まえがき
この報告書は、競艇公益資金による日本財団の平成15年度の補助事業として当協会が実施した「船舶電装工事の技術革新のための調査研究」の成果を取りまとめたものである。
本調査研究は、諸外国特に、ヨーロッパにおいて利用が進んでいるがい装なし電線について、その使用に関する課題等について、船舶電装工事用材料等と併せての調査研究し、今後の船舶電気艤装工事の合理化、更には関係法規の合理的な改正に資することを目的に実施した。
なお、本調査研究を実施するにあたっては、東京海洋大学海洋電子機械工学科坪井邦夫教授を委員長とする「船舶電装工事技術革新調査研究委員会」の下に、「他産業調査分科会」、「船舶調査分科会」及び「電線の引張り試験WG」、「電装技術とコストWG」を設け、各委員の熱心なご検討とご協力によるほか、国土交通省のご指導を得て実施したものであり、これらの方々に対し、心から感謝の意を表する次第である。
船舶に搭載される電気設備は、甲板機械、航海計器、無線機器、冷暖房設備等、近年、ますます技術の高度化が図られるとともに、規程・規則等の改正と相まって、船舶に搭載される電気設備の種類が増加し、機能の向上により船舶の安全航海に大きく寄与してきている。これに伴い、電気設備の艤装工事(機器据付、電線布設、結線等)及び機器保守整備工事が増大し、多様化している。
このような電気設備の発展と併行して、船舶電気艤装工事に密接に関係する船用電線(JISC3410)、電線布設用支持金物、電線固定用材料、貫通金物類、接続用端子及び端子台、装備工事用材等についても開発・改良が進められてきた。
例えば、電線については、金属被覆の一種でもある「あじろがい装ケーブル」がある。この電線は、堅いという欠点はあるが、他動的(機械的)損傷に強く、設計上の保護対策を考慮する必要もなく、少人数での工事を可能にしている。このため現在では、特殊な場合を除いて、ほとんどの船舶に使用されている電線であり、船舶電気艤装工事(設計も含めて)の工数削減に寄与している。
ところが、主に欧州の造船所で建造される船舶には、「がい装なし電線」が使用されている。特に、客船では「がい装なし電線」が使用されることがほとんどのようである。日本と比較して長い建造工期とそれに見合う工事方法になっているものと思われるが、船舶の需要が多様化するなか、「がい装なし電線」が軽量化や中小型船における工事の容易性等の利点を有することから、我が国においてもこの材料を積極的に使用したいとの要求が強く出され、「がい装なし電線」使用の可能性について検討すべき時期に至っているものと考えられる。
また、船用電線以外の電装工事用材料の中でも、最近特に注目されているのは差し込み式・ワンタッチ式の端子台を用いた電線の接続方式である。電線を端子台に接続するこれまでの主要な方法は、圧着端子をボルトナット(発電機等の大電流の機器や配電盤等)を用いて接続するが、最近、用途によっては、外国製のスプリング方式端子台やねじなし端子台等が使用される傾向にある。
このような状況に鑑み、本調査においては「がい装なし電線」の使用範囲(使用区画や対象船舶等)の拡大について、電線布設用支持金物、電線固定用材料、貫通金物類、接続用端子及び端子台、装備工事用材等の調査研究と併せて検討し、船舶電気艤装工事コストや工期等について総合的に評価し、今後の船舶電気艤装工事の合理化、更には関係法規の合理的な改正に資することを目的とする。
調査研究を進めるに当たっては、(社)日本船舶電装協会に船舶電装工事技術革新調査研究委員会を設置し調査研究を実施した。本委員会の下に次の2分科会と2WGを設けて、それぞれ詳細事項について検討した。
(順不同、敬称略)
船舶電装工事技術革新調査研究委員会委員名簿
区分 |
氏名 |
所属等 |
◎ |
坪井邦夫 |
東京海洋大学教授 |
○☆ |
木船弘康 |
東京海洋大学助手 |
□☆ |
成沢平 |
(財)日本海事協会機関部主管 |
△☆ |
松川忠 |
製品安全評価センター |
▽☆、○□ |
神浦恒男 |
学識経験者 |
□ |
村山隆 |
鉄道建設・運輸施設整備支援機構 |
○□ |
三宅徹 |
(株)IHIマリンユナイテッド艦船技術部 |
○□▽ |
新田泰彦 |
ユニバーサル造船(株)電気武器設計室 |
○△ |
村山元久 |
(社)日本電線工業会船用電線委員長 |
□△ |
東幸弘 |
ヒエン電工(株)技術部長 |
○□ |
楠野恵弘 |
(株)北澤電機製作所常務取締役 |
○□ |
天川正人 |
