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Technical Committee IV.2 Design Methods
 本委員会の構成は委員長Mr. Pradillion(仏)以下Dr. Beach(米)、Dr.Bohlmann(独)、Prof. Boote(伊)、Mr. Hage(ベルギー)、Mr. Janssen(オランダ)、Prof. Lee(韓)、Mr. Li(中国)、Mr. Ventara(ポルトガル)、Mr. Wu(台湾)、Prof. Zanic(クロアチア)、賀田氏(川崎造船)の12名である。
 報告書の項目は以下の通りである。
1. Introduction
2. Overall Design and Production Process Overview
3. Navy and Specialized Marine Structures Design
4. Maintenance and Repair Process
5. Application Software Review
6. Decision Support Methods Review
7. New Impact of Information Technology on the Ship Design Procedure
8. Conclusions
 Dr.Pegg(カナダ)の司会の下、Mr. Pradillion(仏)が設計、建造、メンテナンスの一連のstageに渡って“コンピューター化およびITの活用の拡大”をキーワードに現状の分析と将来の課題について報告を行った。
 欧州、アジアの大小17の造船所に対して行ったアンケート結果に基づきコンピューターおよびITを用いた設計作業の実情を紹介し、中小の造船所を含めても設計者が少なくとも1人当たり一台のコンピューターを利用していることが紹介された。
 また、Virtual Reality, Simulationを用いた設計技術も進化しているとして、衝突およびスロッシングに対する強度、CFDを用いた耐航性、非常時の客船の乗客避難等の解析結果の例が紹介された。
 なお、長年の課題である設計の上流段階から建造さらにはメンテナンスにまで共通して使用できる3-D Product Modelに関して、各ステージ毎に個別のモデルを利用している例が未だ多く、今後さらなる開発が望まれるとの指摘があった。
 公式討論者であるDr. Vivalda(仏)より、レポートの内容を補完する形でEUで共同で行われている各種の設計手法に関する研究プロジェクトの紹介がなされ、今後さらに重要な役割を果たすものとしてVirtual Enterprises, Decision Support Tools, Simulation Toolsに注目して行くべきとの指摘がなされた。
 一般討論として、Dr. Kaeding(独)よりNavy ShipとMerchant Shipの設計プロセスの比較を示して欲しい、川村助教授(横国大)よりSTEP, XML等によるData Exchangeの現状に対する質問および今後のさらなるITの進歩に伴いData ExchangeにおけるConfidentialityに対する危惧があること、Prof. Rigo(ベルギー)より報告書の記述とは異なり、最適化設計が仕様に関する情報の少ない設計の初期段階でも可能であることおよびコストの評価に関しても有効であるとの提言、Mr.Ferraris(伊)よりLR, DNV以外にRINAもNavy Shipに対するRuleの開発を行っていること、Mr.Tam(米)よりModel Testが設計において重要であり、今後の課題として追加すべきであると、Prof. Taylor(英)より船の一生における環境への影響等に社会的な関心が一層高まる傾向にあり、船のLife Cycle AnalysisをDesign Processの中に如何に取り入れるかが重要な課題であるとの指摘があった。
 なお、次期委員会委員長には新たにMr. Hage(ベルギー)が選出された。
(賀田和夫)
 本専門家委員会はISSC 97にて新たに設置され、ISSC 2000(長崎)においてさらに3年延長することが合意された。当初委員長とて選出されたProf. K. Tikka(米)は仕事の都合で委員長を続けることが困難となり、代わってDr. W. Moore(ノルウェーから米国へ移動)、が委員長を務めた。海上技術安全研究所・吉田、Prof. Y. Chen(中)、Mr. A. Dinovitzer(加)、Prof. 0. Litonov(露)、Dr. M. Prevosto(仏)、Dr. A. Tonelli(伊)、Prof. Y.S. Yang(韓)が委員として参加した。
