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 ロータの直径は、超電導発電機のような高速機に比べれば大きいものの、トルクチューブは超電導コイル取付け枠の内径側に配置するので、実際はφ700mmのような大きなトルクチューブは設けられないと思われる。また大トルクを伝達する必要があるので、超電導発電機に比べればかなり肉厚のトルクチューブが必要と思われる。図3.2.1から明らかなように、トルクチューブ材質がSUSでは侵入熱がDt=φ300の肉厚ttが最も薄い25mmでも5Wを超える。舶用超電導電動機に使える冷凍機の冷凍能力の目安を10Wとすると、後述するパワーリードの侵入熱も含めるとこの値はかなり厳しい値である。したがって、トルクチューブにSUSを使う場合は外径をφ300以下にし肉厚も25mm以下に出来るような設計でなければ熱的に成立しない。一方、FRPの場合は、Dt=φ700、tt=100mmの場合でも侵入熱は2.5Wで小さい。Dt=φ300にいたっては高々0.7W程度で、十分に熱的に成立する値である。FRPの課題は、十分な剛性を確保できるかどうかである。ただ、有機系複合材料は進歩が著しく、金属と比べても遜色のないものが開発され可能性が大きい。
 なお、参考のために図3.2.4にSUSおよびFRPのトルクチューブ温度分布Twを示す。低温側においてFRPの温度勾配がSUSより小さいのがわかる。FRPの熱伝導率がSUSに比べて小さいことを考えれば当然の帰結である。
 図3.2.5にヘリウム、水素、窒素冷媒による侵入熱量の違いを見たものである。オーダは異なるがSUSとFRPとも冷媒の違いによる傾向はほぼ同じである。低温側の温度は、それぞれの冷媒の沸点である。He→H2→N2と見ていくと、侵入熱量は増加している。これは沸点が増加するにしたがって、その温度に相当するトルクチューブの熱伝導率も大きくなるためである。液体H2の沸点は、約20Kであり、この温度レベルは、後述する小型冷凍機の20K段で冷却できるが、FRPの場合でも侵入熱が10W程度となり、現状で入手できる小型冷凍機の冷凍能力を大きく超えてしまう(後節記載の図3.3.2参照)。したがって、冷却の観点からは冷媒をヘリウムから水素に変更するメリットはあまりない。ネオンも同様である。
 
図3.2.4 SUSおよびFRPの場合のトルクチューブ温度分布
 
図3.2.5 冷媒の種類による侵入熱量の違い
 
 図3.2.6に1kA級パワーリードの侵入熱の試算結果を示す。試算したのは、直管タイプの材質が銅のもので、内径φ9mm、外径はそれぞれのパワーリード長さに対して最適化した値である。
 侵入熱は、パワーリードを長くすれば低減でき、長さが2mの場合、約2W/kAである。パワーリードは2本必要なので、仮に励磁電流を1kAとした場合、2W/kA×lkA×2本=4Wとなる。冷凍機の冷凍能力が10Wとすると、パワーリード分4Wを差し引くと残り6Wが前述のトルクチューブ他に許容できる侵入熱量となる。なお、パワーリードの侵入熱量を減らすために、ヘリウムの熱交換を改善したり、低温部に高温超電導線材を使うことでさらに低減は可能と思われる。
 
図3.2.6 パワーリード長さと電流当たりの侵入熱の関係







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