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5.3 水産養殖
 商業的水産養殖は就労機会およびEUの周辺国の地方開発の展望を提供する。しかし、商業的インフラストラクチャーから遠く離れていることおよび環境持続可能性に逆らって、また同様に過剰供給の市場問題および限られた数の種への依存という問題を背景に、商業的水産養殖が行なわれなければならないのである。この分野の主たる特徴は:
●近年水産養殖製品が連続的に増加しており、また市場への漁業生産の重要な供給者になっている。
●水産養殖における生産の多様化は、共同体市場に対する魚の供給に寄与することができる。スズキ、タイ、うなぎ、ひらめ、カレイおよび北極海チャーのような魚類を生産するよう開発されなければならない。ホタテ、ハマグリ、あわびのような貝類、ロブスターおよびえび等、また、実験的な開発の下にあるさらに新しいなじみの少ない種につても同様である。
●水産養殖は、共同体の周辺沿岸地域の社会の発展に対して重要な貢献者でもある。しかし共同体に亘り、漁業生産の持続可能な供給を向上するため統合化された戦略の一部として開発されねばならない。
●水産養殖が今や世界的産業であることから、養殖技術は(ハードウェアーおよび管理技術の両方において)第三国への価値ある輸出物であり得る、ということが銘記されなければならない。
 
5.3.1 技術、マネージメントおよび政治的課題
“環境に優しい”管理および生産システムの開発
 これは、水産養殖が、EUおよび外部の市場にとり、環境を損なうことなく商業的に操業することを可能とする技術的発展と手を取り合い、環境保護と両立できるよう管理戦略と倫理規定を開発すること。:
●多目的地域利益の効果と管理に関する研究を含み、合理的な沿岸領域管理戦略に導く水産養殖と環境の相互作用を計画し研究するための、IT/GISシステムの開発。
●国際的標準および環境に優しい生産技術を与える目的でシステム性能を評価するために、水質および技術要件の開発。
●水産養殖設備内およびそれからの病気の拡散を防止するための技術の開発
●他の資源使用者からの廃棄物のリサイクルを許容する統合化養殖システムの開発。これらの廃棄物に対する排水水質基準およびこれらに基準に応じる手法の決定を伴う。
●ナガスクジラおよび貝類養殖に対する欧州倫理規定を作成すること。これには、生産物が動物の安寧、餌、および環境影響に関して持続的に生産されることを確かにするためEU立法を考慮すること。
●漁業養殖者に対して、コードが定義された場合、環境行動基準に関する訓練コースの開発
●養殖生産システムに関する機構および環境変化の効果を予報するためGISモデルの開発
●環境持続可能性に対応する病気および寄生生物処理の開発
●病気モニターシステムの開発
●安全かつ持続可能な方法において導入された種の水産養殖を許容するための戦略の開発。公的検疫試験室を巻き込んだ制御された導入および同意された行動基準による。
●養殖された魚の逃亡を減少するあるいは防ぐための構造および手続きの開発
●魚養殖者を環境問題に付き教育するため、メンバー国機関と共に共向体に亘るセミナーおよび訓練コースの開催。
●回遊魚(うなぎおよび鮭科の魚のような)の再補充についての法的権利および所有の意味すること、の調査。
 
環境影響声明
 欧州海洋場所(SACおよびSPAの)における水産養殖活動に対する環境影響評価(EIA)に対する考えられる要求は、ケースバイケースで行なわれるなら、産業にとり費用がかかるものであろう。それゆえ、研究が次のように行われなければならない:
●水産養殖の特定の様式に対する一般的モデルの準備。これはEIAコストを大幅に簡単化することが可能であり、EIAに対するいかなる要件からのある形の免除に対する基礎を成すことが出来る。
●水産養殖環境影響の評価に対する技術の開発
●異なる水産養殖生産システムのための潜在的サイトの評価のための技術の開発
 
新技術
 過去においては、沖合および海中に魚を閉じ込めることは、伝統的な近陸地システムより費用がかかると同時に、困難であった。この方法は、既にノルウェーおよびチリでの生産を促進するために使用されている。しかしながら、ほとんど保護の無いあるいは利用可能な場所の無い国において、応用の可能性が認識されている。それゆえに、研究が次の点に焦点を当てるべきと考えられる:
●法的および社会−経済的パラメータに関連して、現行の技術に関して水産養殖可能な場所を明らかにすること(陸上および沖合)。
●陸上養殖に対する再循環システムの応用
●水産養殖の種について陸基盤の養殖の開発
 
対話
 多くの分野において、開発に対する最大の障害の一つは、水産養殖が環境にとって敵対的である“公害産業”であるという認識である。魚養殖の環境への影響に関する事実に基づく証拠を広く知らしめる必要がある。
 
5.3.2 種に関連する解釈
栄養
 水産養殖用餌の改良は主に民間分野生産者の仕事であるが、一般的な研究が魚の健康および持続的利用可能性の分野において必要である:
●魚餌におけるプロティンの置き換え(あるいは補充)、魚肉の代わりの大豆基盤材料のような。
●病気抵抗力および最終生産物の品質のような、魚餌の環境効果
●評価中の新しい種の栄養要件
 
魚の健康
 研究が次の件につき必要である:
●国際的疫学的研究
●存在している病気および潜在的なものに対する、魚の免疫学およびワクチンの開発(注入および経口)。この研究は魚の治療の費用を減少する、また抗生物質からの環境影響をも減少する。
●免疫促進剤の開発およびその評価
●魚群におけるストレスと病気を減少する管理戦略の開発
●病気の迅速発見および環境的問題
●新しいまた浮上する病気
●消費者を保護するため、魚の肉に残留する抗生物質と化学物質を迅速に見出す技術の開発
 