 中間会合として4回の委員会会議を開催し(ロンドン3回、パリ1回)、ほとんどの委員が出席するという非常に協力的な雰囲気で作業が進められた。吉田は2回の中間会議(ロンドンIMO本部)を主催した。
 当委員会は、「船舶の定性的および定量的なリスク・アセスメントのための合理的な手法の開発状況を報告する。それには事故の起こる活確率、その結果、事故回避措置の評価を含む。特に火災および爆発、極端な環境条件、人的要因、運航と妨害物および運航上のハザードについて注意を払う。」という命題の下に、以下の項目からなる報告書を提出した。
1. Introduction
2. Review of risk assessment activities in maritime industry
3. Element of risk assessment
4. Conclusion
5. Recommendation
 ISSC 2000のV.1委員会(委員長:吉田)への報告で、船舶海洋におけるリスク・アセスメントに関する技術的内容はほとんど網羅的に報告してあるため、ここでは、その後のリスク・アセスメントに関する技術の展開と利用の現状を報告した。従って、ISSC 2000の報告と合わせてひとつの完成した報告となる。
 ISSC 2003への日本からの貢献の主な内容は以下の通り。
・バルクキャリアの安全性に関するFormal Safety Assessment(FSA)
・内航における衝突、座礁に関するFSA
・内航小型船舶における携帯電話の遭難通信への活用に関するFSA
・機関室火災に関するFSA
・核燃料運搬船に関する安全評価
(いずれも海上技術安全研究所および日本造船研究協会)
 Dr. P. Frieze(英)の司会の下、委員長Dr. W. Mooreが報告を行った。
 公式討論者の有馬(目本海事協会)は、当報告書が概ね良好であると評価しつつ、さらに以下を指摘した。
・USCGが行っているRisk-Based Decision Making(RBDM)Guidelinesについても、実際の適用例を含め注目すべきこと。
・共同して実施されたリスク・アセスメント成果を積極的に公表すること。
・Risk-based inspection(RBI)(例えばAPI A.581)およびRisk-based design, operation and regulation of ships(SAFEDOR)ついても注目すること。
・リスク・アセスメントの定量解析における不確実性に注意し、その取り扱い方法を開発すること。
・複数のリスク低減措置の評価方法について研究すること。
 一般討論では吉田が、今後の作業として以下が必要であることを指摘した。
・IMOにおける規則作成に活用すべく、ISSCの成果をIMOへ公表すること。
・海洋環境保護に関するFSA検討(費用対効果、リスク許容限度)のインデックスを開発すること。
 その他、以下の項目について、今後さらに研究を推進する必要があることが議論された。
・リスク・アセスメントにおける人的要因の取り扱い
・実際の船舶設計へのリスク・アセスメントの応用の仕方
・受け入れ可能なリスクレベルの検討
 今回でリスク・アセスメントに関する専門家委員会は終了した。リスク・アセスメントは、海洋構造物に対しては、「Safety case」としてすでに実用されているが、船舶については規則作成において利用され始めたところである。今後は、今後の船舶設計への展開、船舶検査への適用等の応用の拡大とともに、合理的かつ信頼性のあるリスク・アセスメント手法の研究を推進する必要がある。
(吉田公一)
 本委員会は平成13年に長崎で開催された14th-ISSC 2000で開設された。委員長は英国ニューカッスルアポンタイン大学のG.J. Bruce(英)、委員はProf. M.L Duan(中)、Dr. R. Folso(イタリア)、Dr. Y. Garbatov(ポルトガル)、J.-C Le Hire(フランス)、Dr. B.C. Shin(韓)、0.T.Vadel(ノルウェー)、Dr. G.V. Yegorov(ウクライナ)、藤本(日)の8名である。報告書の項目は以下の通りである。
1. Introduction
2. Operational Background
3. Purpose and Scope of Monitoring and Inspection
4. Development of Rational Procedures and Methodologies
5. Inspection - General Aspects
6. Monitoring - General Aspects
7. Developments in Technology and Applications
