9. 2003年修正案による判別
各種ターゲット方式のなかで最新の方式である2003年修正案(表2 参照)について検討してみる。同じく予測対象は2003年9月1日〜12月4日までの4985ケースとした。判別分析と同様に一定ポイント値以上の場合に拘留有りと予測することにし、この判定基準値を順次変化させ捕捉率への影響を調べてみた。
表15 判定条件 評価点数=100の場合
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Detention
Yes=2, No=1 |
予測グループ番号 |
合計 |
1 |
2 |
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元のデータ |
度数 |
1 |
4434 |
137 |
4571 |
2 |
331 |
83 |
414 |
|
% |
1 |
97 |
7 |
100.0 |
2 |
80 |
20 |
100.0 |
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検査率=4.4%
捕捉率=20%
全正答率=91%
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表16 判定条件 評価点数=50の場合
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Detention
Yes=2, No=1 |
予測グループ番号 |
合計 |
1 |
2 |
|
元のデータ |
度数 |
1 |
3638 |
933 |
4571 |
2 |
175 |
239 |
414 |
|
% |
1 |
80 |
20 |
100.0 |
2 |
42 |
58 |
100.0 |
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表17 判定条件 評価点数=25の場合
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Detention
Yes=2, No=1 |
予測グループ番号 |
合計 |
1 |
2 |
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元のデータ |
度数 |
1 |
2510 |
2061 |
4571 |
2 |
75 |
339 |
414 |
|
% |
1 |
55 |
45 |
100.0 |
2 |
18 |
82 |
100.0 |
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表18 判定条件 評価点数=20の場合
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Detention
Yes=2, No=1 |
予測グループ番号 |
合計 |
1 |
2 |
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元のデータ |
度数 |
1 |
2011 |
2560 |
4571 |
2 |
48 |
366 |
414 |
|
% |
1 |
44 |
56 |
100.0 |
2 |
12 |
88 |
100.0 |
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表19 判定条件 評価点数=13の場合
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Detention
Yes=2, No=1 |
予測グループ番号 |
合計 |
1 |
2 |
|
元のデータ |
度数 |
1 |
1249 |
3322 |
4571 |
2 |
21 |
393 |
414 |
|
% |
1 |
27 |
73 |
100.0 |
2 |
5 |
95 |
100.0 |
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図3に以上の分析の結果をまとめて示す。
図3 分析結果
横軸に全船舶に対する検査率を、縦軸に拘留可能性のある船舶の捕捉率を取ってあり、線型判別関数、管理会社を考慮した判別関数、及び2003年修正案方式によりどの程度の捕捉率が達成できるかが示されている。斜めの点線は判別式がまったくなく無作為(ランダム)に船舶検査対象船を選んだ場合の捕捉率を示している。
また、赤色の点は、船籍が北朝鮮、ホンジュラス、カンボジア、インドネシア、ベリーズ、ベトナムの船舶のみ無条件で検査した場合の捕捉率、緑色の点は上記船籍の船舶に船齢21年以上の船舶を検査対象に選んだ場合の捕捉率を示す。
Z=1の線は、図2における左右の山を区切る線に相当している。この判定基準により全船舶の約16%を検査すれば約55%の捕捉率が得られることを示している。
この図から見ると、すべての方式においてランダムに船舶を選定するより格段に良好な成績が得られている。
管理会社情報を考慮した判別関数の結果はデータ数が少ないため、グラフが滑らかでないがほぼ全域で2003年修正案よりも改善されていることが分かる。特に検査率20%〜60%で全ての方式の中で最も良い捕捉率を与えている。今後のデータの蓄積によりさらなる予測精度向上の可能性があるといえる。
判別分析は良好な結果を与える。特に検査率が60%以下の場合は安定して2003年修正案方式に比較し高い捕捉率を与えている。
特定の船籍の船舶のみを無条件で検査する方式、それに加えて老朽船を検査対象に加える方式は、特別な判別式を使用しない単純な方法のわりには高い捕捉率が得られる簡便な方法といえる。
ここで、図3から得られる情報をより具体的に例示してみよう。2003年修正案方式により評価点41ポイント以上のケースを検査すると検査率約30%で捕捉率67%となる。判別分析での判定基準のZ値0.0以上のケースを検査すると検査率約30%で捕捉率74%となる。さらに管理会社情報を考慮した判別関数を用い判定基準のZ値-0.61以上のケースを検査すると検査率約29%で捕捉率81%が得られる。一方、特定船籍(北朝鮮、ホンジュラス、・・・等)及び船齢21年以上の船舶を全て検査する場合は検査率約30%で捕捉率は66%となる。ランダムに30%の船舶を検査した場合の捕捉率は30%にしかならないことがわかる。
検査船選定のための判別式としては
Z = -0.909 + 0.053・V4 + 0.040・V8 - 0.341・V9 + 0.023・V11 + 0.388・V20 + 0.009・V21 ・・・(3)
を提案する。ただし、
V4: Ship flag(detention rate) (%)
V8: Class(detention rate) (%)
V9: IACS or NO (Yes=1, No=0)
V11: Ship age (年)
V20: Number of detentions during last 4 inspections (回)
V21: Number of deficiencies during last 4 inspections (個)
なお、判定基準Zの値と、解析対象としたデータ群においての検査率の関係は図4となっている。
図4 Z値と検査率の関係
Z値と検査割合の関係
捕捉率80%を目標として設定すると、図3から検査率約40%を選定すれば良いことがわかる。この検査率40%は図4から判別基準Zの値-0.25に対応していることがわかる。
検査率を60%以上で増加させても、捕捉率の大幅な向上は望めない。本判別式を用いて選定した場合、検査率60%で既に90%の捕捉率が達成されており頭打ちの状態になっているからである。
このようにして、図3、図4を用い目標の捕捉率を得るためには判断基準値Zをいくつにすれば良いかが決められる。逆に、検討対象船舶のZ値から拘留すべき船舶である確率が推定可能である。
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