ
 前述の通り本提案は、現在のわが国のNGOの構造的な問題点として指摘されている個人・企業等のNGO活動についての認職の不足/NGO側の広報・宣伝の不足、組織・人材の脆弱性等の障害を克服して、公益信託という枠組みを利用し活動しているACTを活用し、現状の枠組みの限界を乗り越え、NGOの資金調達の強化を図ろうとするものである。
 公益活動の枠組みとしては財団法人という枠組みで本件を検討する選択肢も考えられるが、機動力、柔軟性を重視して、更には現下の超低金利を勘案して公益信託を基盤としたて提案を行った。
 本件の実現を図るためには、本提案を土台とした更なる議論の展開、監督官庁との折衝、信託制度・関連規則の見直し等が必要となる局面も有り得るものと思われるが、当報告を叩き台として発展的な議論の展開を望むものである。
 
(図2-1)公益信託の仕組(P59 参照
(表2-2)受託件数、信託財産残高の推移(P60 参照
 
(表2-3)公益信託受託状況(平成15年3月末)(単位:件、百万円)
信託目的 受託件数 受託財産残高
奨学金支給 172 (2) 18,356 (294)
自然科学研究助成 90 (-) 12,104 (-)
教育振興 82 (-) 3,916 (-)
国際協力・国際交流促進 58 (-) 6,148 (-)
社会福祉 44 (3) 4,147 (445)
芸術・文化振興 34 (-) 6,615 (-)
都市環境の整備・保全 31 (-) 10,829 (-)
自然環境の保全 16 (1) 4,142 (60)
人文科学研究助成 15 (-) 1,102 (-)
文化財の保存活用 3 (-) 223 (-)
動植物の保護繁殖 1 (-) 446 (-)
緑化推進 1 (-) 48 (-)
その他 25 (1) 3,102 (102)
合計 572 (7) 71,184 (903)
注:( )は平成14年度中の新規受託分
−出典:(社)信託協会ウェブサイト内
 
参考文献:
・信託の法務と実務/三菱信託銀行・信託研究会 編著
・公益信託・その制度のあらまし/社団法人 信託協会
・信託業務基礎講座/社団法人 信託協会
・ACT/年次報告書/公益信託 アジア・コミュニティ・トラスト
・2003.12 公益法人/公益信託制度研究30周年記念座談会
・国際協力NGOの体質強化支援策に関する調査研究/(特活)国際協力NGOセンター(JANIC)







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