8. Evaluation and Utilization of Data and Results
9. Future Needs and Expectations
10. Conclusions and Recommendations
 委員長のG.J. Bruce(英)が上記項目に沿って報告書の概要説明を行い、その後、討論者のDr. P. O’Connorが公式討論を行った。各委員が持ち寄ったものを委員長がまとめた文書は当初60ページを超える分量であったが、ページ制限によって30ページになった。このため、報告書の中身は各種船舶の検査とモニタリングの現状と問題点、検査信頼性の研究の現状、IMO・IACS・船級などの動向、最近の検査モニタリング技術、最近の情報・データベース技術、検査モニタリングの最適化技術が要約されるにとどまっている。
 船体構造の検査モニタリングにおいては信頼性の国際的均一化が重要であるが、腐食、疲労のように経年劣化状態の把握が容易でないという問題、劣化状態と強度の相関が把握しにくいという問題、経済的問題、使用限界の評価の問題などが複雑に関与しているので、利用しうるソフトとハードをいかに合理的に活用するかが重要であるというのが委員のおおかたの意見である。報告書のまとめとして以下の事項が重要であると指摘されている。
・船体の構造情報、経年劣化情報、検査保守情報を含むデータベースの作成をいっそう進めること。
・適切コストで使用できる構造モニタリングセンサーや新規的非破壊検査技術に関する研究の必要性。
・船体構造の使用環境と腐食劣化の進行、強度との関連性についての研究の必要性。
・データベースと確率手法を活用して、データを有効にマネジーメントすることにより信頼性評価を確実なものにすること。
・効果的な腐食防止技術の開発。
(藤本由紀夫)
 衝突・座礁のテーマは、Exxon Valdez号の事故に伴うタンカーのDouble Hull化、IMOによる国際条約化などもあり、94年、97年と専門家委員会が設けられた。その後、2000年のISSCではRisk Assessmentの専門家委員会のテーマの一部となったが今回委員会として復活した。
 本委員会の構成は委員長のProf. J.K. Paik(韓)以下、Prof. J. Amdahl(ノルウェー)、Prof. N. Barltrop(英)、Dr. E.R. Donner(仏)、Prof. Y. Gu(中)、伊藤氏(JFE), Prof. P.T. Pedersen(デンマーク)、Prof. U.Roehr(独)、Dr. G. Wang(米)の9名である。
 報告書の項目は以下の通りである。
1. Introduction
2. Collision and Grounding Incident Database
3. A Framework for Accidental Limit State Design
4. Benchmark Studies on Nonlinear FE Analysis of Internal Mechanics
5. Alternatives to Double Hull Design
6. Proposals for Further Research and Development
7. Conclusion
 大坪教授(東大)の司会のもと、Prof. Paikが解析結果のアニメーションを交えながら発表を行った。10年近く前に日本で行われた、造船業基盤整備事業協会(ASIS)の一連の研究を、レポートでも発表でも大量に引用していたのが印象的であった。
 公式討論者のProf. A. Brownは規則制定のためには確率的なアプローチが不可欠で、IMOで用いられている確率分布関数は不完全であることを強調した。特に、構造様式と破壊規模の関係が明確になっておらず、その関係が確率分布に全く入っていないという問題を指摘した。US Coast GuradのDr. Sirkarは、代替構造に対するダブルハルの優位性(小さい事故の際、油の流出がゼロであること)を強調した。
 全体として、過去の研究のサーベイに終始しており、ISSCとしての新たな構造様式に対する提案はほとんどなかった。ぜひ次期の委員会では構造様式に関するなにがしかの提案を行いたいと考える。
 衝突・座礁の専門家委員会はISSC 2006にも引き継がれ、小生も委員として参加することとなった。委員長は前回から引き続きのDr. Wang(ABS)となった。大御所のPederson先生は陰から支える役割を引き受けた。
(鈴木克幸)
 本委員会は委員長Mr. S. Ferraris(伊)以下Mr. N. Fonseca(ポルトガル)、Dr. B. Hayman(ノルウェー)、Prof. O. Hughes(米)、Mr. E. Thiberge(仏)、Dr. Y. Toyama(三井)、Mr. A. Vredeveldt(オランダ)、Prof. P. Yang(中)、の計8名の委員から構成されている。
