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2.2 現地観測(モデル海岸I)
2.2.1 浦富海岸(鳥取県)
(1)観測の概要
1)浦富海岸の概要
 対象海岸の浦富海岸は、図2.2.1に示すように東西両端を岩礁に囲まれた約1.4kmの砂浜海岸で、そのほぼ中央に天端水深DL-2m、天端幅30〜50m、堤長400mの潜堤が2基設置されている。なお、西側岩礁は田後港に隣接する。
 
図2.2.1 浦富海岸における観測器の配置
 
2)観測目的
 本業務に先行して、2002年9月に当該海岸で行った実測により、以下のことが明らかになっている(出口ほか、2002)。
 
a)浦富海岸は、逸散型の海岸で広い砕波帯を持ち、複雑な海浜流系が形成されると同蒔に、短時間に大きな水深変化が生ずる。
b)N〜NW方向から有義波高1m以上の波浪が入射した場合に、潜堤開口部水深3mの位置に設置されたADCPによって計測された流速結果には沖向きの流れ(離岸流、流速0.3m/s以上)が顕在化し、入射波高の増大に伴って沖向きの流速も増大する。2000年に発生した死亡事故はこのような潜堤開口部で発生する離岸流によるものと推察される。また、この開口部からの沖向き流れは、水深方向に積分し、時間平均を取ることによって導かれる海浜流基礎式を数値的に解くことによって再現される(Type-B3)。
c)極浅海域(水深0.7-1.0m)に設置した電磁流速計によっても、沖向きの流速0.5m/s〜1.0m/sに達する強い流れが観測された。その継続時間は、数分から数十分の短命な流れであった。また、水位の時間変化と流速の時間変化には明確な対抗関係は認められなかった。
d)気球に搭載したビデオカメラによる撮影により、極浅海域で2種類の離岸流が計測された。1つは、カスプ地形の凹部から発生する離岸流で、比較的長時間流れが持続した(Type-B1)。もう1つは、突発的に発生する継続時間が10分以内の短命な離岸流(Type-B2)である。いずれの場合も、入射波高が1m以下の場合に発生したものであり、平均的な砕波帯を突き抜けて離岸流頭を形成した。
e)前者のカスプ地形凹部から発生する離岸流は、先に述べた海浜流基礎式から数値的に再現されるが、後者の離岸流の発生原因は不明である。
 
 以上の結果を踏まえ、(1)潜堤開口部からの沖向き流れの確認、(2)極浅海域で発生する離岸流の発生原因の解明と、その予測方法を確立するための海象の計測という2点を目的として実測を行う。
 
3)観測期間
自)平成15年7月2日
至)平成15年7月9日
 
4)観測方法と機器
a)使用機器とデータ取得方法
沖波入射波:
wavehunter-Σ103で水深7m地点での水位変動と水平方向2成分の流速のDt=1sの連続測定(設置位置は図2.2.1、設置状況は図2.2.2参照)
潜堤開口部流速:
workhorseで鉛直方向8点での水平方向2成分流速のDt=60sの連続計測(設置位置は図2.2.1、設置状況は図2.2.3参照)
浅海域水位変動:
Compact WH*2, Compact ADT*8 水深0.6-1.2mの極浅海域でDt=1sの水位変動の連続計測(設置位置は図2.2.1、設置状況は図2.2.4参照)
浅海域流速:
電磁流速計(Compact EC)*2台、極浅海域、水深0.7-1.0mにおける水平方向2成分流速のDt=1sの連続計測(設置位置は図2.2.1参照)
流況:
飛行船からのビデオ解析と漂流ブイ(改良オーブコム、波子のみ)風速7m/s以下の気象条件で行う(計測システムは図2.2.5参照)
測位・測深の試み;
K-GPSによる測位・測深の試行を行う。
 
b)設置状況、観測方法等
 図2.2.2〜2.2.4に、Wavehunter、ADCPおよびCompact-WHの海底設置状況の写真を示す。また、飛行船からの空撮システムの概略を図2.2.5に、飛行船とビデオカメラ部の写真を図2.2.6に示す。
 
図2.2.2 Wavehunterの海底設置状況
超音波: 
水深45m、範囲:12.8m、分解能:1cm±1%FS
流速: 
±3m/sec、±1%FS、分解能:1cm/s
水圧: 
0〜5kg/cm2、±0.5%FS、分解能:1g/cm2
水温: 
-5〜40℃、±0.1℃、分解能:0.1℃
方位: 
0〜359°、±3°、分解能:1°
メモリ: 
2,400万データ(32MB相当)
MagicLineインターフェイス
 
図2.2.3 Workhourseの海底設置状況
ワークホースADCP(Acoustic Doppler Current Profiler)
モデル名: 
センチネル
中心周波数: 
600kHz
バンド幅: 
150kHz
ビーム数: 
4ビーム
内蔵メモリ: 
16MB
層厚: 
0.1〜8m
層数: 
1〜128層
測流範囲: 
±5m/s(デフォルト)最大±20m/s
 
図2.2.4 Compact ATDの海底設置状況
 
図2.2.5 飛行船からのビデオ空撮システムの概要
 
図2.2.6 浮揚前の飛行船と空撮部
 







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