大阪商船三井船舶(株)設計G課長 |
▽ |
浜崎久治 |
(有)浜崎電機工業所代表取締役 |
□▽ |
藤岡伸吾 |
渦潮電機(株)電装設計課長 |
□▽ |
寺林秀男 |
横浜電工(株)技術部次長 |
□ |
光原良雄 |
山陽船舶電機(株)常務取締役 |
○ |
松野下節郎 |
三信船舶電具(株)技術部長 |
○ |
北村公一 |
(株)ノムラ代表取締役 |
オブザーバー |
松月正 |
国交省検査測度課 |
同上 |
神谷和也 |
国交省安全基準課 |
同上 |
竹内智仁 |
国交省舶用工業課 |
同上 |
柴宮義文 |
海上保安庁船舶課 |
協力者 |
菅原登明 |
(株)北澤電機製作所技術部長 |
同上 |
浅野邦彦 |
(株)IHIマリンユナイテッド艦船技術部 |
同上 |
柳澤隆夫 |
(株)IHIマリンユナイテッド艦船技術部 |
同上 |
大塔協一 |
(株)ノムラ営業部 |
事務局 |
関龍一郎 |
日本船舶電装協会常務理事 |
|
◎:委員長、☆:分科会長又はWG長、○:他産業調査分科会委員、
□:船舶調査分科会委員、△:引張り試験WG委員、▽:技術とコストWG委員
他産業調査分科会 陸上の建築物と航空機の電装工事の実態調査
船舶調査分科会 海外で建造された船舶と老齢船の電装工事の状況調査
電線の引張り試験WG 電線の引張り試験を実施
電装技術とコストWG がい装なし(あり)電線の電装技術とコストの比較
第1回委員会 7月3日(木) 於:航空会館703会議室
議事(1)委員長の選出
(2)事業計画について
(3)分科会、WGの設置について
(4)調査研究の進め方について
a 今年度の調査研究内容
b 調査研究担当委員の決定
c 委員会スケジュール
(5)外装なし電線の利用に関する調査票について
第2回委員会12月16日(月) 於:日本財団ビル123会議室
議事(1)前回委員会及び合同分科会等議事要旨の確認
(2)海外船舶・老朽船の調査について
(3)建築物・航空機の調査について
(4)引張り試験について
a 引張り試験の進捗状況
b 引張り試験立会い
(5)がい装なし電線使用の技術とコストについて
(6)船級承認船用電線について
(7)電線布設に関する規則について
(6)15年度技術革新事業報告書作成について
事業報告書の作成について
第5他動的損傷に対する保護箇所と保護方法
第8がい装なし電線の使用範囲の拡大
第3回委員会 2月9日(月) 於:航空会館703会議室
議事(1)前回委員会及び合同分科会等議事要旨の確認
(2)船舶電装工事の技術革新のための調査研究報告書(案)について
第1回合同分科会 7月3日(木) 於:航空会館703会議室
議事(1)分科会等(WGを含める。)での調査研究内容について
(2)分科会作業スケジュールについて
(3)分科会等での調査研究の進め方について
a 各分科会等における調査研究の進め方について
b 各分科会等の調査委員と調査担当について
第2回合同分科会10月14日(火) 於:航空会館703会議室
議事(1)前回委員会及び合同分科会等議事要旨の確認
(2)海外船舶・老朽船の調査について
(3)建築物・航空機の調査について
(4)引張り試験について
a 引張り試験の進捗状況
b 引張り試験立会い
(5)がい装なし電線使用の技術とコストについて
(6)船級承認船用電線について
(7)電線布設に関する規則について
(6)15年度技術革新事業報告書作成について
事業報告書の作成について
第5他動的損傷に対する保護箇所と保護方法
第8がい装なし電線の利用範囲の拡大
第3回合同分科会 12月16日(月) 於:日本財団ビル123会議室
第2回委員会と同時開催
議事 第2回委員会に同じ
他産業調査分科会調査(8月5日)
調査場所 ANA羽田空港整備場(フレィター)、大井埠頭コンテナターミナル、フジクラ開発社屋
調査委員 木船、村山、新田、柳澤(三宅代)、神浦、楠野、菅原、事務局
船舶調査分科会調査(10月6、7日)
調査場所 熊本港、牛深港
調査船舶 1. アルミ製高速旅客船、154トン、建造平成9年オーストラリア
2. アルミ製高速旅客船、84トン、建造平成9年オーストラリア
調査委員 成沢、光原、事務局
電線の引張り試験の立ち会い(12月17日)
実施場所 製品安全評価センター
出席者 松川、村山、東、藤岡、新田、柳澤(三宅代)、菅原(楠野代)、大塔(代北村)、事務局
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