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◎母親の大切さ
 
 さて、3回目の勉強会ですが、何人かのメンバーから事前に提案がありまして、それを一緒に議論しました。
 ひとつは、「身障者とか老人介護の手助けを教育科目に加えてはどうか」という話が出ましたが、中教審で「ボランティア活動」を学校の科目に入れるかどうかで、最終的には入れないということになり、これはもう少し様子を見るしかないのではないか、ということになりました。
 それから、「母親がしっかりしないから日本の子供はダメになってしまった。だから、肝心なことは、母親をしっかりさせることが大事だ」という女性の問題提起がありました。それに対して、「ドイツなどに比べて、日本は教育を学校に任せすぎる。もっと家庭教育に着目すべきだ」とか、「問題を起こす子供というのは、家庭がうまくいっていないケースが多いし、その親を学校に呼ぼうとしても来てくれない」とか、「学校が開催する親のための講演会には、ほんとうに来てほしい親は来ないで、来なくてもいい親は来てくれる」、「躾のために教師が少しでも手を出すと大問題になるのが現在の風潮であって、それを補うのが家庭である」などでした。
 また、子供のプライバシーとか人権が全面に出てきて、学校で解決できない部分があるわけですが、「これを地域で解決しなくてはいけない」とか、「以前の親というのは、子供が学校に人質に取られているということもあって学校に注文をつけなかったけれども、いまの親は黙っていないで、すぐに学校にいってくるということで、学校は非常にやりにくくなった」という教員の方の話もありました。
 あるいは、「憲法を改正し、宗教教育もできるようにすべき」、「教育基本法も見直すべき」などは、われわれがいくら議論してもどうにもならないことですから、もうちょっと様子を見ましょうと。ただ、やれることはやっていきましょうということです。例えば、「三浦朱門さんの民間の憲法調査会、こういうところにもっとわれわれも参加すべきではないか」とか、これは私の意見ですが、「新しい歴史教科書をつくる会などには、精神的・財政的な支援が大事ではないか」ということです。
 これはある会合で藤岡信勝先生がお話になったことですが、愛媛の中高一環教育の学校で、新しい歴史教科書を採択したところ、愛媛新聞をはじめとして、日教組とか労働組合が大キャンペーンを張って反対したというのです。それで、藤岡先生は何度も何度も四国に行って、向こうが集会を開くといえば、こちらも同じ日に集会を開いて人数で圧倒したり、署名活動をしたり、そういう大変な努力をして歴史教科書の採択にこぎつけたそうです。ですから、そういうことをやっている人がいるのに、われわれは何もしないというのはあまりにも情けないということで、私もその会員になりまして、できることをやっているわけなのです。
 いずれにしましても、こうした議論がありまして、最終的には女性たちが集まって、母親の大切さということを議論して、それをメディアにアピールするということをやりましょう、というところまで行ったのです。ところが残念ながら、その会合が発足しないままに終わってしまったのです。
 
◎教育問題への関心は多岐にわたる
 
 これまで3回の勉強会を経て、今度は教育問題に絞って議論しましょうということになり、現在、教育というものについて、メンバーがどういうところに関心があるかということを話してもらったのが、4回目の懇談会です。
 これは、教育問題に関するメンバーの関心事ですから、箇条書き的にざっと申しあげます。
 「ジェンダー・フリーの問題はどうなっているのか、非常にひどいらしい。小学校で、ジェンダー・フリーと性教育を絡めていろいろな教育が行われているようだが、その実情は」、「学力低下、学級崩壊、不登校、いじめ」、「家庭の実態とか先生の実態とか、PTAの実態とか、このようなところを知りたい」、「運動会の競走で順位を決めないという平等思想を、教師はほんとうによかれと思っているのか、教師の本音は」、「教師の質が低下しているのではないだろうか、教師にも競争原理を導入すべきではないだろうか」、「現職の校長に学校教育の現状について話を聞いてみたい」など。
 それから以下は、意見ですが、「生涯教育というものが非常に大切だ」、「大人の堕落が子供に反映している」、「自分たちも積極的に学校に関わって、総合学習に対して何かできるところは担おうではないか」、「幼児教育に問題がある」、「地域の目をいかに学校に入れるべきか」、「日教組のやりたい放題を止めさせなくてはいけない」、「人間の本来もっている力をどう引き出すか、人格教育を議論すべきだ」などというものでした。
 やはり、メンバーの多数の方は、子育てを終えられた方々ですので、今日の教育現場で、どんな問題があるのか、その実際を知りたいということです。
 それで、次回の懇談会のテーマとしては、教育現場がいまどうなっているのか、具体的に何が問題なのかについて議論しましょうということになり、各人が実際に知っていることについての報告会を、5回目の懇談会をもちました。
 
