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2. 滝沢村
村のバス事業見直しや新駅開設に伴う公共交通網の再編
2. 1 概要
(1)目的
 滝沢村では、近年の人口の増加と都市化の進行の一方で、着実に少子高齢化の波が押し寄せている。また、長引く不況などを背景に、本村をはじめとする各自治体は非常に逼迫した財政状況にあり、より効率的かつ効果的な行財政運営が不可避となっている。
 そのような中にあって、現在の村の公共交通における課題としては、概ね次の3点が考えられており、これらに対する取り組みが求められるようになってきている。
・駅を核とした公共交通網整備の必要性
・路線バス制度の変革による再編の必要性
・村によるバス事業の効率化の必要性
 そのためには、村内における公共交通についての検証を行ない、より住民が利用しやすい公共交通体系へと再編成することによって、一層の公共交通の維持・確保と利用増進を図ることが必要である。また、併せて慢性化している幹線道路の交通渋滞やその声が高まっている環境問題への配慮についても対応の検討を進めていく必要がある。
 そこで、村における公共交通の効率化を図り、村内公共交通の維持・確保と更なる利便増進を図ると共に、公共交通空白地帯における不便の解消や交通弱者への配慮などについても検討した、総合的な公共交通計画を策定する。
 目標年次は、本村巣子地区のIGRいわて銀河鉄道線に(仮称)巣子駅を開設する予定の平成17年度とし、当該年度を目途に計画実施へ着手するよう努めることとする。
(2)事業内容
 当該事業については、計画の推進・協議の場となる滝沢村公共交通推進委員会を設立し、この推進体制の下において、地域交通づくりの推進を行なう交通エコロジー・モビリティ財団の支援を得た中で事業の展開を図っていく。
 具体的には、村勢や村内とその周辺における公共交通の現況把握などを行ない、そこから調査・研究などを通じて、事業目的に掲げた公共交通対策の必要性について検証し、併せてその他の村の公共交通の課題やその対応施策の洗い出しなどを進める。
 そして、住民の意向を反映した村の公共交通体系をイメージ化した上で、より具体的に、住民と協働してきめ細かい住民ニーズに基づいた施策の実現を図っていくことで公共交通対策事業の推進並びに公共交通総合計画の策定を進めていく。
 
2. 2 これまでの事業内容
 平成14年度には、企画の立案や内部調整、交通エコロジー・モビリティ財団による「住民主体の環境配慮型地域交通づくりの推進」事業への支援申請と支援の決定、主体組織となる滝沢村公共交通推進委員会の設立などを行なった。
 そして、滝沢村公共交通推進委員会のもと、「滝沢村公共交通総合計画策定事業」の実施を決定し、下記の事業内容(概要)について実施した。
(1)村内交通課題の把握
1)村内のバス路線網
 村内のバス路線について把握を行ない、併せて、村の事業として行なっている福祉バス、患者輸送バスの2つの事業についての実態の把握を行なった。
2)村内の道路交通状況
 村内の道路交通状況について、平成11年の道路交通センサスや村で行なった交通調査から、自動車交通現況図とネットワーク配分図、各OD表を利用して現況の把握を行なった。その結果、国道4号及び国道46号並びに国道間を結ぶ道路に交通が集中していることが分かり、今後の対策が必要であると考えられる。
(2)現況交通の状況把握
1)滝沢村のバス交通等に関するアンケート
 本調査は、滝沢村における公共交通利用の実態と実際または潜在的なニーズなどを把握するために実施した。平成15年2月に、村内各地区から合計1,500人を無作為で抽出して配布し、1,189人(79.3%)から回答を得た。
 結果は今後の事業の中に反映を図るほか、個別ニーズや路線バスに対する意識などについては、今後、事業者と情報を共有して活用を図ることとしている。
2)公共公益施設利用者アンケート
 本調査は、滝沢村における交通の現況把握の一環として、村内の公的施設を対象に施設利用の行動とその日の一連の交通行動の実態について調査を行なった。平成15年2月に、滝沢村役場並びに滝沢中央病院の施設利用者合計78人を現地においてランダムに抽出し、その日1日の交通行動(移動目的、場所、利用交通手段など)に関するインタビュー調査を実施した。そのほか、個人属性及び利用頻度などについても同時に調査を行なった。
 結果は、公共施設の利用における公共交通機関へのニーズとして、活用を図る。
 
2. 3 平成15年度事業実施内容
