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大阪府和泉市
総合的な学習における交通・環境教育プログラム
「かしこいクルマの使い方」
 
1. プログラムの目的
 小学校の総合的な学習の時間において、「交通問題」と「環境問題」を題材とした学習を通じて、自らの日常の生活行動が社会環境と相互に影響していることを学び、子どもたちが公共問題に主体的・自主的に取り組む姿勢を育むことを目的とする。
 
図1 本プログラムの概念
※「資料1 トラベル・フィードバック・プログラム TFP(Travel Feedback program)参照
 
(1)対象校:和泉市立緑ヶ丘小学校の5年生、4クラス(児童数:135名)
 
(2)実施期間と充当する総合的な学習の時間
平成14年度2学期〜3学期の総合的な学習の時間
 
(3)実施体制
 本プログラム実施の場は学校と地域(PTAなど)であるが、次のような理由から行政(交通担当および環境問題担当部署、教育委員会)及び支援団体が全面的に支援して一体となって取り組むものとする(図2)。
 また、プログラムの各ステップの前には、学識経験者と教師で構成するWGを開催して充分な準備をすると共に、授業のアシストのために大学生の参加協力を得る。
 
・先進的な取り組みである本プログラムの一般化と拡大展開を図るために、教育、行政、及び研究機関が一体となって取り組む仕組みを構築する。
・学校と地域の協働学習を支援し、地域活動の活性化を図るために行政団体が支援する。
・プログラムの信頼性確保と精緻化のために、学識経験者とコンサルタントによる技術的支援を行う。
 
図2 プログラム推進の体制
 
(4)プログラム内容
(1)プログラム構成
a. プログラムの対象は、5年生の児童とその家族の5年生以上を対象とした交通行動に関するアンケート調査(第1回アンケート調査)。(資料2「交通行動についてのアンケート調査」)
b. 地球環境問題と交通問題に関する授業。
c. 1日の行動を日記(交通ダイアリー)に記録し、交通に関してのCO2排出量を把握し、それをもとに1週間分のCO2排出量を算出する。また、電気、ガスについても1週間分の消費量を記録し、CO2排出量を算出する(第1回交通ダイアリー調査)。(資料2 「(2)ア交通ダイアリー」、「(3)〜(4)現況カルテ」、「(5)〜(7)計算シート」、「資料3 現況カルテ:個人ワークシート例」)
d. 社会見学(貸し切りバスでの移動)先を例として、貸し切りバス以外の公共交通機関を利用した移動プランの作成。
e. 第1回交通ダイアリー調査で記録した1日の行動について、CO2の排出を削減する移動プランを作成し、その実践をできる限り試みる。(「(8)‐1マイカープランの変更利用票」)
f. 再度、1日の交通行動を記録し、CO2排出量を算出し(第2回交通ダイアリー調査)、第1回交通ダイアリー調査のときと比較するとともに、CO2排出量削減努力について、自己評価を行う。(「資料4 学年平均のCO2排出量」)
g. 授業を通して、「何が変わったのか」を把握するため、第2回アンケート調査を実施。
h. 半年間の学習成果をまとめ、児童が発表。(「資料5 報告会パンフレット」)
 
表1 14年度のプログラム構成
Step 名称 概要 コマ数
Step‐1 イントロダクション (1)環境意識の測定
(2)交通・環境問題の現状と原因の理解
2コマ
2コマ
Step‐2 現況カルテ (1)CO2排出構造の理解
(2)交通ダイアリーの理解と記入
(3)現況カルテの理解と記入
(4)交通行動に占めるCO2排出量の理解
2コマ
4コマ
2コマ
2コマ
Step‐3 CO2削減方法の検討 (1)社会見学を事例とした削減方法の検討
(2)個人票による削減方法の検討
4コマ
2コマ
Step‐4 診断カルテ (1)交通行動を省みて、CO2削減方法を検討
(2)診断カルテの作成
2コマ
2コマ
Step‐5 行動プラン (1)行動プランの作成 2コマ
Step‐6 CO2削減努力評価 (1)CO2削減努力の評価 2コマ
Step‐7 行動持続方法の検討 (1)行動持続方法の検討 1コマ
Step‐8 発表会 (1)準備
(2)発表会
3コマ
1コマ
合計 33コマ
※コマ数は、1授業時間毎に1コマとおく(1回のプログラムは2コマ)。
※定期授業(水曜日)以外の取り組みコマ数は含まない。
 
(2)教材
 教材は、事務局が作成した資料および副読本を用いた。(写真1、表2)。
 また、11月から学習意欲への刺激を目的として、隙間時間を利用して話題提供を行うため、交通と環境に関するコラムシート「Passe-temps」(全9号)を発行した(表3)。
 
写真1 
教材(左から副読本、資料、ワークシート、コラムシート)
 
表2 教材一覧
分類 名称 概要
表示・発表用 副読本
(かしこいクルマの使い方)
学習の動機形成、学習支援のための教材
パネル 地球温暖化資料パネル
ワークシート 学習を整理、進めるための支援シート
コラム 関連する話題提供用教材
体験・活動用教材 交通行動についてのアンケート調査(第1回、第2回) 交通行動についての意識調査、3日間のクルマ利用調査
現況カルテ調査 現況カルテ調査票(電気、ガス、クルマ利用)
CO2排出量計算シート
交通ダイヤリー調査
(第1回、第2回)
平日、休日各1日の交通ダイヤリー調査
CO2排出量計算シート
交通機関シール ダイヤリー作成などに使用する交通機関シール
公共交通機関路線図、時刻表 変更プラン、行動プランを検討に使用する情報
マイカー利用の変更プラン表 現状の交通を評価・診断するためのシート
行動プラン記入表 行動計画を検討するための支援シート
 
表3 コラムシート「Passe-temps」の話題提供内容
番号 テーマ 内容
Vol. 001 地球環境問題は温暖化だけなの?? 地球環境問題が温暖化問題だけでなく、他の問題と複雑な関係にあることを紹介。
Vol. 002 2.8kgのCO2ってどれぐらいなの?? 副読本にある「2.8kgのCO2」を実感するために、実験を通じてその体積を紹介。
Vol. 003 エコカーってな〜に?? 環境にやさしいクルマである「エコカー」の紹介。
Vol. 004 公共交通ってどんなもの? 「公共交通」にはどのようなものがあるかを紹介。
Vol. 005 電車が、バスが、かしこくなる!! 人工知能搭載電車やITSサービスなど新しい交通技術の紹介。
Vol. 006 「環(わ)のくらし」って知ってる? 生活レベルを下げることなく快適で便利な環境にやさしい生活を目指す「環のくらし」を紹介。
Vol. 007 P&Rでお金節約!時間節約!! CO2排出量を削減する一つのクルマ利用方法として有効なP&Rを紹介。
Vol. 008 環境にやさしい自転車を使おう!! 道路改築により自転車道の整備がすすみ、快適な自転車利用環境整備が進展していることを紹介。
Vol. 009 環境にやさしいモノ運びへ!! 人の動きからだけでなく、モノの動きから発生するCO2も削減するための新しい物流システムを紹介。
 
 また、冬休み期間中の課題として、公共交通を利用した行動プランを立て、実際にそのプランに基づいた行動を体験するという課題が与えられた(写真2)。掲示された新聞には、目的地までの経路図や写真、使用したきっぷなど貼り付けられ、どの児童も熱心に調べて実際に行動したものと思われる。
 
写真2 
冬休み期間中の課題
発表新聞(一部)







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