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最近の造船産業構造の変化に対応した造船技術の共同研究と開発の仕組み及びそのあり方

 事業名 造船技術研究開発課題の調査
 団体名 日本造船研究協会 注目度注目度5


付録 6-1
SR研究の最近の成果(平成11年〜13年度、新しい順)
SR246「船殻ブロックのデジタル生産技術の基礎研究」(平成12〜14年度)
1. 研究内容
 造船は、高精度に部材を加工しブロックを組立てることが、高精度生産技術のキーとなると考えられるが、曲がり部ブロック製作工数が平行部ブロック製作に比べて単位重量当たり約3倍掛かると云われている。このため、曲がりブロック製作を高精度に行うことがネック工程の解消につながり、造船の生産性を大幅に向上させるものと考えられる。ブロックを高精度、迅速に、バラツキなく組み立てるためには、ベテランの作業員が実施していた一連の工程を数値化(デジタル化)して記録、解析する必要がある。
 本研究では、精度確保が困難な曲がり部ブロックの製作の中での曲がり加工から中組立までに至る、各ステージにおける高精度で高効率に加工・組立を行うためのデジタル生産技術の活用方法について研究した。特に、デジタル化にあたっては、現場ノウハウであるナレッジ(作業知識)を抽出し、得られたノウハウをデジタル化する試みであるナレッジ・エンジニアリング手法について取り組み、我が国の強みである造船の熟練技能の技術伝承の方法についても検討した。
2. 成果
 造船所はこれらの成果を生かし、以下のとおり、精度の高いブロック建造に採用されている。
(1)溶接変形の展開
 SR237、SR246で開発した機能も利用して、ブロックの溶接時の変形推定として、計算処理を行っている。その計算結果は、設計・現場での検討会などで利用されている。
(2)計測技術の展開
 実際の建造ブロックの計測に、SR237,246で検討した計測装置を利用しており、計測結果の処理にも一部、開発したソフトを利用している。
(3)板曲げ・ロンジ曲げ技術の展開
 現在、社内展開を図るべく、試験研究計画書を作成中である。
 
R245「二重殻タンカーの船体構造寿命に関する研究」(平成11〜14年度)
1. 研究内容
 近年、「船舶の安全性」への要求気運が高まっているが、船体構造の疲労(亀裂)損傷撲滅は重要課題のひとつである。1990年代に建造が開始された、載貨重量20〜30万トン級の二重殻超大型タンカー(ダブルハルVLCC)の就航・経年実績が確認されるのはこれからとなるが、衝突・座礁事故などの極限時の安全性向上のみならず、経年構造部材の疲労損傷から漏油を引き起こす様な事故の防止も重要である。
 そこで本研究では、ダブルハルVLCCを具体的な対象として、「疲労寿命」管理に関連する各種技術の高度化をはかり、「ライフサイクルに亘る構造安全性の合理的な向上に寄与する」事を目的として、全体コンセプトの確立及びその実現に必要な設計時予測からモニタリング/保守点検/運航支援までに係わる各種技術の具体的開発を試みた。
2. 成果
 現在IACSで船体構造疲労の標準を作成するWG(ワーキンググループ)が立ち上げられ、この研究の考え方もその標準作成の一つに取り上げられた。SR245の考えは前述のTSCF-WGでも紹介され、メジャー、船級、船主に紹介された。今後の標準作成の一つの資料として採用されることになっている。
 
SR244「実海域対応の船舶性能設計システムの研究」(平成11〜14年度)
1. 研究内容
 船舶の製品としての安全性、性能品質は、本来ライフサイクルにおいて評価が求められるべきものである。性能設計の面からこの問題を捕らえると、従来の平水中の性能を評価の基本としていた船型開発、設計法では必ずしも船社等ユーザーの要求に応えられるとは言えない。
 即ち、実海域での運航状態を想定した実海域性能の推定と評価に基づく船型計画法に変革し、総合的、長期的評価に基づく新たな設計システムを構築し、その実用化を図って行く事が要求される。
 本研究では、上記の背景の基に最新の基礎理論を導入し、高精度で実用性の高い実海域における性能設計評価システムを開発し、これによってライフサイクルコストの最小化、ライフサイクルバリューの最大化を図った船型開発が可能となり、船舶製品の技術的差別化、海上輸送における市場競争力の更なる強化に役立てるものである。
2. 成果
(1)運航性能最適維持管理システム
 対象船の高精度な波浪中応答特性モデル、運航限界モデルの構築が可能となり、運航性能モニタリング技術、インターネットデータセンタ技術、海象予測技術との組み合わせにより、運航性能のより厳密な分析、運航管理の適切な対応が可能となった。
 既に船陸間通信と陸上管理システム構築により実用化が進められている。
(2)高度ウエザールーチンシステム
 従来のウエザールーチンでは船体応答モデル等の船体側のモデルが不完全であり、その活用には制限があった。この課題を克服し、さらに海象予測の精度、内容(アンサンブル予測等)、最適化手法の高度化に伴い、高度でより信頼性の高いウエザールーチンが可能となった。現在各社で実用化研究が進められている。
(3)試運転解析の高度化
 試運転解析において波浪影響の修正が求められるが、その信頼性、精度を高めたことで、より実用的方法として確立されてきている。
 特に船社の意見は、「従来の造船所でのタンクテスト(平水中)の解析から実海域に出てきたということで、海運界は歓迎している。船社では以前から各船種のシーマージン解析を行っており、実際の航海に適合できる船舶を求めるという点では同じ方向である。海外の造船所を含め、実際の実力のある船を建造する機運が高まっており、この研究成果も一部に採用された」と述べている。
 