 今年度は、昨年度から継続して現況把握などに努めた。村における公共交通の現況の把握や将来の公共交通の利用動向に結びつくことが予想される諸計画類の整理などを進め、併せて公共交通に係る現在の公共交通課題を抽出した上で、将来村が目指すべき公共交通の利用促進と公共輸送確保などを図るための課題解決策目標の設定とその位置付けなどについて考察を行なった。
 そして、一旦これら今までの実施内容などをまとめ、次年度以降のより詳細な計画の策定と事業の実施など今後の展開方針について示した。
(1)現状把握
 現状における村内における交通課題を把握するため、以下の調査等を実施し、これらの情報を基に後の作業による現況交通課題の抽出、把握に資するものとした。
 なお、その調査結果の一部を後に示した。
1)村の現状把握
 村勢に係るこれまでの統計調査の結果などから人口、就業状況、広域的な移動動向などといった村内の現状を把握した。
 そこから、各地区の都市構造及び通勤・通学者を中心とした人口流動の状況などから、村内の流動が最も多くなっている一方、隣接する盛岡市に対する流れも非常に多く、村内から盛岡市への流出量が盛岡市から村内への流入量の2倍程度あることが分かり、ベッドタウンとして本村に居住する住民が多いことが確認された。
2)道路整備、都市計画、土地利用計画などによる現状と将来計画の把握
 道路整備プログラムなどから道路網と道路構造、都市計画道路、交通規制状況、村内交通の把握、道路交通状況などを整理し、現状把握を行なった。また、都市計画マスタープランによる現状と将来的なの都市計画、土地利用、公共公益施設及び大規模店舗の立地状況などの把握を行ない、これらの他にも、村における土地利用計画など、庁内で保有する既存データなどの活用を図って、公共交通の利用に関わると思われるものを抽出し、検討に資した。
 その結果、地元購買率が低いとされる本村であるが、盛岡市の本村との境界付近には多数の大型小売店舗などが分布していることで、それらの商圏に本村の多くの住宅地域が含まれていることが分かった。さらに、周辺部には相次いで郊外型ショッピングセンターなどの立地が計画されており、それぞれの立地計画の進捗によっては、買物客や就業者により人口流動などにも大きく影響を与えていくと予想されることが確認できた。
 また、渋滞の発生状況、各道路における自動車流動の確認などにより、自動車流動の集中箇所や時間が明らかとなり、路線バスの遅れが発生するボトルネックポイントの把握、並行する鉄道との所要時間比較などが可能となった。
3)公共交通機関の利用状況把握
 バス路線や駅における利用者数などの把握を行なった。なお、これらについては各事業者の協力を仰ぎ、それぞれの事業者で保有する最近の調査データの提供を受けることにより、実現を図った。
 そこから、鉄道交通については、村内各駅とも利用者が増加傾向にあり、その影響が宅地化の進行や大学の立地等から見られるということが確認された。また、バス交通については、路線バスが住宅地の拡大とともに都市部を中心に運行エリアを広げ、便数の増強なども行なわれている一方で、農村・山間部では路線網の縮小傾向や利用状況の減退などが確認されたほか、村が行なうバス事業においては、高齢者を中心として、現行のバス事業が比較的多くの利用者が見られる一方で、これらの事業が無料で行なわれており、村の現在の財政状況から事業そのものの見直しが急務とされていることが分かった。
(2)バス交通等に関するアンケート調査分析
 昨年度末に実施した、「滝沢村のバス交通等に関するアンケート」調査について、集計結果に基づき、地域別や年代別、公共交通利用状況に応じた細部分析を行なうことにより、地域や年代などによる村の利用状況や意識、ニーズなどの把握を行なった。
 その結果から、路線バスへ対するニーズや現行利用者の利用目的や移動区間といった利用動態が確認されたほか、村が行なうバス事業へ対する住民の期待や意見、今後の公共交通の推進にあたっての住民の意向の洗い出しが図られた。
 これらを基にして、今後のバス交通のあり方を検討し、併せて利用促進に向けた需要の把握並びに改善点を抽出した上で、事業者と連携を密としてそれらの浸透を図っていく。
 今回の調査結果については、「滝沢村のバス交通等に関するアンケート調査結果報告書」(全166頁)として冊子にまとめたものを作成し、委員会のほか、庁内、国・県および周辺市町村、交通関係事業者などに配布を行なった。また、要点をまとめたダイジェストの発行について検討を行なっており、当該計画の詳細内容の周知を行なう際に併せて、パンフレットあるいは村HPへの掲載などの手段で公表することを考えている。
 なお、報告書掲載内容などその一部については、後に示した。
