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(5)公共交通利用促進施策の検討
 これまでの調査などにおいて洗い出されてきた現況と課題、住民ニーズの整理を通して、これらの課題などの解決策を提起するとともに解決を図るために必要な効果の検証法なども含めて検討し、公共交通の利用促進方策をまとめた。
 上記については、現在次の3点として、検討を進めていくことを想定している。
(1)(仮称)巣子駅開業に伴う新しい公共交通網整備
 平成17年を目途として本村巣子地区のIGRいわて銀河鉄道線に新駅((仮称)巣子駅)を開設することとして、現在村とIGRなどが事業を進めている。
 この新駅の開業によって、巣子地区とその周辺においては、今の路線バスや自家用車などの利用者が鉄道の利用に移行することが予想される。それに伴い、巣子地区とその周辺における自動車交通量の抑制が期待される一方で、現行の路線バスの運行体制のままでは利用者が減少することも予想されている。
 そこで、新駅開業後の鉄道とバス、自家用車などの新しい役割について検討を行ない、新駅開業に対応した新しい地域の公共交通網を考案し、利用促進を図っていく必要がある。
(2)村内における路線バス交通の対応
 平成13年に国の不採算バス路線へ対する補助制度が大きく見直され、併せて路線バス事業の事実上の自由化が図られた。これにより、各市町村内のバス路線については、完全にそれぞれの市町村の責任において維持・確保を図る必要性が求められるようになった。
 しかしながら、各市町村の逼迫する財政状況の中においては、不採算バス路線に対する支出の増大には耐えかねる状況であり、住民の理解を得た中で村がいかに不採算バス路線へ対処するべきなのかを検討する必要がある。
 また、現在体系的な位置付けが不十分となっている村内の路線バス網については、平成17年度中にも予定されるIGRいわて銀河鉄道線における(仮称)巣子及び(仮称)青山両駅の開設によって全村的にバス路線の見直しが予測されることから、これを機に路線バスを中心とした村内の公共交通ネットワークの構築を検討する。
 そして、路線網の充実と利用増進を図ることにより、村内の路線バス交通全体の底上げと持続的な路線維持手法の確立し、全村的な路線バス交通、公共交通機関の維持を目指すものである。
(3)村が行なっているバス交通事業の対応
 村では、現在、日中における高齢者の輸送を主目的とした福祉バスと中山間地域住民の通院者の輸送を目的とした患者輸送バスを運行している。また、併せて村では、一部の公共交通不便地域については、朝夕の通学を中心とした交通手段の確保のため、一旦廃止や廃止の検討が行なわれた赤字バス路線を村が補助金を支出することにより維持を図っているというものがある。
 しかしながら、それらのバス事業は村の一般財源からの支出であり、財政が逼迫する中にあっては、これらの事業を住民の理解を得た中でどのような方向性を採るべきであるのか検討する必要がある。
 そこで、村が行なうバス事業の必要性とその効果について検証を行ない、村の公共交通体系の中で村のバス事業の位置付けについて考案する必要がある。これらは、前述(3)の路線バス交通の再編と併せて、路線バスとの役割分担と連携を図り、最終的には公共交通機関の維持による、地域モビリティの確保を目指すものである。
 
 これらの施策の展開を図るため、今後は、一層の現状の分析や住民ニーズの把握に努めた上で、具体的な実施施策内容の設定に移る。そして、各地域の特性に見合った地域毎の公共交通への対応方針の検討を行なうほか、自家用車の利用が主体となっている村内の現状を念頭において、その中で今後の公共交通に求められる役割とそれぞれの機能分担についての検討を進め、最終的に計画の中に示すこととする。
 具体的な実施施策は、住民ニーズの再把握などによって現実的には優先順位付け、要望と実際のニーズの差、需要と供給の量的・質的内容の差を考慮して設定されることとなる。また、それぞれの施策の対応にあたっては、村内と広域、短期的と中長期的の区別を行なって、それぞれの推進体制を構築していくこととなる。
 なお、予測される動向やこれまでに行なった調査から得られた結果などを参考にして、具体的な実施施策の精査は、実際の事業開始まで続き、事業開始後もその運用にあたっては適宜見直しがその中で行なわれ、推進施策の大枠(上記の3点)自体を見直されることもあり得る。そのほか、これら3点の施策に基づいた具体的な実施施策内容については、検討の中で複数、あるいは数段階に示される場合もあることから、それら各種、各段階によって、事業の実現を図る時期が異なっていくこととなる。
 そして、今後の滝沢村公共交通総合計画の推進の段階においては、具体的な実施施策の内容が前面に出されることになるが、最終的な計画策定のアウトプットの際は、具体的内容の上部に推進の背景としてこれらの施策内容が明示されることとなる。
 
