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3)漁業系廃棄物の主な技術例
(1)焼却
・流動床式焼却炉(石川島播磨重工)
概要:
省スペース型(炉床面積がストーカ炉の約2分の1)
カロリーの高いゴミでも焼却できる。
焼却炉下灰を溶融処理しなくても資源化できる。
焼却炉下灰から鉄分を分離してリサイクルできる。
・抑制燃焼式焼却炉「日立ラジケータ」(日立金属)
概要:
プラスチックから生ごみまで多様なごみ質に対応
炉内状況により、温度、燃焼空気をコントロールして、ダイオキシンの発生も最小
金属性のロストルがなく、抜群の耐火耐久性
多様なオプションにより種々のニーズに対応
・ガス化燃焼式焼却炉(日本プライブリコ)
概要:
黒煙がなく、ばいじんは極めて少ない。
1日分のごみを一括投入可能
大型ごみも前処理なしでそのまま投入可能
種々のごみの混焼も可能
・流動層焼却炉(倉敷紡績)
概要:
高水分のゴミも予備乾燥なしで直接燃焼できる。
少ない空気量で速やかに完全焼却でき、燃油量が少なくて済む。
残留物が少なく、停止操作が容易
クリンカーが生じず、NOxの発生が少ない。
・旋回流型流動床焼却設備(エバラ)
 焼却炉内は流動層部およびフリーボードにより構成され、脱水ケーキを衛生的に処分、減量するために、高温(約850℃)で瞬間的に焼却する。フリーボードでは、未燃ガスが完全燃焼し、排ガスは灰とともに炉頂より排出される。
 旋回流型流動床は、流動媒体が内部循環流を形成する事により、次の特長を有する。
汚泥の拡散効果が大きいため、炉をコンパクトにできる。
汚泥の拡散効果が大きいため、汚泥の供給設備を簡素化できる。
炉内温度を均一化できるため、流動不良が起こらず、クリンカの生成がない。
炉内温度を均一化できるため、し渣・沈砂等との混燃時も安定している。
層内燃焼効率が高いため、助燃油を節約できる。
焼却対象物:
焼却対象物:下水、し尿、その他各種汚泥の脱水ケーキ
含水率:85%以下
施設規模:5〜300ton-ケーキ/日
し渣、沈砂の混焼可能。
(2)微生物処理
・完全有機物廃棄装置(関西テック)
概要:
 微生物の働きを促進するために、かくはん運転と温度コントロール酸素供給により、自然界の微生物が持つ分解反応の力を高め、分解後に何も残らない、環境にやさしい設計の完全有機廃棄物処理装置
 24時間で消滅、全自動制御、コンパクト設計、日常のメンテナンス不要
(3)発酵
・クロサキYTコムポスト(黒崎播磨の発酵乾燥処理装置)
概要:
ごみを6時間から18時間の短時間で高速発酵乾燥処理する装置
間接均一過熱制御
省エネ・低ランニングコスト
発酵分解処理のほか、熱分解処理も可能
(YTコンポストフローチャート(10ton処理フロー例))
 材料投入装置、5ton処理YTコンポスト2基、発酵乾燥処理品の搬出・袋詰め装置などで構成。
・ばんけい発酵エースシステム
概要:
 動植物・水産・畜産・副生有機物などの資源を高温発酵技術により発酵肥料を製造するシステムである。処理原料に水分調整資材とシードカルチャーを適量加えて混合し、送気発酵槽に堆積して7〜15日間高温発酵(68〜80度)を行い、その後1〜2ヶ月間堆積発酵させ選別し、発酵肥料を製造する。
システムの特長:
 施設は地場の木材を使った建物とコンクリート槽、設備は循環送気を行うためのブロアー一式、機械はタイヤシャベルと選別機だけである。したがって、投資額、維持費、電気料、車両費等が低コスト。
 水分調整は、地場の樹皮、木くず、農業・畜産副生物等の資材を活用し、循環送気により好気性発酵を行うため、汚水や発酵臭の発生はほとんどない。再生された発酵肥料は雑草の種子や病害菌・病害虫が死滅しており、有用な微生物が存在する状態になる。熱の保存性を考慮した設計となっているため、冬期間でも高温発酵が継続して行える。
 
発酵エース(循環送気設備)の型式
型式 発酵槽容積 月間処理量 使用モーター シードカルチャー(開始時)
A50 50m3*2槽 60〜100トン 4.5kw 40 m3
A80 80m3*2槽 80〜140トン 6.2kw 60 m3
A100 100m3*2槽 120〜180トン 9.0kw 80 m3
 
