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3.4.2 4K冷凍機
 前節で述べた小型冷凍機は、液体ヘリウム温度である4Kでの冷凍能力はない。これを実現するためには、比熱が大きい新しい蓄冷材の開発が必須であるが、4Kでの冷凍能力の確保を狙った蓄冷式+ジュールトムソン系や、段数を3段式にしたり、蓄冷材を改良したりして到達温度を下げることが試みられてきた。表3.4.1に代表的な4K冷凍機の性能を示す。
 
表3.4.1 4K冷凍機の性能[3][4]
メーカ ダイキン ダイキン 住友重機
型式 CG316S V308SC SRDK415D
冷凍サイクル GM-JT GM-JT GM
冷凍能力 50/60Hz 7.5/8.5W-4.5K 3/3.5W-4.5K 1.5W-42K
電気入力 50/60Hz 8/9kW 4.5/5.4kW 6.5/7.5kW
寸法 圧縮機 W750×D800×H900 W700×D520×H1095 -
冷凍機 φ300×H728 φ245×H630 W180×D300×H556
重量 圧縮機 250kg 220kg 120kg
冷凍機 60kg 35kg 18.5kg
備考 受注生産 標準品 標準品
 
 この他、磁気浮上列車用に開発されたクロードサイクル方式による車載用冷凍機にて8W-4.2Kの冷凍能力が実現されている。
 上記小型冷凍機は、様々な工夫がなされてきており、高い信頼性を有しながら比較的低コストで極低温冷凍機を実現してきている。しかしながら、極低温での冷凍能力については、最近はあまり劇的な進展が見られない。特に、蓄冷材方式冷凍機は、蓄冷材の比熱が10K以下で激減するため、冷凍能力を大幅に増やすことが難しい。そこで、磁性体を作業物質として使い、断熱減磁、断熱増磁と2つの等温過程を組み合わせることで、気体を作業物質に用いた場合と同様な冷凍作用を行うアイデアが出された。この原理を応用したものが磁気冷凍機で、10K以下にエントロピー変化が大きい磁性体を用いることで、蓄冷方式で冷凍能力を増やすことが難しい温度領域で冷凍作用を得ることが出来る。従来、いくつかの方式が提案されて実証もされてきているが、大きな冷凍能力を得るものは増磁、減磁を機械的に行っているため構造上複雑であり、さらに極低温部に可動部が必要であるため研究用として製作されたのみである。商用機として利用できるものは出来ていない。
 最近話題の冷凍機に、パルス管冷凍機がある。この冷凍機は低温部に可動部がないため非常に信頼性が高いのが特徴である。Cryomech社は、商用機で0.7W-4.2K(1W-4.8K、30W-55K、7kW、冷凍機/圧縮機 14kg/114kg)を実現している[5]。しかしながら、原理的に効率が悪く、4.2Kで1W未満の冷凍能力しか実現できていないのが実情である。この方式冷凍機は、4K冷凍を目指すというよりも、携帯電話の基地局の素子冷却など70〜80Kレベルの冷却に開発の重点が置かれている。
 舶用超電導電動機用の冷凍機として利用できる可能性があるのは、付帯設備が不要な冷凍機で最大冷凍能力を有する4.2Kで〜10Wクラスの冷凍機であり、サイクル方式としてはGM-JT冷凍機か、GM冷凍機である。〜10W以上の冷凍機が必要な電動機はこれらの冷凍機を複数台用いるなどして対応する必要がある。
 表3.4.1から〜10W冷凍機の電気入力は10kWと考えられる。したがって、AMSC・5MW電動機を例に取ると、電動機の出力に占める冷凍機出力の割合は、10kW/5MWなので0.2%である。図3.4.2に示すように大型モータの効率が95〜96%程度であるから、仮に超電導電動機の効率が同じ程度である仮定してもほとんど無視できる値である。超電導電動機では、ロータの界磁銅損はなくなるので通常のモータよりも効率が劣ることはないと思われる。
 
図3.4.2 モータ出力と効率[6]
 

参考文献
 [6]ターボ機械協会第25回講習会資料, ターボ機械におけるモータ技術, 平成12年, p.19







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