 報告の項目は以下の通りである。
1. Introduction
2. The Updated HSC Code and Classification Societies Rules
3. Loads
4. Structural Response and Ultimate Strength
5. Advanced Composite Materials
6. Uncertainties in Design
7. Developments in Fabrication Technologies
8. Conclusions and Recommendations
 Prof. T. Moanの司会で委員長Mr. Ferarisによる概要報告とMr. T. Robert(豪INCAT社、欠席)による公式討論(司会代読)が行われた。今回の報告ではHSCコードにおける変更改良項目への言及、各船級協会規則の比較が特徴である。Mr. Robertによる討論は建造社としての意見が色濃く、実用的な観点からの意見が述べられていて興味深い。趣旨は以下の通り。HSCコードに記述されている船底レーキングは特に小型船については実現が困難である。もっとオペレーションの観点からの規則が必要である。さらには設計においては荷重を載荷する位置によっては規則に現定されているモーメントでは小さい場合があることも指摘している。疲労強度について、5分に1回のスラミングならば問題はないが、30秒に1回のスラミングが発生すると短期間に疲労による割れが発生する。複合材料については耐火性が最も問題である。耐火試験方法についての調査も必要であると述べている。工作技術についてはHSLA(High Strength Low Alloy)に注目している。これに対して委員会の回答は概ねMr. Robertに賛成している。荷重などに関して報告でカバーされていない課題については他の委員会、例えばLoadなどを参照するようにとのこと。疲労についても同様。Parallel Discussionでは艦艇に対する規則適用についてのコメントがあった。複合材に関してはSPRINGINGには減衰が大きいので有利ではないか、また、疲労破壊メカニズムが解明できていないのではとの質問があった。他に材料としてコンクリート、SPS(Sandwich Panel Structure)も含めるべきではないか、疲労では実績に基づき検査間隔が短くなることはなかったか、荷重に関して統計的手法を適用すべきでは、などの指摘、質問があった。特に注目すべき討論は疲労に関するもので、高速船において疲労が問題となるのは多くはウォータージェット周辺であるとの委員長回答があった。次回のISSCでは高速船設計に関する委員会は残念ながらない。
(今北明彦)
 本委員会は、石油・天然ガス開発のための浮遊式生産システムについて、設計に関する検討を行うことが目的の委員会であり、今期は特に、浮体と海底を結ぶ構造物の連成挙動や、信頼性手法に関して、不確定性の同定と定量化について検討することが求められていた。
 委員会の構成は委員長のDr. D.T. Brownの他、Prof. H. Boonstra(オランダ)、Dr. T.Y. Chung(韓国)、Prof. R. Li(中国)、Prof. S. Mavrakos(ギリシャ)、Dr. H. Nedergaard(デンマーク)、Dr. T.A. Netto(ブラジル)、Dr. Young Bai(米国)、Dr. A. Loeken(ノルウェー)、鈴木英之教授(東大)の10名の委員から構成され、浮遊式生産システムに関して活動のある主要国が網羅された委員構成となっている。報告書の構成は次のようになっている。
1. Introduction
2. Global System Life Cycle
3. Primary Areas of Uncertainty
4. Hull Structure
5. Vessel-Seabed Connection
6. Conclusion and Recommendation
References