(4)コンポスト
・リネッサシステム(新日鐵の発酵処理装置)
概要:
有機性廃棄物を発酵処理後、発酵残渣をコンポスト化、リサイクルする。
メタンガスを回収して発酵処理装置等の動力費をまかなう。
有機性廃棄物の性状に合わせた、最適な前処理、選別システムを選定できる。
2段発酵で発酵槽がコンパクト
(5)発酵・乾燥
・高含水有機物高速発酵乾燥処理装置(虹技)
概要:
きわめて短時間に処理ができる。
発酵後、熱風により80度まで昇温して乾燥
処理品は水分10%以下のため、長期保存が可能
処理品を土地改良剤、肥料、資料、燃料として有効利用できる。
 
・海藻液肥
 高知大学海洋生物教育研究センターの大野正夫教授は、海藻肥料による土壌改善について述べ、海藻を用いた土壌改良は北欧、独仏などで盛んに行われ、海藻液肥には植物成長ホルモンが含まれ、スイカ、リンゴ、ブドウに使用されていると述べている。
・漁業系廃棄物の焼却施設例:新潟県山北町廃棄物処理施設
 岩船郡山北町の寝屋漁港では、県の漁港環境整備事業により廃棄物集積所と残廃集積所を併せ持つ、漁業系廃棄物専用の焼却炉施設を6,800万円で完成した。
 寝屋漁港は、県内有数の漁業基地として、県外の中型イカ釣船を始め山北町沖で操業する底引き船を中心とした動力船94隻に、船外機船や遊漁船を含めた280隻の漁船の大半が利用している。
 このため、使い終わった漁網等の廃棄物が漁港地区に多く発生しており、これまでは腐敗しない石油化学製品が多いため野焼きしかなく、地形が山と海に囲まれた狭隘地に位置するため民家も近く、焚火や燃え残りの管理に苦労している。
 同施設の完成によりガス化燃焼方式の炉が、1日約3立方メートルで約1tの廃棄物を自動運転で処理するため安全で安心して生活できるようになった。利用料は、漁網・ロープが100Kg 1,000円・魚箱1箱が20円必要となるが、海上投棄による海岸汚染の防止及び地域の防火や環境浄化にも有効だと、地域住民や漁業関係者は期待している。
・貝殻による排水浄化システム、(社団法人海と渚環境美化推進機構)
 水産の世界では、カキやアコヤ貝などを加えると年間60万トンとも言われる貝殻が発生し、これの処分に困っている現状にある。(産地ではこれら漁業系廃棄物の処理に苦慮し、大量に野積みにされ、新たな環境問題として指摘されている)
 一方、家畜の糞尿による漁場汚染が問題になっている現実もある。また、畜産の世界では、廃棄物としての家畜糞尿処理が大きな問題となっており、「家畜排泄物法」の施行に伴い、平成16年度までに適切な糞尿処理の施設の整備が求められている。
 こうしたことから、排水処理に、水産において困っている貝殻(貝殻については、従来から水質浄化機能の有効性が認められていたが、畜産の分野では実証された事例はない)を活用することができないかということで、新たな廃棄物処理システムに関する技術開発への取組みが行われている。
 社団法人海と渚環境美化推進機構では、都道府県及び市町村の関係者、関係団体大学等の学識経験者などの協力をえて、新たな水浄化の技術開発にも着手し、一定の成果をあげている
 同事業は、「農畜水産地域水環境保全推進事業」と呼ばれるもので、平成12年度から14年度までの3年間の事業として、日本中央競馬会の助成を受けて、北海道(宗谷、網走)及び本土(岩手、宮城、愛媛)で、モデル地域を定め、実証試験を実施している。
 試験の実施地区は、北海道地域で、オホーツク海に面した宗谷地区と網走地区(いずれもホタテ貝殻を利用(宗谷地区では活性汚泥方式で前処理)し、乳用牛を対象)、岩手地域では北上川の上流、県南東部に位置する室根牧場(カキの貝殻を利用し、肉用牛を対象)、宮城地域では仙台湾に注ぐ阿武隈川の上流に位置する蔵王山ろくの麓にある白石牧場(肉用牛を対象に、カキ殻を利用)及び愛媛地域では瀬戸内海に面した菊間仙高牧場(豚を対象に、アコヤガイを利用(活性汚泥方式で前処理))し、貝殻活用した畜産排水の浄化システムに関する技術開発試験を実施するとともに、並行して、植生活用による水環境再生活動についてのモデル事業が行われた。
 
