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VI-3-2 独立したポンプを用いて洗浄する方法
 独立したポンプを用いて洗浄する方法とは、スキマー本体、パワーパック及び内部洗浄装置を使用せずに独立のポンプと汚油分離槽から成るシステムに直接接続し、油水移送ホース内部を洗浄する方法である。
 この方法は、スキマー及びパワーパックのような重量物を必要としないメリットがあるが、独立のポンプと汚油分離槽を新たに用意する必要がある。
 移送ホース洗浄システムイメージ図を、図VI-3.2に示す。
 
図VI-3.2 移送ホース洗浄システムイメージ図
VI-4 まとめ
 流出油の回収に使用された油回収資機材を翌日の油回収作業に使用するためには、日々の洗浄・メンテナンスが必要不可欠である。そのためには、油回収資機材を効率的に洗浄する方法及びシステムを構築する必要がある。
 本実験は、洗浄システムの実用化を目指し、スキマー等の効果的な洗浄方法に関して調査・試作・性能確認実験を行った。
 
1 スキマー内部洗浄装置の試作を行い、重油で汚れたスキマーを実際に用いて内部洗浄効果の確認試験を行った結果、5分間の運転でスキマー内部の汚れがほとんど除去されており、十分な洗浄効果があることが分かった。
 ただし、実際の油回収作業で使用されたスキマー及び油水移送ホースの内部には高粘度の油塊が残っているため、現状の試作機の構造ではそれらを十分に取り除くことができないことが考えられる。
 そのため、実用化にあたってはラインの途中にストレーナ(こし器)等の油塊を除去する装置や内部洗浄装置の手前に汚油分離槽を取り付けた構造を検討する必要がある。
2 スキマー外部洗浄スプレーガンシステムの検討を行うため、市販の高圧洗浄機を使用して洗浄効果の試験を行ったが、油の粘度が高い場合、水の噴射だけでは油分を落とすことは難しいことが明らかとなった。
 このため、あらかじめ汚油面に灯油を塗布した後に水を噴射させて洗浄を行うか、灯油そのものを噴射させて洗浄を行う必要がある。
 ただし、市販の高圧洗浄機は設計上、灯油等の使用を想定していないため、新たに耐油性のある材質により洗浄機の試作を検討する必要がある。
3 本実験で試作した油水移送ホース洗浄システムは、スキマー及び内部洗浄装置を使用したもので、ホースの継手を組み合わせることによって、スキマー用の移送ホース以外の異なる口径のホースでも洗浄が可能となる。
 また、作業現場にスキマー及びパワーパックがない状況も考えなければならないため、スキマーの代替となる簡易移送ホース洗浄システムを新たに検討する必要がある。
VII 国内外の油防除訓練
VII-1 概要
 油防除訓練は、我が国を含めて世界各国で流出事故に備えて、国情に合わせた様々な油防除訓練を定期的に実施している。
 例えば、北海油田を持つノルウェーでは原油生産井の暴噴事故を想定して、大量流出油に対処できるトランスレック(油回収装置)やスカート長さ3mのオイルフェンス等を外洋型サプライボードに常設して即応体制を敷いている。
 油防除訓練は、上述の船舶や資機材を使用して世界で唯一の油を流して油回収の大規模な訓練を毎年行っている。この訓練は、ノルウェーの専門家だけではなく広く世界各国の専門家に参加を呼びかけている。
 一方、我が国の油防除訓練は、船舶等からの流出油事故を想定しており、海上保安庁の排出油防除計画では、16海域の自然的、社会的、経済的諸事情により流出油量を定め、それに対処できる油防除資機材を用いて、海上保安庁を核として自治体や民間防除組織等との合同訓練を実施している。
 なお、上述した排出油防除計画はナホトカ号事故を契機に再編成され、日本全国を16地区に分けて流出油事故に対応する防除計画が平成9年度に確立した。
 
 上述したように我が国の油防除訓練は、海上保安庁を中心に各自治体、民間防除や石油関連企業等との合同訓練が実施されている。しかし、これらの訓練は、各種油防除資機材の使用法等について行われているが、油を海上に流した訓練は行われていない。
 我が国では、原油を用いた海上実験研究は、昭和43年に八丈島沖で流出油の挙動と原油火災及び油回収を目的として行われた。
 この実験研究から海上における原油の拡散式として元良の式が開発された。また、火災実験からは輻射熱等に関するデータ資料が得られた。
 油回収実験では当時の油回収資機材は、現有資機材と比較して性能や機能性が劣っていたこと、また、原油の海上における挙動が予想以上に拡散が速く対応出来なかったことが挙げられている。
 この海上実験から既に40年が経過し、II章で述べたように各種油防除資機材の開発や改良により、また、ソフト面における防除手法についても、海上災害防止センターにおける油防除訓練コースの修了者が2万人を超え、防除手法の基礎的な技能を有している者が全国に散在している。これらのことから本事業では、最終的に海上に油を流す複合的防除訓練と実験研究の実施を目標として、国内外の防除訓練のシナリオを収集して海上実験に備えることとした。
 また、我が国はOPRC条約に基づいて、近隣各国との合同油防除訓練及び油防除に関する技術援助を実施している。
 
1 各国との合同訓練及び国際協力等
 各国との合同訓練及び国際協力等として、以下の事項が挙げられる。
(1)日米専門家会議−日本、米国
(2)アジア地域における大規模油汚染への備え及び対応に関する国際協力計画
(OSPER計画)−ブルネイ、インドネシア、フィリピン、マレーシア、タイ、シンガポール
(3)日韓専門家会議−日本、韓国
(4)北太平洋海域の油汚染対応体制の構築会議(MAPP、NOW)−日本、中国、韓国、ロシア
(5)北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)−日本、中国、韓国、ロシア
(6)極東地域ブルーマリン計画−日本、台湾、韓国、中国
等々
 
2 技術援助
 JICA集団研修及びODAによる招聘等の研修として、昭和57年から平成14年まで延べ592名(平成14年度)の国外研修員を受け入れている。
 主な受け入れ国は、次のとおりである。
 
 韓国、中国、香港、ブルネイ、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、フィリピン、スリランカ、インド、バングラデシュ、パキスタン、ミャンマー、パプアニューギニア、フィジー、ソロモン、トンガ、キリバス、ミクロネシア、マーシャルアイランド、セイシェル等59カ国
 
 また、国外への専門家派遣は、昭和62年から平成14年度までに29件で派遣国、派遣先は次のとおりで、複数回の派遣国がある。
 
 フィリピン、ペルシャ湾、インドネシア、シンガポール、韓国、中国、ベトナム、タイ、
マレーシア、ロシア、インド、スリランカ、モルジブ、ミャンマー等
VII-2 国内の油防除訓練
1 大量流出油事故対策訓練の概要(四日市)
 平成15年9月2日、三重県四日市港の前面海域で行われた、上記訓練の概略を述べるとともに、流出油防除訓練(訓練シナリオ 想定4、5、6)について詳述する。
(1)訓練目的
 伊勢湾において大量流出油事故が発生した場合に被害の拡大を防止するため、伊勢湾流出油災害対策協議会(以下「流災協」という。)、四日市港湾災害対策協議会(以下、「港災協」という。)及び関係団体参加のもと、官民一体となった防除手法等を演練し、伊勢湾周辺海域における海上防災体制の充実強化と防災意識の高揚を図ることを目的とする。
(2)訓練海域
 訓練海域は、三重県四日市港、伊勢湾シーバース北端から0度2,200mの地点を中心とした半径1,500mの円内海域である。訓練海域図を図VII-2.1に示す。
 
図VII-2.1 訓練海域図







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