一般的研究
 一般的に改質された有機体(Generally Modified Organisms(GMO))は、市場の抵抗により、本調査グループにより薦められていない。多くの専門分野に亘る研究が、次のことを包含して、行なわれなければならない:
●従来種の保護
●水産養殖に対して適切な資源数の明確化
●自然界への自己的および有為的(再収蔵による)な開放による水産養殖の相互影響
●繁殖プログラム、分子マーカーの研究および養殖に対する単性人口の開発
水産養殖における新種
 市場基盤を広げるため、水産養殖は、以前使われなかった種を計画的かつ市場主導的方法で開発する必要がある。可能であれば、そのような種は地域的に発生した純血種からもたらされるべきである。しかし、欧州以外からの管理された種の導入は、既に過去において、フランス、アイルランド、および英国の公的研究所において環境への被害なしに、実行されてきた。それゆえ、研究は次に対して必要である:
●公的検疫研究所による、導入する候補となる種の選択に対しての一般的原則を確立する。
●市場用の種同様に、潜在的新種の生物学、成長と生存を研究する。
●水産養殖に対する新候補種の適切性およびバイオ技術的要件に関する研究。社会的−経済的、および環境相互影響を含む。
●生産の経済
●先導的商業開発および実験的調査の段階に既にある種の調査
●欧州共同体内での先導的商業的施行を実行する気持ちのある会社を支援すること
●水産養殖による新種の将来生産のための経済モデルを開発するための商業的研究および市場分析
●新種を商業的に立ち上げることを可能とする生産技術の開発
 
5.3.3 周辺沿岸地域における水産養殖の開発
 水産養殖は、共同体の周辺に地域おいて在来の熟練を利用しつつ、収入を増加しまた仕事を作り出す潜在力を持っている。資源は次に対して必要とされる:
●共同体の周辺沿岸地域における水産養殖開発に対する挑戦と機会の調査を行うこと。
●遠隔地域に水産養殖の訓練センターを設立すること、および第三国との協働のため、標準化されたコース材料および水産養殖におけるR&D活動のための情報交換システムを確立する。
 
5.4 海草
 世界的に、海草生産は年毎に、1990年の4,110,000トンから1995年の7,150,000トンまで増加している。共同体の多くの地域において、海草を収穫することは伝統的に収入および雇用の源になっている。しかしながら、東南アジアのものと比べて欧州の海草は、沿岸域の水質のお蔭で、世界でも最も高い品質でありながら、欧州の立場は年々減少している。これはチリ、韓国、フィリピン、および日本のような国々の競争力の改善によるものであり、そして欧州海草が比較的に高価格であることによる。
 この成長しつつある市場における欧州の競争力を増すため、異なる重要な活動が、資源そのもの、および資源の最終製品への加工に関して、実行されなければならない。
 
5.4.1 海草資源
 この資源は、持続可能な収穫技術と水産養殖手法を使用して、今や、その最大限まで開発されなければならない:
●伝統的およびリモートセンシング手法を使って、共同体内の藻類資源の総合的地図を作成すること。
●持続可能な収穫技術を研究すること
●適切な藻類種の育成に対する水産養殖方法の応用を研究すること
●藻類を、食品、肥料、健康関連製品、化粧品、薬品その他のような、商業的製品に加工するための食品技術手法を応用すること
 
藻類資源の地図
 藻類の収穫は伝統的地域に限られているが、欧州の海岸に沿って数百万トンの海草が存在する。拡大した持続可能な収穫を可能とするため、新しい地域および利用可能な資源が明らかにされる必要がある。
 
持続可能な収穫技術
●収穫者に持続可能な収穫に対する長期的取り組みを教えるために、訓練プログラムが必要である。
●持続可能な収穫を確かなものにするため、種の管理手法が必要とされる。
●開発コストを減少し、他の種(たとえば、ホタテ、かに、その他)を開発するにおいて最大の柔軟性を持つようにし、また船上の安全性を向上するようにするため、最大限に持続する効率が必要であるので、新しい収穫用船舶の開発が必要である。
●収穫者が非伝統的な収穫地域へ近づく手段が必要である。
●えびやかにのような他の種の漁業に害を与えずに、選択的に海草を収穫する、新しい装置が開発される必要がある。
 
水産養殖の研究と応用
●世界の海草収穫の80%が水産養殖から来るが、欧州の海草生産は自然海底の採取によっている。
●水産養殖は一般的に産業に均一的そして改善された原材料、高品質アルギン酸塩および他の化合物を多く含む海草のような、供給するための適切な方法であると考えられている。
●水産養殖は、収穫コスト削減および生産効率向上において、欧州産業の競争力を強くすることが可能である。
●“海の野菜”の開発。
●海の野菜−人間が直接消費するための海草の使用は、極東において大きな市場機会として考えられている。
●将来の研究は、貯蔵量の評価、持続可能な収穫およびこれらの種の水産養殖、に向けられなければならない。
 
5.4.2 技術的および法制的課題
食品技術手法の応用
●欧州における海草産業の将来は、疑いも無く高付加価値製品であるであろう。何故なら、低価値製品については発展途上国と競争しなければならないからである。
●そのような製品を研究することを含む、欧州企業の支援の欧州政策が採択されなければならない。
 
海草収穫に関する規則
●生産と交易に対する障害を避けるために、海草の収穫、輸出および輸入に関する規則が欧州全体で標準化される必要がある。
●コロイド産業の副産物の処理に関係する規則の調和と同様な、我々の異なる国内法の調和、および、より特別には野菜としての海草のための欧州規則の施行は優先的であるべきである。







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