 Prof. B. Boonの司会の下、委員長のDr. D.T. Brownより報告書の概要が紹介された。その後、午後に時間を移して公式討論者のIr. W. de Boomより討論が行われた。公式討論では前期ISSC FPS委員会にて出された展望や勧告に対して、今日までの研究がどのように行われたか、検証が必要であることが指摘された。また、浮体―係留―ライザー系の全体挙動についてもっと触れるべきであったとのコメントがあった。一方、このような問題はISSCのみではなく、ITTCなども含む他の組織とも共同して取り組むべき課題であるとの指摘もされた。浮体構造については、各種の荷重の同時性の取扱については、単純な重ね合わせは過度に安全側評価になるので、LRFD法などが有効であるが、従来の手法に比べた十分な比較検討が行われるべきとの意見が示された。また、座屈評価式については各方面で多種多様な式が使われているので、評価した上で統一することが必要との意見が示された。これらの点に関しては、本委員会としても同意見であるとの回答が委員長より表明された。さらに、経年劣化と状態の監視法については十分に触れられていないことなど、報告書に関して多岐にわたる詳細な分析が紹介され、委員長は回答に多大な労力を割いていた。一方、会場からの一般の討論に移ると、教科書的な前置きが長く、なかなか本題に入らないものや、自分の研究の紹介に終始するものなどがあり、委員長が再三にわたり本題に入るよう促す場面も見られ、会場から苦笑が出るなど、公式討論の充実と対照をなす場面もあった。
(鈴木英之)
 本委員会は委員長のMr. Wilchens(独)以下、Prof. Olson(米)、Dr. Borzecki(ポーランド)、Mr. Hainemann(独)、Mr. Lallart(仏)、Prof. Wu(中)、Prof. Park(韓国)、Prof. Shenoi(英)および武田(IHI)の9名の委員から構成されている。本委員会は1994年に発足し今回が3回目の報告になるが、その活動テーマは、(1)船と海洋構造物における工作行程全般の現状調査、(2)電算による情報処理技術が生産システムに与える影響の調査、(3)設計手法が生産効率や品質に及ぼす影響の調査、の3点である。
 このような観点から報告書にまとめられた項目は以下の通りである。
1. Introduction
2. Materials
3. Technologies
4. Fabrication Methods
5. Modeling and its Aspects
6. Fabrication Imperfections
7. Conclusions
 会議では委員長のMr. Wilchensから報告内容全般についての説明があったが、とくに生産設備のロボット化を想定した設計法が進展していること、また生産効率を向上するためには設計・材料科学・生産技術などが緊密に協力すべきことなどが、強調して述べられた。その後公式討論者のProf. Lamb(米)により、残留応力や溶接変形が生産効率や製造品質に大きく影響するので、これを予測するツールを持つことが重要との観点からの討論があった。また会場からは、レーザーによりセンシングする溶接法の紹介、外業工程や塗装工程の効率化の重要性などについての討論があったが、発表者がPC立ち上げに予想外に手間取ったことなどもあり、質疑が中途半端に終わった感があったのは残念であった。
 本委員会は次期も継続することになり、委員長はDr. Borzeckiに交代し、日本委員は今北氏(三井造船)ならびに武田(IHI)が務めることとなった。
(武田裕)
 STC VI.1は、疲労荷重設定に関する標準的手順を検討するために設けられた一期限りの特別委員会である。委員の構成は、委員長渡辺 巖(日本)、E. Rizzuto(イタリア)、深沢塔一(日本)、Xukang Gu(中国)、K. Branner(デンマーク)、G. Kanpsenberg(オランダ)、A. Cariou(フランス)の計7名からなる。この内、今会合にはCariouを除く、6名が出席した。なお当初は委員10名であったが、貢献度の少ない3名は途中で降りてもらった。
 本委員会関係の討論は、日程最終日、8月4日の午前8時半から10時に行われた。セッションの議長は、デンマークのJ.J. Jensen、公式討論者は日本海事協会の重見利幸氏であった。
 まず委員長の渡辺から報告書の全体の紹介が行われた。報告の概要は以下の通りである。最初に委員会に与えられたmandateに基づき、荷重推定を船体運動から始めた直接的な方法について検討すると同時に、簡易な手法についても検討したことが述べられた。
 疲労荷重設定の現状を代表するものとして、幾つかの船級規則に従った疲労評価の試計算の紹介があった。それによれば、得られる結果には、かなりバラツキのあるものであることが明らかで、このばらつきの元を明らかにして、標準的な手法を確立する必要が述べられた。
 次に直接法を構成する各手順要素の検討に移り、波浪荷重計算法の現状、荷重を応力に変換する際の問題点、さらには短期予測、長期予測を応力変動に適用する際の問題点が数値例をもとに述べられた。この中で現在もストリップ方に代わり得る実用的な方法がないこと、荷重を応力レベルに変換する際には構造モデルの選択が重要であることなどが示された。
