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3)汀線の凸部から発生した離岸流(7月6日12時〜7日24時)
 7月6日にビデオで捉えられた離岸流は、feeder-channelとrip-channelが形成された凸部から発生している。この地形は少なくとも8日未明まで存在していた。そこで、この間に極浅海域のrip-channel周辺(水深約0.6m)で測定された流速の時系列の2例を図2.2.20(7日12時)および図2.2.21(7日22時)に示す。
 7月7日の未明から16時頃までは、図2.2.20にその例を示すように、微弱な沿岸方向流速は存在するものの、岸沖方向には顕著な流れが存在せず、平均的な流速はほぼ0である。
 
図2.2.20 極浅海域で測定された流速(7月7日12時)
(a)岸沖方向流速
 
(b)沿岸方向流速
 
図2.2.21 極浅海域で測定された流速(7月7日22時)
(a)岸沖方向流速
 
(b)沿岸方向流速
 
 しかし、7月7日20時以降、図2.2.21に例を示すように西向きの沿岸流速ともに、長時間継続する沖向きの流れが生じ、その流速は、時として100cm/s以上となる。
 水深7m地点で計測された入射波高は、7日10時頃から増大し、12時頃にピーク(Hs=1m)となり、その後徐々に減衰する。この間は、図2.2.20に示すように顕著な流れは発生せず、波高が減衰してから図2.2.21に例を示すような流れが発生する。
 図2.2.22は、上記2つの期間における流速測定点での水位変動時系列を示したものである。これらの図より明らかなように、12時の水位変動には、若干大きな長周期変動(周期10数分)が含まれてはいるが、波高そのものはいずれも30cm程度で、差異はない。これは、測定点が十分に浅い砕波帯内にあることから水深によって波高が規制されているからである。
 
図2.2.22 流速測定点での水位変動
(a)水位変動(7月7日12時)
 
(a)水位変動(7月7日22時)
 
 ある程度の海底地形変化は生じていると推定されるが、ほぼ同じ地形上で入射波も顕著な差異がないという条件で、なぜ離岸流が生じたり生じなかったりするのかということを検討したが、流速測定点周辺の水位などの水理量では説明ができなかった。ただ流速測定点での波浪の方向集中度には顕著な差異が現われた。
 図2.2.23に7月7日12時および22時の流速のN-S方向成分とE-W方向成分の相関を示す。これらの図に示される方向分散は、図2.2.19に示した場合に比べて押しなべて方向分散が大きいが、顕著な流れが発生した7日22時の分散は非常に大きいものとなっている。
 
図2.2.23 流速測定点での方向分散
(a)7月7日12時の方向分散
 
(b)7月7日22時の方向分散
 
 Rip-channelとfeeder-channelが形成されている地形状で発生する流れは、来襲する波の波向に依存し、特定の波向の入射波の場合には流れがまったく発生しない状況が作り出される可能性もあることが考えられる。方向分散性の強い波浪の場合は、波向が広い範囲に分布するため、流れが引き起こされやすいということである。







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