日本財団 図書館


中国
 世界の造船・海運市場は、2001年9月11日の同時多発テロ、2003年のイラク戦争という事態にも拘わらず、順調に推移している。2003年に入って、状況は予想以上に好調である。中国の一部の造船専門家は、2003年の新規受注量は7千万DWTを超えるものと予測している。世界の造船市場は現在、1970年代半ばの第1のピーク以来の、第2のピークを迎えた。さらに重要なことは、中国経済が長期にわたって7%超の成長を着実に遂げていることであり、2003年前半のGDP成長率は8.2%に達した。力強い国内経済の成長を反映して、新造船需要・老朽船の代替、オフショ機器の需要はかなり活発と見られる。膨大な国内需要は、産業の発展にとって大きな刺激となる。21世紀を迎えて、中国造船業は順調な発展の趨勢を示している。
 
I. 中国造船業の現状
1. 産業規模
 中国国家統計局が発表した統計によれば、2002年末現在で国内の造船所・修繕船工場の総数は384、新造船が221、修繕船が163ヵ所となっている。以上の他に、舶用機器を生産する83工場がある。
 
この統計は中国本土の造船等の事業所のみを対象とし、香港、マカオ、台湾省のそれは含まれていない。
 
 中国の造船および関連産業の総雇用人員は243,000人、うち148,000人は新造船部門、57,000人は修繕船部門、38,000人は舶用工業に所属している。
 
第1表. 中国造船業の事業所数と雇用人員(2002年)
部門 事業所数 雇用人員(単位千人)
新造船 221 148
修繕船 163 57
舶用機器 83 38
467 243
出所:中国国家統計局
 
第1図 造船関連3部門間の企業数と人員数の分布
 
企業数ベース
 
従業員数ベース
 
2. 造船業の分布
 中国では大手造船所は主として臨界地域・河川沿いの省や都市、すなわち江蘇・遼寧・広東、浙江の各省と上海に分布している。
 総収入・竣工量・手持工事量ベースで、主要造船所の大半は中国船舶工業集団公司(CSSC)と中国船舶重工業集団公司(CSIC)に所属している。
 
3. 新造船工事量
(1)2002年の工事量
 2002年における中国造船業の竣工量は612隻、417万DWT(280万GT)で、うち128隻332万DWT(223万GT)は輸出船であった。同年の新規受注量は665万DWT(401万GT)、同年末の手持工事量は1,314万DWT(850万GT)に達した。
 
第2表 中国の新造船工事量、1998 - 2002年
新造船工事量(単位千DWT)
1998 3,140
1999 3,030
2000 3,460
2001 3,920
2002 4,170
 
第2図 中国の新造船工事量
 
 CSSCとCSICは中国造船業の主柱であって、2002年には両社で国内の総竣工量の約58%を占めた。2002年の竣工量が10万DWTを超えた造船所は9ヵ所ある。
 
(2)2003年前半の中国国内新造船工事量
 2003年前半の竣工量は247万DWT(173万GT)に達し、うち207万DWT(129万GT)は輸出船であった。新規受注量は816万DWT(489万GT)で、うち607万DWT(356万GT)が輸出船。手持工事量は1,980万DWT(1,224万GT)で、輸出船のシェアは1,488万DWT(910万GT)。世界造船市場の活況により、中国造船業の竣工量、新規受注量は史上最高の水準に達した。現在、中国の主要造船所は2年半分の手持工事を確保し、中には向こう3年間、船台に空きがない工場もある。
 
(3)今後の発展に向けての課題
 中国造船業は近年急速な発展を遂げてはいるものの、中国自体が発展途上国であることから、業界全般、個々の造船所とも未だ発展途上の段階にある。中国造船業は未だに先進造船諸国にはるか後れを取っているが、その後進性は特に産業規模、生産性、設計、建造、品質管理および経営等の面で顕著に見られる。
 
II. 中国の造船政策
 造船産業は中国の経済システム全体の中で、きわめて重要な部分を占めている。改革開放政策の開始以来、急速な経済成長の成果として、中国はある程度の産業基盤、十分な資本、そして特に安価かつ豊富な労働力を確保した。これらの要素はいずれも造船産業の発展にとって必要な条件である。中国政府は造船業を重要視している。
 中国政府は各造船所が市場における自由な競争を通じた発展を目指すよう奨励している。造船業の運営における政府の関与は主として以下の面に絞られる。すなわち発展計画、造船政策、諸規則・基準の策定、業界に対する監督、調整等である。
 「第10次国家経済社会発展5ヵ年計画」(2001-2005年)の期間中、内外の新造船需要の趨勢にかんがみ、わが国では造船業についてもその健全、着実な発展を図るために「第10次造船業5ヵ年計画」を策定した。この計画によれば、中国造船業は当初のパターンとして、大企業が主力となり、大中小各規模の企業が調和の取れた成長を遂げ、構造の最適化、合理的な分布、規模と特化の調整、国家経済発展と国防確保のニーズが適切に充足されるような方向を目指している。一方、市場の需要に合致したプロダクト・ミックスを図り、船舶設計、建造、経営、納期、品質、効果等の面で先進造船諸国との較差を最小限に縮めたいとしている。
 
III. 造船業の国際協調
 中国における改革開放政策の開始以来、中国造船業は多数の他の造船諸国と広汎かつ友好的な協調を図ってきた。WTO加盟以後、中国は国内における外国企業の投資・営業活動の機会を拡大し、またその環境を安定化させている。将来にわたって、中国造船業は世界の他の造船諸国との協調、交流を一層深めることになろう。
 WTOに加盟した今日、中国政府と造船業は、「1994年補助金・対抗措置協定」(SCM協定)や「1994年反ダンピング協定」(AD協定)など、WTOのルールを遵守し、公正な競争を行う方針である。今や中国は新造船協定の交渉にも参加している。わが国としては新造船協定により世界造船市場が律せられ、正常な競争力の強化、市場の歪曲防止が実現し、商船建造業界における正常な競争条件が確立されることを望んでいる。わが国はまた、新造船協定が発展途上の造船国に対する配慮を厚くし、途上国、先進国両社の発展を図ったものとなることを期待したい。
 2002年に中国は造船業界の国際活動に積極に参加し、ハンブルク(ドイツ)で開催された第20回造船・機械・海事技術国際見本市(SMM2002)にパートナーとして参加、また2002年10月には初めて正式メンバーとして、韓国で開催された第11回5極(JECKU)首脳会談に出席した。同年9月には北京にて世界需要予測専門家会議を主催、その際には2001年から2015年までのわが国としての新造船予測を発表した。
 アジア太平洋地域が世界造船業の中心となりつつあり、また多数のアジア太平洋諸国が近年、それぞれの造船業を急速に発展させていることは中国としても喜ばしいことである。新興造船国の勃興と発展は、グローバルな造船業発展に資するものと確信している。責任ある国家として中国は、開かれた経験の交流を通じてアジア太平洋地域において、造船分野における他国との地域協力を緊密化し、以って世界の造船・海事関連産業の発展に寄与することを望んでいる。







日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION