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2.2.2 波子海岸(島根県)
(1)観測の概要
1)波子海岸の概要
 波子海岸では、2001年8月9日7名の学生が離岸流により沖に流されるという事故が発生した。また、底質粒径が比較的大きく、汀線近傍の海底勾配が比較的急で、いわゆる反射型海浜である。実測対象海岸と計測器の配置を図2.2.24に示す。
 
図2.2.24 波子海岸と計測器の配置
 
2)観測目的
 波子海岸は、浦富海岸と異なり、底質粒径の大きな海岸で、汀線付近の海底勾配も比較的急峻で、いわゆる反射型海浜である。このような海岸では、砕波帯掃除パラメータが大きく、入射波向によっては定常モドのエッジ波が形成されやすい。したがって、ここでは、Type-Cの離岸流が形成されることが予想される。このような離岸流の観測を目的とする。
 
3)観測期間
自)平成15年7月10日
至)平成15年7月16日
 
4)観測方法と使用機器
 水深13m地点で、Wavehunter-Σによる来襲波の測定を行い、水深6m地点でADCPによる流れの計測を行った。計測時間間隔などは、浦富海岸と同じであるが、ADCPでの流速測定は、水深0.76mから0.25cm間隔に上方16層の計測を行っている。
 極浅海域での水位変動および流速の計測も、浦富海岸と同じシステムで行った。計測器の配置を図2.2.24に示す。
 
(2)観測結果
 Wavehunterによって計測された水位変動から計算された観測期間中の入射波諸元、ADCPで計測された第6層(海底から約1m)の地点における流速、及び海浜上で計測された風諸元を、図2.2.25〜2.2.27に示す。
 
図2.2.25 Wavehunterで計測された入射波諸元時系列
 
図2.2.26 ADCPで計測された第6層(海底から1m上部)の流速
 
図2.2.27 観測期間中の風速・風向
 
 図2.2.25より、観測期間中では7月12及び14日に比較的大きな波浪が来襲しているが、その波高は、高々1m程度である。また、周期はほぼ6s、波向は北よりで、一定している。
 波子海岸の汀線方向は、NE-SW方向、法線方向はNW方向である。従って、波向Nの波浪は、北から南の方法に流れる沿岸流を引き起こす。図2.2.26に示すADCPの測定結果は、計測された流速のN-S及びE-W方向成分から沿岸方向及び岸沖方向成分を算定して示したもので、流速の正方向が、それぞれSからN方向、及び沖向きに対応する。図2.2.26より、沿岸方向成分は、波向に対応して平均的に見てNからS方向で、岸沖方向成分は常に若干岸向きの微弱な流れを示している。沿岸方向成分には、明確な24時間周期の変動が含まれているが、これは潮流の変動に対応したものと考えられる。
 図2.2.27に示す風速は、12時間周期の変動が明確に現れているが、最大8m/s程度であった。
 表2.2.2に観測期間中の天気を示す。梅雨末期で、島根県上空に梅雨前線が停滞する最悪の条件であった。
 
表2.2.2 観測期間中の天気
  7/10 7/11 7/12 7/13 7/14 7/15 7/16
曇後大雨 雨時々曇 曇一時雨 大雨 晴一時曇
曇一時雨雷を伴う 雨後曇 雨一時曇 雨一時曇 曇後時々晴 快晴
 
(3)解析及び考察
 極浅海域に設置した流速計によっても、あるいは飛行船からのビデオ撮影によっても、明確な離岸流は検出されなかった。これは、進行性あるいは定常状態のエッジ波は認められず、定常エッジ波に対応するような汀線変動も確認されなかったことによる。観測期間中の波子海岸は、斜め入射波によって発生する単純な沿岸流及び潮流の卓越した状態にあったものと推定される。







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