SR243「スーパーシャロードラフト船の船型開発の研究」(平成11〜13年度)
1. 研究内容
 世界の海上物流で飛躍的な伸びが期待されている東アジア地域では、港湾の水深が浅いため、浅喫水型で多量の貨物が運べる船舶が求められている。調査の結果、同地域では、計画喫水を11m以内に制限すると約50%の港湾に運航が可能となることが分かっている。これからの貨物輸送量の増大に備えるため、この喫水条件で現在の倍近い載貨重量を有する船型が開発できれば、海運界他のニーズに応えることが出来ると考えられる。
 本研究は、従来船型の倍近い9〜10万トンの載貨重量を有するいわゆる超幅広浅喫水な新船型の開発を目指し、1軸、2軸船型が抱える諸課題を解決する研究に取り組み、いずれの船型が運航性能上優れているのかの検討も踏まえ、これらの研究過程から得られる設計指針を確立して新船型創出の基盤固めを行うことを目的としたものである。
 研究の結果、実船化する上での種々の課題解決が図られたが、得られた成果はこれにとどまらず、これに類似の従来にない大B/dと肥大度を併せ持つ船型の開発に有効に活用できることが期待されている。
2. 成果
 最近、日本の造船所の各社が、特に中でも中手が競ってパナマックスBC及びハンディマックスBC船型で、従来のDWを大きく上回る船型を市場に出してきている。これらは、SR243の研究で「極端な船尾肥大船においても、船型を上手に設計すれば、問題のない性能が得られることを確認した」ことが契機となっているもので、本研究は日本の造船技術の競争力を大きく向上させるのに役立っている。
 
SR242「原油タンカーの新形コロージョン挙動の研究」(平成11〜13年度)
1. 研究内容
 近年建造されたVLCCは従来のVLCCのCOT(原油タンク)内を比べ、その腐食速度の増大、腐食形態の変化があるとの論議が国内外のオイルタンカーのオーナーやオペレーターの間でなされていたが、COTについての系統的な板厚計測データは乏しく、また、過去に取得されたデータの整理・分析も不十分である。特に孔食についてはきわめて記録が少なく、錆の形態について調査したデータが殆どなく、腐食のメカニズムも種々の原因の可能性が挙げられてきてはいるが未だ特定には至っていないのが現状であった。
 このような状況を鑑み、COTの系統的な腐食データベースを構築することおよび腐食の原因とメカニズムの解明、それらに基づいた適切な防食対策の検討を目的に実船調査を実施した。この結果、暴露試験片の調査等から、これまでにない数多くの貴重な知見を得ることができた。これらのデータを基にした国際会議での発表は非常に高い評価を受けている。
2. 成果
(1)耐食性に優れた新鋼板の開発
 上甲板(全面腐食)とタンクトップ(孔食)に最適な鋼板の開発がJFE、新日鐵、住金等でなされた。
 その具体的なVLCCへの適用例としては、商船三井−NKK(現ユニバーサル)−NKK、日本郵船−MHI-新日鐵等で実船に適用され、又、近々建造される船舶にも適用されることとなっている。
(2)新防食方法の開発
 商船三井はショッププライマー(亜鉛を主成分とする塗料で、造船所では、建造中に生じる鋼材表面の錆止めとして使用)の有効活用により、COT底板の孔食発生が大幅に低減できることを実船で確認・実証した。防食手法について、脱硫/船体構造の観点より造研/船主/造船所により特許化を図り、国際的な競争力確保に努めた。
(3)規則への反映
 現在IACSでタンカーのカーゴタンクの二重底トップ、天井裏に塗装の強制化の議論が進んでいる。これに対して、わが国は、この研究成果を踏まえた新しい材料(ピッティング腐食及び材料)を提案して、この強制化への一つのALTENATIVEということで反論している。実際に新しい材料をVLCCのタンクトップに採用してその効果を検証(塗装を止め)しようとしているところである。
 本件はIACSとのジョイント会議やTSCF等の各種国際会議でプレゼンテーションしており、SR242の成果も世界に発表して注目を集めている。
 
