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2.1.3 地形歪み除去画像の作成及び評価
 本研究で実施した最適近似曲面法及び共一次内挿による水深データの補間において、両者の水深値に大きな差が認められなかったため、最適近似曲面法による水深データのみを用いて、LINE-2及び3の地形歪み除去画像の作成を行った。
 使用したデータは、名古屋港実験においてHYPACKと同時収録したデータ収録装置で収録した16bitの音響画像データである。平成14年度研究成果より、データ収録装置の収録データは、HYPACKに比べて収録時における時間遅れの影響が小さく、特にHYPACK収録の音響画像データよりも、斜距離補正時において適切な補正ができることから、地形歪み除去においても、位置精度の高い画像作成が可能となる。
 
(1)目標値
 平成14年度において、SeaBat8101の測深誤差5cm、動揺センサーの精度、シミュレーション及び測量データの解析結果から設定した目標値(表3)に従い、補正前と補正後の画像から地形歪み除去精度の評価を実施した。
 
表3. POS/MVを用いた揚合の目標値(照射覆域を考慮した場合)
水深 入射補角40度以内の垂直方向の目標値 入射補角40度以内の水平方向の目標値
送受波器直下 外側ビーム 送受波器直下 外側ビーム
10m 10cm 15cm 2cm (±1m) 20cm (±0.5m)
20m 10cm 20cm 3cm (±1.5m) 40cm (±1.0m)
 
 表3の各数値には、測位データの垂直及び水平方向の誤差は含まれていない。名古屋港実験においては、GPS衛星の補足数が足らず、KGPSの精度が著しく劣化したため、DGPSによる測位データを使用したことから、垂直方向の誤差±5m、水平方向の誤差±5mを考慮する。
 上記の目標値に対して、同時に取得したSeaBat8101の地形図のターゲット位置をもとに、地形歪み補正前の画像及び補正後の画像から、移動量を算出し評価を行う。
 画像から評価が困難な場合については、斜距離補正前(地形歪み補正前)の画像データから、地形歪み除去のために、計算によって求めた各音響画像データの水平移動量をグラフ化し、検証する。
 
(2)地形歪み除去画像の作成
(1)LINE-2地形歪み除去画像
 図25は海底に設置したターゲットの設置方向を示したものである。LINE-2の地形歪み除去後の画像と除去前の画像を図26に示す。図27は、地形歪み除去画像と地形図を並べた図である。ターゲット1は、ターゲット上面の箱の形状が、鮮明に復元されている。ターゲット1の上面には、ターゲットの中で一番大きい高さ52cmと32cmの箱が設置されており、これら二つの箱の設置方向まで読み取ることができる。地形歪み除去画像から、ターゲット1の水平移動量を読み取ると約4.0mとなる。
 
図25. ターゲットを捉えた測線
 
 地形歪み除去画像のターゲット2及び3は、画像上からその形状を明確に認識することはできない。特にターゲット3は、ターゲット上に設置した箱が小さい上に、送受波器直下近傍を通過したため、音響画像データの照射覆域が広く、分解能が悪いためである。また、ターゲット1は、ターゲット上の箱の設置方向が測線と平行であるが、ターゲット2と3は斜交または直交しているため、設置方向の違いによる影響も考えられる。地形歪み除去画像からターゲット3の水平移動量を読み取ると、約2.0mとなる。一方、ターゲット2は、ターゲット1同様、上面に2個の箱を設置したものであるが、送受波器からの斜距離が長いために、航跡方向に画像が伸びている。またターゲット2は、送受波器から離れた位置にあるため、地形歪み除去画像から水平移動量を読み取ることはできない。
 
図26. LINE-2の地形歪み除去後の画像と除去前の画像
左:除去後の画像(放射量補正済)、右:除去前の画像(放射量補正未実施)
 
図27. LINE-2の地形歪み除去後の画像(放射量補正済み)と地形図







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