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2 実験の結果
(1)油分濃度および目視観察など
 油分濃度の変化を図−II.3.3および4に表す。
 実験開始時(0 DAY)における油分濃度の理論値は、1%である。この時点では、吸着マットは原形を保っており、油はその中に含まれているので、パイル内の油分濃度は均一になりようがない。従って、測定も不可能である。
 1回目のサンプリングは最初の攪拌が行われた開始後2週間時点に行った。既に吸着マットの原形は留めておらず、これまでの実験同様、マット内に含まれるパーライトの存在により、原位置が判明する状況であった。攪拌時における油の臭気は、本来のC重油の臭気から若干変質した感じを受けるものの、いまだ明確に油の臭気であると判別可能な程度に感じられた。手指への油の付着は感じられなかったが、ところどころにC重油を核とすると思われる直径1〜2cm程度のボールの存在が観察された。
 油の臭気については2ヶ月後程度まで、明確な臭気を伴っていたものの、徐々に有機物的な臭気に変質し、それと知らぬ人間には油の臭気どうか判別がつかない状態に変化した。
 
図−II.3.3 油分濃度の変化
36m3バーク堆肥による油分解実験
バーク堆肥溶出分補正済
 
図−II.3.4 油分濃度の変化(サンプリング補正済)
36m3バーク堆肥による油分解実験
バーク堆肥溶出分補正済
 
 C重油を核としたボールと思われるものは、徐々に目立たなくなり、4ヶ月時点でほぼ観察されなくなった。
 なお、興味深いことに、この本実験用パイルに隣接する誤差評価実験用の小型パイルにカブトムシが産卵をした模様で、秋〜冬にかけて幼虫が数十匹ほど生育している様子が観察された(写真−II.3.5)。
 
写真−II.3.5 
バーク堆肥小型パイルで育つカブトムシの幼虫
 
図−II.3.5 バーク堆肥パイル内の温度変化
バーク堆肥パイル内の温度
 
 
(2)温度変化
 バーク堆肥パイル内の温度変化を図−II.3.5に示す。実験当初は、バーク堆肥の活性な状態とされる60℃前後を保っていたが、徐々に温度が低下する傾向が見られた。開始後100日経過時点からはほぼ50℃以下を推移し、140日経過時点以降は40℃を下回る状態が現れた。
 温度が低下する原因は、微生物活動の低下、外気温の低下などが考えられる。
 また、切り返し直後は温度が一旦低下し、その後上昇する傾向があるが、好気発酵が酸素供給により活発化することを示していると考えられる。
 
(3)まとめ
 油分濃度は減少傾向にあるが、このデータの解釈はさまざまに行うことが出来る。例えば、開始後40日時点と160日時点でさほど変化がない、という結果が出ており、この間の推移は漸減傾向とも、変化なしとも、或いは山形になっていると解釈できないこともない。従って、この結果のみから判断することは困難であるが、II-1で述べた昨年度までの傾向とあわせ見ると、開始後数十日程度で本来の油分濃度の1/5以下にまで低下している、と考えるのが妥当であろう。厳しい見方をしたとしても、当初の1/2〜1/3程度にまで低下していると考えても良いと思われる。この点については数人の専門家にも意見を請うたが、概ね同様の意見であった。
 一方で、数十日経過時点から先は目に見えた変化が現れていない、というのも今回ほぼ明らかになった傾向である。これについては、大きく二つの解釈が可能である。
(A)微生物活動が低下したために油分分解が進展しなくなった
 (パイル内温度の低下がそれを裏付けている)
(B) C重油のうち、バーク堆肥に生息する微生物では分解困難な成分が残留した
 
 この点については、今後、新たな実験を行い、結論を導く予定である。
 
 土壌汚染対策法が平成15年2月に施行され、数年のうちに現在規定のない油分についても、土壌汚染基準が定められると予測されている。その数字は1000ppm(0.1%)になるという説があるが、この濃度は「油分が残っていない土壌(肥料)」という社会的なコンセンサスが得られる目安になると考えられる。この基準に照らし合わせて今回の実験結果を見るに、油分濃度をもう一段階低下させたいという思いに駆られるのが正直なところである。この方法としては、例えば、攪拌頻度や開始時濃度設定の見直し、技術の複合化などが考えられる。現在の手法とあわせて、今後これらのアイデアを順次試みていく予定である。







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