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東京財団研究報告書2004-6 日本の近未来ビジョンと初等教育改革

 事業名 相互交流による国際ネットワークの形成及び政策課題研究等
 団体名 東京財団政策研究所 注目度注目度5


6. 玉田雅己
NPOバイリンガルろう教育センター龍の子学園理事
 
[共同参加者]
長谷部倫子/NPOバイリンガルろう教育センター龍の子学園事務局
 
(2003年6月27日研究会実施)
 
□講師のお話
◎龍の子学園との出会い
 
 私は、息子が1歳9カ月のときに、「ろう」であると分かりまして、そのときに龍の子学園と出会いました。それで、ろう者から家庭での教育についていろいろと教えてもらい、いまでは息子とは手話でスムーズにコミュニケーションができるようになりました。
 手話と申しましても大きく分けると、「日本語対応手話」と「日本手話」の2種類がございます。「日本語対応手話」というのは、中途失聴といいまして、音声日本語を獲得してから聴こえなくなった方々のためのもの、というふうに考えていただくと分かりやすいと思います。あくまで聴こえない方へ音声日本語を補う方法として、声に手話の単語べースで補足していくのが「日本語対応手話」です。文法も日本語の文法に従って補足していくという形です。
 一方、「日本手話」というのは、音声日本語を獲得する前に失聴したという子供か、もしくは生まれつきのろう者のためのものです。音声日本語とはまったく別の文法構造をもちまして、一般的にいうと声とかを一切出さないで、別の文法<表情>でコミュニケーションをするという手話です。
 その日本手話を子供が母語として獲得し、書記日本語を第2言語として獲得するというのが、「バイリンガルろう教育」の考え方です。そして、聴文化とろう文化とやはり文化が違う面がありまして、それを異文化という風に見て、その2つの文化を学ぶという意味で、「バイカルチャルろう教育」といいます。ですから、異言語・異文化を獲得するという形の教育方法になります。
 欧米では20年以上の前から実践されておりますが、日本でこのろう教育を唯一実践しているのが龍の子学園です。
 
◎龍の子学園の中学部・小学部・幼稚部の活動
 
(以下、ビデオをもとに説明)
 
