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吹上浜海底地形
 
図2.3.44 吹上浜の浅海域海底地形の3次元表示
 
図2.3.45 吹上浜の浅海域海底地形のコンター表示
 
図2.3.46 吹上浜沖合の縦断図(測深記録)
 
3.1 研究成果のまとめ
3.1.1 現地観測結果
(1)観測手法について
 離岸流特性を明らかにする上で、観測機器が離岸流域、向岸流域、そして沿岸流域に適切に配置される必要がある。そのためには、事前の上空からの探査や現地踏査による目視観測(ビデオカメラ等による観測を含む)が重要であり、その場合の観測ポイントが明らかになった。それについては後述するとおりである。更に、本観測においては、海象条件が時々刻々変化することを考慮して、観測責任者が設置直前の流況を確かめ、適宜修正しながら機器設置箇所を最終決定することが大切である。
 
(2)波浪・潮位等の変動と離岸流発生特性
 (1)一般論として、入射波高が1m程度以上で離岸流は発生しやすい。その場合、離岸流流速は0.5〜1.0m/sにもなることもある。
 (2)沖合いに構造物があり、潮位変化の小さい浦富海岸の場合、離岸流の発生頻度や流況パターンに、波向きが重要な要因となっていることが明らかになった。
 (3)浦富海岸では、不安定性に起因する離岸流が発生している状態では、発生地点での平均水位が、周辺の平均水位よりも低下している事がわかった。しかし、水位が低下することによって離岸流が発生したのか、離岸流が発生したから水位が低下したのかを判断するには至らなかった。
 (4)潮位変化が大きい青島海岸の場合、離岸流の発生頻度に、潮位が重要な要因となっていることが明らかになった。すなわち、離岸流は干潮時に発生頻度が高く、流速も大きい傾向にあるのに対し、満潮時には離岸流の発生がほとんど見られなかった。
 
(3)海岸地形と離岸流発生特性
 (1)rip-channel/feeder-channelシステムで発生する離岸流の詳細をビデオ解析及び流速測定で捕らえることができた。同じ地形上でも入射波浪特性によって離岸流が発生しないことも明らかになった。
 (2)青島海岸の場合、離岸流の発生しやすい場所は干潮時の汀線が入込んだ場所(澪筋を示す海底形状)と一致するなど、海岸地形と離岸流発生は密接に関連している。
 (3)吹上浜海岸の場合、汀線に並行に複数の沿岸砂州(多段バー)があり、この地形特性から離岸流よりも沿岸流が卓越する。
 
(4)離岸流機構の特性
 (1)広い範囲で入射波浪が制御される場合に発生する離岸流(たとえば浦富海岸の潜堤開口部の離岸流)は、従来の余剰運動量フラックスの勾配を外力とする海浜流数値計算手法で再現されることがわかった。
 (2)カスプ地形の凹部(あるいはrip-channel)から発生する離岸流も、上記の方法で予測可能であることもわかった。波状汀線上での海浜流計算結果を図3.1.1に示す。
 
図3.1.1 波状汀線上での海浜流計算例
 
 (3)離岸流の発達時に水温が低下する傾向が、Wave Hunter等により観測された。また、上空からの熱赤外ビデオカメラで、離岸流域と低水温分布がかなり一致していることが観測された。これは今後の実用レベルで、離岸流域の判読・推定に極めて有効な情報と考えられる。







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