(3)交通課題の整理
 (1)及び(2)の検証により、非常に複雑かつ輻輳している村の公共交通事情において、現状を整理し、(2)の調査による住民ニーズの把握内容も重ね合わせた。そして、村における公共交通課題の抽出を進め、次の当初において本事業の目的として掲げていた、村における公共交通の課題に対するそれぞれ取り組みについて、改めてその対応の必要性を確認することができた。
・道路混雑の緩和や鉄道利用者の増加を契機とした利用の促進
⇒駅を核とした公共交通網整備
・農村・山間部バス路線の利用減と利便性低下の悪循環、路線バス網の効率化
⇒路線バス制度の変革による再編
・路線バスと村によるバス事業の一部重複や全村的課題の公共交通手段確保
⇒村によるバス事業の効率化
 なお、今後はこれらの課題に対する対応方策を検討することとなるが、それらは、今後の公共交通の利用促進を図る中で課題解決を図るものし、公共交通利用促進施策の中に反映を図っていく。
(4)追加調査「(仮称)巣子駅の利用促進に関するアンケート調査」
 これまでの村の交通現況、昨年度実施の調査などにより導き出された公共交通の課題やニーズなどを念頭に、更に必要に応じて潜在需要や利用者の意向などを把握する追加調査を実施することとした。
1)調査目的・意図
 今回の調査は、平成17年12月頃を目途として村東部のIGRいわて銀河鉄道線に開設が予定されている「(仮称)巣子駅」における鉄道利用とその2次交通整備を中心に地域住民の意向を把握するものとして実施することとした。これは、昨年度に実施したアンケート調査が「バス交通」を中心としたものであったこと、また、現時点で唯一、実施とその時期がほぼ決まっており、村における施策の重要性の視点からもその位置付けが公共交通対策の中で最も高い部類にあると考えられ得ることなどから判断したものである。
2)調査内容
 追加調査の設定範囲や手法の選択にあたっては、調査費用と今後の事業に係る費用対効果など現実的側面から想定される事業規模などを考慮して行なった。
 調査範囲は、低価格料金が可能となる範囲の2次交通網設定想定区域と、これまでの調査に基づく新駅利用者の分布状況などから、新駅周辺2km圏を目安とした自治会の区域(隣接の滝沢駅前を除く)とし、新駅の周辺地域(巣子、南巣子、長根の3自治会区域、平成16年1月末現在、人口10,076人)に住む、16歳以上の住民(同日現在、8,161人)から無作為に抽出した、600人(対象住民の約5%にあたる500人以上の回答を目標)を対象として設定した。
 調査手法については、多数の手法を検討したが、新駅の整備方針の説明と今回の調査に対する意図の浸透とニーズのより正確な把握の期待などから戸別訪問による聞き取り調査を基本とした調査手法を採用した。
 なお、この調査に当たっては、学生などを活用することにより実施を図った。
3)調査結果
 調査結果の一部について、後に示した。
 回答内容では、各調査地点によって新駅へ対する意識や捉え方が違っているということが、住民が抱いている利用目的や利用回数などによってある程度明確となったのではないかと思われる。また、回答から新駅の利用を想定する住民・居住区の分布が示され、それに基づいて新駅の概略的な利用推計を立てることができるようになった。
 一方、道路交通事情の悪化が著しい冬季間に調査を実施したものの冬季とその他の時期に分けた利用回数などについては、ここには大きな違いを得られなかった。このほか、参考資料として比較となるデータを掲載したことなどから、マイカー利用と鉄道及びバスなどの公共交通手段利用を初めて自己で比較することができたとの回答者からのコメントもあり、今後の新駅の利用を促進する上で、そのPRの一助となった点も見ることができた。
 ここで得られた内容については、鉄道事業者並びにバス事業者などに情報提供を行ない、実際の接続する公共交通の設定規模、事業者間の連携拡大、輸送内容の改善などに有効に役立てて行くこととしたい。また、新駅周辺のまちづくりなどに関しては、庁内の関係部局で調査結果の情報共有を図り、調査において得られた住民ニーズの反映などに努めていきたい。
 新駅整備については、滝沢村公共交通推進委員会における今回の調査の審議に際して委員の中より意見、助言などがあったように、マイカー利用者の意向など、より広域的な視点に基づいた新駅の利用に関する意向の把握についても、今後、その必要性や把握すべき事項、現状の駅利用の実態などを考慮した上で、検討を進めていくこととしたい。







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