◎これでいいのか、日本の学力低下
 
 報告会の内容をかいつまんで申しあげます。
 まず、小学生の分数とか括弧付きの計算が大学生でできないということですね。中学校で習う二次方程式についていえば、早稲田・慶応レベルの一流大学の学生でも、正解率は8%ということです。とにかく、「分数とか括弧付きの計算が大学生でもできない」というのが現実です。
 産経新聞の6月3日付によりますと、埼玉県の教育委員会の調査なのですけれども、小中高で授業内容を理解できている生徒の割合は、まさに七五三なんです。小学生で70%、中学生では50%、高校生になると30%の生徒しか理解できていない。しかも、その比率が、前の年に比べて下がっているということです。
 それから、いま男女混合名簿がかなり増えているらしいのです。その上、男女混合というのは、男が先でけしからんということで、「女男」と書いて、これ(女男名簿)を「ヒト名簿」というらしいのです。「女男混合名簿」を作るようにということを呼びかけているというのです。これは産経新聞の5月28日付です。
 また、九九の計算ができない、あるいは漢字、またはカタカナさえ満足に書けない子供が中学校へ進学してきているというのです。付け加えますと、九九の暗記ですけれども、これを昔は1年間を通じてずっとやったのに、いまはもうあっという間に九九を終わって次に進んでしまうということで、九九を覚えさせる時間というのが非常に少なくなっていると。
 あるいは、学習意欲のない子供たちには、「元気に登校してくれるだけでいい」、「勉強はできなくてもいい」と、こういうふうにいわれたりしているのです。
 「父親不在」についても、4年生〜6年生の父親の58.3%、中学生の父親の63.9%が、普段、子供とほとんど接してないということです。
 いま申しあげましたのは、ほんの一部の報告でして、これ以上はやめておきますが、日本の教育現場は相当ひどい状況になっているといえるのではないでしょうか。
 
□質疑応答
 日下 私が小学生の頃は、商売人や農家の親は、学校で何も教えてくれなくてもいいと、ほんとうにそういっていました。商売は自分が教える。それから農家を継ぐのに、理屈はいらないっていうんです。親はほんとうにそう思っていたし、だから子供もそう思っていた。これは、頭が悪いということではないのです。篠原さんのお話を聞いていて、そういうことも思い出しますね。
 篠原 教育というのは、日本の将来を支えるベースをつくるものですから、やはり国家として方針に従った教育というのが必要だと思うのです。
 日下 しかし、なぜ一本化しなければいけないのか。いや、私は「小学校低学年だけは」とか、そういうふうにいえばいいと思うのですが。
 篠原 そうですかねえ。私はですね、例えば、いま日本国民の50%を超えましたけれど、日本国憲法はおかしいということを考えている人がいるわけですね。しかし、相変わらず日本国憲法の理想とするところみたいなものに縛られ、これを変えようとはしません。はたして、こうした認識でいいのかと。
 日下 よくないですよ。ただ、そこで憲法改正とおっしゃるのか、廃止とおっしゃるのかなんです。私は廃止なんです。改正を議論するのは、やはり、一本化論者なんです。
 篠原 ただ、廃止したらですね、まさに日本人というのは軟体動物で、背骨のないフニャフニャした動物でしかないわけです。
 日下 そんなことはありません。それは、だってイギリスがそうでしょ。
 篠原 まあ、イギリスは慣習法がありますよね。
 日下 日本だってある。日本のほうがイギリスより歴史が長い。
 篠原 ええ。しかし私は、これだけ国際情勢が非常に流動化しているときに、このままで行きますと、いずれ中国なり何なりに飲み込まれる恐れがあると。飲み込まれたら、まさに日本民族の悲劇だと思います。
 日下 もしそれが根拠なら、飲み込まれないための方法というのはいくつかありまして、その中で憲法はそんなに大事ですか、という話になる。飲み込まれなければいいんでしょ。
 篠原 それは、そうですが(笑)。ただ、結局、明文化したものがなければ、お互いに自分の考えていることが他の人と同じかっていうようなことになって、それでいざとなったときに何もできなくなるという恐れがあります。
 日下 明文がなければというのは、それは、いまやわれわれが文書人間になってしまったということですね。







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