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OCEANS 2003への参加とスクリップス海洋研究所およびモンタレー湾水族館研究所を訪問して
 
正員 近藤逸人*
 
 日本造船学会の若手活性化事業にかかる海外派遣により、アメリカ合衆国サンディエゴで開催されたOCEANS 2003への参加と、スクリップス海洋研究所およびモンタレー湾水族館研究所を訪問する機会を与えていただいた。
 今回のOCEANSは、9月22日から26日までの日程で、米国スクリップス海洋研究所の百周年記念行事を含めて開催された。このため、チュートリアル、サイエンス・テクニカルセッション、エクシビション、ポスターセッションに加えて、多数のダイバー・カメラマンがそれぞれの作品を紹介しながら上映されたUnderwater Film Festival、マリアナ海溝のチャレンジャー海淵最深部へ到達した人類二人のうちの一人Don Walsh氏の講演、スクリップス海洋研究所の歴史セッション、シーワールドを貸し切りで行われたショー、そして最後にスクリップス海洋研究所の百周年祝賀祭など非常に盛りだくさんで、国際会議の枠を超えて一種のお祭りに似た雰囲気を感じるものであった。魅せるということに関してはさすが米国だと思わずにはいられなかった。
 サイエンス・テクニカルセッションの発表件数は500件を優に越え大盛況ではあったが、16ものパラレルセッションが行われるために、残念ながら実際に参加して発表を聞くことができるのはごく一部に限られてしまう。セッションの行われる部屋間の移動も徒歩数分という場合もあり、聞きたい発表には走っていかなければ間に合わないこともある。これは大規模な会議の宿命とでもいう点であろうか。
 筆者のOCEANSへの派遣目的は、自律型水中ロボット(AUV)の開発動向等を調査するということにあるのでこれについて述べると、今回発表されたサイエンス・テクニカルセッションのうち、水中ロボットに関するセッションを挙げると表1のようになる。セッションの区分けがあいまいな部分があるので、遠隔操縦型の水中ロボット(ROV)も含めてある。ひとつのセッションが3から5の発表で構成されるため、全体としての発表件数の多さがお分かりいただけると思う。このほかに水中音響ソナーや水中画像、あるいは生物の生態観測に関するセッションでも水中ロボット関連の発表が行われている。
 
表1 OCEANSで発表された水中ロボットに関するセッション名
Academic AUVs
Academic AUVs II
AUV Navigation
AUV Control
Military AUVs
Military AUVs II
Military AUVs III
Military AUVs IV
Underwater Gliders
Unmanned Underwater Vehicles
UUV Control
UUV Control II
Undersea Vehicles
ROV Control
 
 発表されている内容から、筆者の主観的な感想を述べさせていただくと、水中ロボットの研究開発に関しては、世界的にごく一部のところでやっていて目新しく、開発することそのものが注目されていた時代は既に過ぎ、AUVをどのように使うかといった実用アプリケーションヘの関心が高まっていると思われる。このことは軍事用AUVというセッションの数の多さからも言えると思うが、世界的には既に単純な機能のAUVは買ってきて使うことができる時代に入っている。発表件数は増えてはいるが、その分特に新しくアカデミックな内容が増えているというよりは、研究の裾野が広がってきているという印象を受ける。
 AUVに関する研究開発の分野では、ケーブルが無いことのメリットを生かして長距離、広範囲を航行する、いわばクルージングタイプのAUVに関するものがこれまで主流であったが、従来ROVで行われてきたような観測や軽作業を行う、いわばインスペクションタイプと呼べるようなAUVの研究開発も認知されるようになってきた。水深数メートルという浅海域を想定した、キャタピラを持って海底を動き回るクローラタイプのAUVや、魚の機能を模倣した推進機能を持つAUV等、AUVの適材適所とも言えるような多様な発表が行われるようになっている。
 通常の国際会議でのバンケットにあたる行事が、今回のOCEANSではサンディエゴのシーワールドを貸し切って行われた。ディナーの後には園内数箇所を開放して自由散策時間が設けられ、最後は迫力あるシャチのジャンプのステージで大いに盛り上がり、打ち上げ花火で締めくくるという演出が行われた。
 最終日には、スクリップス海洋研究所において百周年の祝典が開催された。会場にはデコレーションが施され、お祭り一色という感じであった。アメリカ合衆国大統領や英国王室をはじめとする各界からの祝電も披露されていた。紙の袋に布や造花、鳥の羽などのデコレーションを接着剤で貼り付け、思い思いの帽子を作ってかぶるという、一種の仮装のようなお楽しみごとも行われ、筆者も夢中になってオリジナル帽子作りを楽しませてもらった。
 こちらの行事も、フィナーレはかなり立派な打ち上げ花火であった。筆者は研究仲間と共に、スクリップス海洋研究所を対岸のようにして望むことができるラホヤの海岸まで行き、夕食をとりながら打ち上げ花火のフィナーレを鑑賞させてもらった。
 
写真1 
大勢が参加したOCEANSのLuncheon
 
写真2 
シーワールドで行われたExtravaganza
 
写真3 
スクリップス海洋研究所百周年記念行事の様子
 
写真4 
米国大統領と英国王室などからの祝電
 

* 東京海洋大学海洋工学部







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