 このあと、簡易的な方法として、設計波法について検討した結果が述べられた。最後にベンチマーク計算により、直接法、設計波法で求められる疲労荷重について数値的な検討を行った。
 次に討論に移り、最初に公式討論者の海事協会の重見氏が立ち、船級協会での検討状況、検討された設計波法の問題点、などについての討論がなされたた。これに引き続きwritten discussion, oral discussionが幾つかなされ、最後にそれらすべてに対する委員会としての回答が行われ、会議を終了した。本委員会はこの総会で任務を終了し、廃止となった。これに代わって「信頼性解析に基づく構造設計」に関するSpecial Task Committee VI.1が設けられることになった。
(渡辺 巖)
 本委員会は、委員長のProf. Berge(Norway), Dr. Kihi(USA), Dr. Lotsberg(Norway), Ms. Maherault(France), Dr. Mikkols(Finland), Dr. Nielsen (Norway), Dr. Paetzoid(Germany), Dr. Shin(Korea), Dr. Sun(USA), Prof. Tomita(Japan)の合計8名からなる。本委員会は、新しい性格の特別任務委員会(Special Task Committee)である。船舶の現状の疲労強度評価法の諸問題―例えば、組み合わせ応力状態での強度評価法。応力集中の評価法、工作誤差の評価法、workmanship, 環境状態の評価法など―を提示し、模型試験、実損傷例との比較から、疲労強度評価法を提案するのがその任務である。
 それに対し、委員会報告書の目次は以下の通りである。
1. INTRODUCTION
2. FATIGUE STRENGTH OF SHIP STRUCTURBS - GENERAL OVERVIEW
3. ELEMENTS OF FATIGUE STRENGTH ASSESSMENT
4. FRACTURE MECHANICS
5. CUMULATIVE DAMAGE
6. COMPARATIVE STUDY
7. CONCLUSIONS AND RECOMMENDATIONS
 第2、3章で疲労強度全般を、第4章は疲労亀裂伝播解析(破壊力学的手法)に基づく疲労強度評価法、第5章は累積被害則、第6章は大型の船体構造模型試験と疲労強度評価法による結果との比較である。
 委員会報告の特徴は第4章および第6章であろう。ISSC委員会で初めて累積被害則以外の疲労強度評価法が論じられた。第6章では実損傷例を各国船級協会規則に基づいて評価することを試みたが、実損傷例が評価に堪えるだけの情報が不足―特に航行中の船舶に作用した応力、亀裂発生、伝播などの損傷状況―していてできなかった。そのため日本のSR245で行われた大型模型を用いた変動荷重疲労試験およびノルウエーでの大型模型を用いた定荷重疲労試験の結果を各国船級協会規則で解析し比較した。大形構造模型の変動荷重疲労試験結果と解析結果の比較では、船級協会規則による解析結果(累積被害則)は0.2〜0.6程度であり、亀裂伝播解析による結果は0.9程度であった。また、ホットスポット応力も規則によりそこそこの差がある結果となった。
 Prof. Fricke司会のもと、委員長のProf. Bergeから報告書の概要が説明された。委員会報告に対して、公式討論者のProf. Petershagenから討論が全般に亘ってあった。特に第4章の亀裂伝播解析に基づく疲労強度評価に対しては、“A section is very welcome, although the method is hardly applied in present fatigue assessment procedures for ship structures”であり、委員会、会議の雰囲気も似たようなもので、この評価法が取り入れられるには遠い感じである。また6章での変動荷重疲労試験結果と船級協会規則による結果との比較も0.2〜0.6であれば“the utilization factors are quite incidental”であり、委員会の見解もよく合っているであった。累積被害則による評価では0.1から10倍程度のばらつきは当然と開き直っているのだろうか。これに引き続き。written discussion, oral discussionが幾つかなされ委員長から簡単な回答が行われ会議を終了した。
 本委員会はこの総会で任務を終えることになった。
(冨田康光)







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