(1)米国及びカナダ
(米国)
・廃棄物発電:ハワイの海岸管理プログラム及びH Power
 ハワイでは、海洋資源及び海岸資源の保護のために海岸管理プログラムが実施されており、海や海岸から回収された魚網などのゴミは廃棄物発電所であるH Powerに送られ、処分されている。
 搬入されたゴミは、電磁石で金属を、スクリーンで砂などが除去され、その後にシュレッダーでせん断され、ボイラーで燃焼される。そして、ボイラで発生された蒸気によって発電が行なわれている。
 ゴミの年間処理量は、60万トンで、オアフ島の電力の7%を発電している。
(カナダ)
(3)Clare Organic Products社:ピートモスと海草をブレンドした肥料
 カナダのClare Organic Products社では、魚の廃棄物を貴重な資源へと変換するための方法を開発し、現在では、ピートモスと海草をブレンドした肥料を製造している。同社では、付加価値を付けることに努めている。
(2)フランス
・ガスコーニュ湾海浜浄化プログラム
 フランスのガスコーニュ湾では、海辺のゴミの問題が顕在化し、1991年以降、協議会は設置され、ゴミ清掃のための総合的なプログラムが実施されている。
 回収されたゴミの内、木材はエネルギー源として利用され、残ったその他の廃棄物は焼却施設で焼却されている。
 また、1999年以降、モニタリング及びゴミ処分の効率的な管理のために、21種類の新たな仕事が創出されている。
(3)オーストラリア
・Port Stephens Councilの清掃活動及びBedminster Co-composting技術
 ニューサウス・ウェールズでは、海岸での手作業によるゴミの回収作業が行なわれているが、ゴミの処分方法は主に、埋立である。ただし、一般廃棄物などのための処分方法として、コンポスト施設もある。
・ビクトリア州海浜清掃良好事例ガイドブック
 ビクトリア州では、海浜清掃のための良好事例ガイドラインを公表しており、海洋ゴミの処分方針については、「リデュース、リユース、リサイクル」を掲げている。有機物の埋立ても一つの方法であるが、温暖化ガスであるメタンが発生するために、海辺に戻すことが生態系にとっての補充となり好ましいという。代替案として、廃棄物のコンポスト化あるいはメタンを回収できる埋立サイトでの処分があげられる。
(4)英国
 ワイ・カレッジでは、実規模のコンポスト施設が建設され、1990年以降、研究が行なわれている。ここでは、高温のコンポスト・プロセスを利用した有機廃棄物のリサイクルに関する技術的なコンサルティングが行なわれている。研究されている有機廃棄物は、海藻、下水スラッジ、農業廃棄物や発酵廃棄物と広範囲である。(添付資料6)
(5)アイルランド
 海草の工業的な用途について、以下のようなものをあげられている。
農業  :生の海草、また、副産物が使用されている。例えば、肥料。
    それらは動物飼料などを生産するために処理される。
工業  :アルギン酸は、繊維産業の中で特に使用されている。
その他:化粧品の素材としての利用がある。
 
【収集資料】
1. Marine Litter-trash that kills, UNEP及びOSPAR海洋ゴミモニタリング・プロジェクト資料
2. 漁業系廃棄物、日本海洋センター
3. IHI流動床ごみ焼却炉
4. 日立金属、燃焼式焼却炉
5. 日本プライブリコ、ガス化燃焼式焼却炉
6. クラボウ、流動層焼却炉
7. エバラ、旋回流型流動床焼却設備
8. 関西テック、廃棄物装置
9. クロサキYTコムポスト(黒崎播磨の発酵乾燥処理装置)
10. ばんけい発酵システム
11. 新日鉄リネッサシステム
12. 虹技、高含水有機物高速発酵乾燥処理装置
13. 海藻液肥(現代農業、2003年8月号)、食品化学新聞2002年12月12日
14. 漁業系廃棄物の焼却施設例:新潟県山北町廃棄物処理施設
15. 貝殻による排水浄化システム、(社団法人海と渚環境美化推進機構)
16. 廃棄物発電:ハワイの海岸管理プログラム及びH Power
17. カナダ、Clare Organic Products社:ピートモスと海草をブレンドした肥料
18. ガスコーニュ湾海浜浄化プログラム
19. Port Stephens Councilの清掃活動及びBedminster Co-composting技術
20. ビクトリア州海浜清掃良好事例ガイドブック
21. 英国ワイカレッジのコンポスト施設
22. アイルランドの海草利用







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