(6)滝沢村公共交通総合計画策定事業中間報告の取りまとめ
 これまでの調査の内容や課題解決施策などを今後の展望と併せて中間報告として、取りまとめを行なった。
 なお、次年度はこの報告を土台に公共交通利用促進の啓蒙・周知活動を展開し、翌年度に予定されている利用促進施策の実施に向けて住民の理解と参加を呼びかけていくこととしたい。
 
(7)滝沢村公共交通推進委員会の開催
 今年度の委員会については、2回開催され、昨年度の委員会設立以降の通算では、3回開催されたこととなる。
 なお、委員会とは別に、事業を進める中では、学識経験者である委員を通じて検討を行なうことによって、事業実現の検討方法や課題の選択、施策の立案などにあたっての助言、指導などをいただいた。
 
・第2回委員会(平成15年6月26日)
平成14年度事業内容報告
平成15年度事業計画の審議
 
・第3回委員会(平成16年1月29日)
平成14年度実施調査報告
 今年度調査「(仮称)巣子駅の利用促進に関するアンケート調査」の実施検討
現況交通課題及び公共交通利用促進施策の検討
 
2. 4 来年度及び今後の事業計画(案)
 これまでの事業経過と村勢状況などを踏まえ、今後の事業内容の推移、来年度の事業計画(案)については、次の内容として考えている。
 
○平成16年度事業計画
利用促進施策の推進と公共交通ネットワーク案の策定
 公共交通利用促進施策やこれまでの調査などに基づく公共交通ネットワーク案について、中長期的計画と短期的計画、村内対応と広域対応に大別の上で作成し、その後は、短期目標(村内・広域の双方)の実現化を中心に取り組むこととする。
 また、公共交通利用促進施策の検討の中では、村が行なう公共交通対策事業のあり方についての検討も行ない、その方向性を示していくものとする。
 
・公共交通利用促進施策
1)公共交通利用促進施策の実施目標、対応方法の選択
⇒施策内容に応じて、中長期・短期の実施目標、村内・広域の対応手法に大別
2)短期的利用促進施策の実施計画案作成
3)実施計画案に基づいた数値の再把握
4)住民及び事業者など関係各方面との調整
5)実施計画案の修正と整理
 
・公共交通ネットワーク案
1)村内交通における公共交通の役割を地域的に整理
2)各地域間の将来的な公共交通網を考察
3)考察に基づき数値、動向の再把握
4)住民などとの意見交換
5)修正、整理の後に公共交通ネットワーク案を策定
 
○平成17年度事業計画 短期的施策の実現と公共交通総合計画の策定
 短期的利用促進施策について、実証実験を経て本格的実現を図り、これまでの成果を取りまとめて最終的に公共交通総合計画を策定する。
 
・短期的利用促進施策の実現
1)実施計画の決定
2)住民及び事業者に対する説明と意見交換の実施
3)住民及び事業者からの要望・意見などのすり合わせ
4)実証実験実施内容の決定
5)実証実験開始((仮称)巣子駅開業時)
6)利用実態調査と利用者アンケート
7)問題点の洗い出しと実施効果の検証
8)事業の見直し(改善)の後、本格実施
 
・滝沢村公共交通総合計画の策定
1)中長期的施策の整理
2)以後に実施を予定する短期的施策の実現化検討
3)実現化の後、本格実施に移行した短期的施策の成果の取りまとめ
4)上記1)〜3)を盛り込み計画策定
⇒本格運用へ
 
○平成18年度以降  内容の適宜見直しと中長期的施策の実現
 本格的な運用を行なう短期的利用促進施策の推移を見守るとともに適宜改善に努める。併せて、短期的施策で未実施の事業の実現化に向けた取り組みを進めるほか、中長期的施策の実現に向けた周辺環境の整備などの推進を図り、最終的な目標としては全計画の達成を掲げて取り組むものである。
 また、計画は一定の間隔をもって適宜見直しを図っていくべきものであると捉え、計画策定と同時に見直し時期の基準も示し、その基準に即して見直し、改訂などを行なっていく。
 
・各種調査の継続実施(利用状況調査、トリップアンケートなど)
・短期的施策など実現化が図られた事業について運用の適宜見直し
・短期的施策のうち未実施施策について実現化検討
・中長期的施策として掲げた計画内容の実現化に向けた取り組みの推進
・計画全般の適宜改訂







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