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インドネシア
インドネシア造船業の現状
I 概観
1. 背景
 約17,000の島からなる島嶼国であるインドネシアでは、海上輸送は経済発展を支える重要な役割を果たしている。造船産業は不可欠であり、特に海上輸送の手段とサービスを提供する上で、その存在は大きい。
 一般に造船業発展の目的は海上輸送の発展と支援、インドネシア水域のあらゆる潜在資源の開発、各種産業を先進国の水準にまで高めることにある。
 造船業は経済の他の部門と広く連関するもので、国家の発展に戦略的な役割をにない、通商と国防のための輸送手段を提供するという点で特に重要性が高い。
 造船業と緊密な連関を有するのは以下の各部門である。すなわち
a. 支援産業と資本財製造業、造船業は資機材の国内調達において、これら支援産業の能力を吸収する立場にある。
b. 他の関連産業部門、特に国防・安全保障、通信、運輸、海事、鉱業など。
 
2. 条件と課題
 インドネシアの島嶼国という条件と地理的位置を考慮して、政府は造船業の発展を優先させることを決定した。この点に関して、政府は一連の規制緩和措置により有利な事業環境を創出している。
インドネシア造船業の発展において、特に以下の諸点が課題とされている。
・海事産業の製品の輸出指向化を図る大規模投資。
・資金調達難、国内の融資条件では造船事業の競争力が阻害される。
・資金不足、国内造船業は海外の元請けから指名される下請けに過ぎない。
・国内造船業は輸入資機材に大きく依存している。
・国内の海運事業者の購買力はあまり高くない。
 
II. インドネシア造船業の能力
a. 企業数
 登録された企業は250社で、大半が小規模の造船所である。250社のうち4社は国有造船所である。国内最大の造船所はスラバヤのPT.PAL.。
b.設備能力
1)新造船
 国内全体の新造船設備能力は年間建造量にして180,000GT。
2)修繕等ドック受入能力
 全体の設備能力は年間工事量にして400万GT。
3)設備の概要
a)船台 50,000DWT
b)クレーン 400トン以下
c)乾ドック 50,000DWT以下
d)浮ドック 25,000TLC(65,000DWT)以下
e)船架 6,000DWT以下
f)船体昇降機 300TLC以下
c. 技術能力
1)船舶設計・エンジニアリング
 船舶設計とエンジニアリングの技術を習得した。国内需要に対応するために革新的な設計が開発された。船舶設計の信頼性を確保するために、スラバヤの流体力学研究所で船体模型の実験を実施している。
2)生産エンジニアリング
 船体建造には100-400トンのブロックに分割して建造するブロック工法を採用している。この工法により建造船舶の質と作業の効率が向上し、また鋼材の切断や溶接にはコンピュータ機器を使用している。
d. 能力
 インドネシアの造船所では数船種、数船型の建造が可能で、その建造にあたっては内外のコンサルタントの援助を得ている。建造船の一部の実例を挙げれば以下の通り。
- 一般貨物船/セミコンテナ船 4,200DWT以下
- トレーラ運搬船(RoRoフェリー) 19,000DWT以下
- 客船 500人乗り以下
- 撒積船 42,000DWT以下
- 石油/ケミカル・タンカー 17,500DWT以下
- LPG船 6,600立方フイート以下
- コンテナ船 1,600TEU以下
- 牽引式サクション・ホッパ浚渫船 1,500DWT
- SARタグ 7,500HP
- 分割型バージ 1,000DWT
- 高速巡視艇(FPB) 船体長57m以下
- 押船/消防タグ 4,200HP以下
- 漁船 300GT以下
- 浚渫船 12,000T以下
- 浮体式収蔵/修繕設備 150,000DWT以下
 2000-2002年の新造船・修繕船工事の価額は以下の通り。
 