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 商船三井(鈴木邦雄社長)は、JFEスチール、中国塗料と共同で調査した結果、錆止め用塗料「ショッププライマー」がダブルハルVLCCの原料タンク底板に発生する腐食に対して有効に作用していることを新たに発見した、と発表した。
 ダブルハルVLCCの登場は、油流出のリスクを大幅に軽減させる一方で、原油タンク底板がフラットな構造になったために油皮膜が形成されにくくなり、却って腐食を発生させ易いという新たな問題を発生させ、世界的な問題となっている。腐食は、放置すれば孔食(タンク底部の鋼板にお碗状にできる窪み)発生の原因となる。その防止策として商船三井では建造中における錆止め用塗料「ショッププライマー」が竣工後も有効と判断してきたが、今回の調査で、皮膜が増厚することを発見、その有効性を確認した。
 同社の発表によれば、次のような結果が確認されている。ショッププライマー(厚さ約15ミクロン)を施工したダブルハルVLCC(竣工後2年半)の原油タンク底板(厚さ約20ミリ)を調査した結果、孔食(深さ4〜7ミリ程度)の数は約50ヵ所であった。
 一方、無塗装のダブルハルVLCCでは、竣工後2年半で、1,000ヵ所以上、5年で2,000ヵ所以上の孔食が発見された。調査した原油タンク底板を切り出し、JFEスチールで分析した結果、約15ミクロンで施工したショッププライマーは原油タンク底部では、亜鉛と鉄の複合酸化物となり、緻密で硬く厚い皮膜を造成していることが分かった。その厚さはオリジナルの約15ミクロンから約50ミクロンに増厚していた。
 このように、ショッププライマーを施工していたVLCCでは、孔食の発生も少なく、孔食の深さも比較的浅い。逆にエポキシ塗装は、皮膜として完全であるように見えるが、ひとたび塗膜に傷ができると、その部分から集中的に腐食が進行するため、深い孔食が発生した事例も存在する。従ってショッププライマーは、エポキシ塗装よりむしろ安全であると考えられる。<2003/8/28付>
 
NAC5
 当社はこのたび、原油タンカーのデッキプレートに使用される鋼板として従来の鋼板に比べ、耐食性を向上させ耐用寿命の延長を可能とする鋼板(商品名:『NAC5』を開発し、販売を開始した。
 原油タンカーのカーゴタンクでは、デッキプレート裏側の腐食が船舶の耐用寿命を制約する大きな要因のひとつです。これに対し当社では、耐食鋼に関する豊富なノウハウの蓄積を基に、原油タンカーのデッキプレート用鋼板の腐食に対する合金元素の効果、およびショッププライマーの機能を強化するための体系的な研究を行ってきた。
 この結果、少量の特殊合金の添加およびTMCP技術を組み合わせた最適な成分バランス設計を行うことにより、ショッププライマーの防食期間を約2倍に延長すると共に、鋼板の腐食を低減させる効果が得られました。また鋼板の製造にはTMCP技術を適用することで、軟鋼グレード(降伏強度235N/mm2級)はもとより、高張力鋼グレード(降伏強度315、355N/mm2級)においても現状と同等の炭素当量による製造を可能とした。
 これらの効果を適用することにより、現状と全く同じ溶接性を有しコストアップをミニマイズし、耐食性を大幅に改善したデッキプレート用鋼板『NAC5』を開発し、商品化した。
 『NAC5』を原油タンカーのデッキプレートに適用することにより、デッキプレートの耐用寿命を延長(弊社推定:約5年)することが可能となるほか、船舶の修繕ドック時に必要とされるメンテナンス費用も半減することが可能となる。さらにデッキプレートの腐食を低減することにより、カーゴタンク内への鉄錆の落下を減少し荷揚げポンプの保護の効果も得られる。<2001/11/14>
 
耐食鋼板の使用
 NYKは、既存シングルハルVLCCのリプレースとして、DWT300,000MT型ダブルハルVLCC2隻の建造を決定した。
 これらは、今治造船(株)【竣工:2005年第一四半期中】及び三菱重工業(株)【竣工:2005年第一四半期中】にて建造予定。今回の建造計画が実施されると同社の2004年度中の新造VLCC竣工は、発注中の5隻と合わせると計7隻となる。<2003/8/21>







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更新日: 2019年8月10日

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