 龍の子学園は、学園活動と、学び舎というのがあります。画面の向かって左側の女性が、龍の子学園代表の竹内かおりです。彼女がアメリカに行ったときに、アメリカのろう教育を見て、日本とのギャップに愕然としました。日本のろう学校では手話は禁止され聴者の教師が口話で教育しているのに、アメリカではろう者の先生が手話で教え、子どもたちも活き活きと聴児と同じように育っている。この日本とのギャップとこのような教育を日本でもやるにはどうすれば良いのかをアメリカのろう学校の先生に相談したところ、「あなたが自身が日本のろう教育を変えなさい。」といわれたそうです。さっそく、日本へ帰ってきて、同じ考えをもったろう者の若者たちが龍の子学園を立ち上げました。1999年の4月から4年間、今年で5年目になりますが、毎月1回、いまはこのように世田谷の福祉専門学校をお借りして活動しております。
 それで、龍の子学園の指導理念なのですが、まず人間教育ということで、心の教育を大切にしています。私も自分の子供がろうだと分かって、子供が意に反するような危ないことをすると、「ダメだ」とすぐいってしまいがちなのですが、ろう者の場合は、子供に対して非常に理由を説明するんですね。そういった人間教育を中心に考えてやっています。
 こちらが学園活動の様子で、朝の会では中学部から幼稚部の子供まで一緒に参加して、いろいろな話を劇で、非常に分かりやすく説明しています。「みにくいあひるの子」の劇ですが、前のほうにいるのが幼稚部の子どもたちです。子どもたちにとって非常に分かりやすく、集中しているのがお分かりいただけると思います。劇のテーマも、毎回違うことを彼らが考えまして、オリジナルのものにアレンジしています。私が好きなのは、自分はろう者だという誇りをもって、聴者と平等な立場で生きていくというメッセージを、この劇の中に込めていることです。
 さて、こちらの例は中学部ですけれども、これは社会の時間です。テーマは一般のニュースなどから選ぶので、たまたまイラク戦争をやっています。先生は手話を使って「戦争が始まったらどうするのか」と生徒に対して質問を投げかけ、生徒は「何とかして始まらないように相談したほうがいいんじやないか」とかいうことを、手話で話しています。
 龍の子学園は、始めて5年目で、彼らは中学生ですから、小さいときからバイリンガル教育で育ったわけではありません。月1回の学園活動だけでは、日本手話で完全にスムーズなコミュニケーションというところまでいっていないそうなのですが、それでも手話と接することによって、乾いた土が水で潤うように子どもたちは伸びています。
 次は小学部の小低部です。1年から3年まで合同でやっているのですが、彼らも社会の話題として、北朝鮮の拉致問題をやっています。生徒たちに北朝鮮の国旗を見せまして、「どんなことを知っている?」と聞いています。「北朝鮮は日本人の人を連れていって・・・」というような説明をしているのですが、当然、詳しくは知らないわけですね。それをどう説明するかというと、やはり劇と視覚情報を使って非常に分かりやすく説明しています。彼女たちがやっているのは、拉致された方が飛行機で日本に着いたときの状況です。日本に着いて、お父さん、お母さんと会うときのシーンです。非常に感激するところを表しているのですが、注目すべきところは、20何年という非常に長い間の空白を、子供にどう説明するかというところですね。拉致された方は、若いときに連れて行かれて、いまは年を取ったという意味を手話でちゃんと説明しています。あと視覚の資料として、20年前の写真といまの写真とを比較させて、目で見て20年間が重かったというのを分かるような説明をしています。この辺が、いわゆる普通の聴者の学校とは違い、劇や視覚の教材を使って、小学校1年で拉致の話題とかまでちゃんと子どもたちがわかる手話でやっているというところです。
 次ぎのこの日本語の学習に関しては、日本語を子供たち自身が表して、お互いにディスカッションをしていくというやり方です。先生が黒板の前に立って一方的な説明をするのではなくて、子供同士でディスカッションをして、子供が自分で話を作って他の子供に説明する。あと、日本語を勉強する上では、ついつい単語を細かく教えがちなのですが、実際は助詞とか、そういったものを含めた形で教えています。それを正しく組み立てるような練習といいましょうか、クイズ形式で、子供にやる気をもたせる形で授業を進めて、実際に正しい文を繰り返し覚えていきます。ですから、手話と違う文法である書記日本語の翻訳の練習をここでやっているわけです。
 最後は幼稚部ですが、幼稚部は、午前中に「子供の時間」というのを設けています。この時間は、先生は端で見守っているだけで全て子供たちに任せる時間です。この場合ですと、文字ですね、子供たちは書くことに非常に興味をもっています。「中目黒」と書いてありますが、「読み方はなんて書くの?」と質問すると、ちゃんと指文字で「なかめぐろ」と答えるのですね。手話の場合の「あいうえお」という指文字がありまして、それでちゃんと読み方を理解しています。こちらの、このすごろくの例は、順番をズルした子供がいまして、じつは私の息子なんですが(笑)、他の子供と喧嘩になりそうになる。そうすると、ひとつ上のお姉さんが仲裁に入って、「ズルしちゃダメじゃないの」と仲裁します。ちゃんと子ども同士でルールができているのです。
 それから、このハロウィンなんですが、自分たちで自分のものを作るというやり方をしていますので、この服は、ごみ袋だったりするんです。なぜハロウィンかといいますと、去年は日本の祭りをやったので、今年は外国の文化を知ろうということでハロウィンをやりました。やはり文化の違いというのを理解する上では、こういったものを幼稚部のうちから経験させる。それでいわゆるハロウィンでお家を回るように、他の学部の先輩のお姉さん、お兄さんのところに行ってお菓子をもらって帰ってくるという形です。学園活動の月1回のときは、こういったお姉さん、お兄さんと、教室は違うのですけれども同じ場所でやりますので、縦の交流が非常にスムーズにできます。スタッフが全部面倒を見るのではなくて、お姉さん、お兄さんが子供たちを面倒みてくれています。
 では、親は何をするのかということですが、やはり親もバイリンガル・バイカルチュラルろう教育を勉強しないといけないということで、このときはギャローデット大学を卒業し大学院でろう教育を専攻されているこのダーレン・エワンさんという方に、アメリカの最新事情を講演してもらいました。ダーレン・エワンさんは、ASLというアメリカ手話を使いまして、それを竹内がJSL(Japanese Sign Language)、日本手話に通訳しています。それを今度はこちらに座っている方が音声通訳をするのです。ですから、2回通訳をするという形で講演が進みます。このように親たちも学んでいるのです。
 あと、こちらは毎年運動会がありまして、昨年はあいにく雨だったので体育館なのですが、2歳児の子から中学生まで、紅白リレーで競争しています。これも当然全て手話でコミュニケーションをしていますので、体育館の中は、音楽も無く非常に静かな状態で、足音とか、そういう音だけが響いているという状態です。しかし、全員、手話が見えていますから、情報は全て理解されています。スタートのときも、普通の学校ですと、ピストルの音なんでしょうが、ろうの場合は旗でやりますし、応援の仕方なども聴者とはやはり文化的に違います。







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