単位:百万米ドル
番号 工事種別 2000 2001 2002
1 新造船 92.82 123.53 130.00
2 修繕船 39.41 44.12 47.65
  132.23 167.65 177.65
出所:MOIT年次生産報告書、2003年。
 
e. 輸出
 以下の通り、数船種、数船型の建造船が一部、外国に輸出されている。
- オープンハッチ・ボックス型撒積船、香港および英国向け 42,000DWT型2隻
- 乾貨船、英国向け 18,500DWT型2隻
- 分割型バージ、イラン向け 950トン型2隻
- タグ、シンガポールおよびイラン向け 11隻
- 浮ドック、シンガポール向け 4,200DWT型1基
 2000-2002年の輸出価額は以下の通り。
 
単位:百万米ドル
番号 工事種別 2000 2001 2002
1 船舶 51.73 42.39 51.75
2 構成部品 7.82 6.87 9.95
  59.60 49.26 61.70
 
III. 市場環境
 国内の船舶需要の規模を考えれば、インドネシア造船業には大きな発展の余地があり、この国内需要をベースカーゴとして造船業が発展する可能性は高い。
a. 商船/客船
 運輸省の推計によれば、商船および客船の需要は58隻、船室数51,000とされ、年間輸送旅客数では1,200万名となる。必要とされる58隻に対して運航隻数は30に過ぎない。これはインドネシア造船業にとって、短期間に28隻を竣工させる需要があることを意味する。
b. PERTAMINAの船舶
 インドネシア政府が所有するインドネシア石油ガス会社(PERTAMINA)は2011年までの同社の船腹需要が49隻に達するものと見込んでいる。船型の範囲は1,500DWTから260,000DWT(VLCC)。
c. 漁船
 インドネシア水域において2003年に必要とされる漁船の追加需要の概要は以下の通り。
- 100-400GT型(鋼船):812隻
- 400-600GT型(鋼船):51隻
d. 特殊船
 インドネシアにおいて需要のある特殊船の船種は以下の通り。
- タグ
- 航海案内船
- フェリー
- 巡視艇、防衛用船艇
- 観光船
- サプライ船
 
IV. 産業政策上の措置
1. 投資振興
 インドネシア政府は、既存造船所の近代化と拡張、一定の最小限度の能力を有する新規造船所の新設を目的とした、新造船・修繕船産業に対する新規投資を奨励し、その振興を図っている。
- 政府条例1994年第20号により、直接外資導入制度により設立された企業には100%の外国資本が認められている。
- バタム、ビンタンおよびカリムンが造船業に最適として振興が図られている。
- バタム地区は、輸出税と付加価値税の免除、法人税、借地面の優遇措置など、いくつかのインセンティブにより自由貿易地区として振興が図られている。
2. 優遇税制
- 未だ国内で生産されていない造船用資機材に対する輸入税の免除。
3. 輸入政策
- 一般的輸入制度に関する商工大臣令1997年第229/MPP/Kep/7号により、漁船や貨物船など、中古船の輸入も認められている。
 
V. 造船産業振興政策
 国内造船業振興政策は、海上輪送、漁業、国防、その他の経済部門など、関連部門を以下のような措置を通じて支援することを骨子としている。
1. 政府や国有企業のプロジェクトにおいて、国内造船所からの調達を奨励する利用促進計画。
2. 造船業が資機材の国内調達を増加させるための下請け奨励計画。
3. 国内の設計とエンジニアリング能力向上を目的とした船舶設計センター計画。
4. 船質、コスト・パフォーマンス、納期遵守の各面において造船事業者の共同プロジェクトを奨励して、単一の自国籍キャリア振興を目的とした「インドネシア株式会社」の推進。
5. 海上輸送サービス、海域管理、島嶼間輸送、その他について地方の自治地域振興を目的とした国内生産奨励。
6. インドネシア国内投資家と外国投資家の間に戦略的パートナーシップを発展させることを目的とした投資推進計画。
スラバヤにて、2003年9月15日







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