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●情報収集事業
調査団名:アジア・大洋州G班
対象国:フィリピン共和国
調査分野:観光
調査期間(日数):15.1.20〜2.5(17)
 
【調査の概要】北西ルソン沿岸地帯観光開発計画
 
背景
 フィリピン国は7,107の島々からなり、豊かな自然、ユニークな歴史と文化の宝庫である。その中でルソン島北西部には、3つの世界遺産(ビガン市の歴史的街並み、サン・アグスティン教会、ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・アスンシオン教会)があり、さらに、ダイビング・スポット、自然海岸、避暑地に適した高原等の自然資源も豊富である。しかし、道路・空港等の交通インフラ等の遅れから、こうした資源が十分に活かされているとは言いがたく、現状では観光客の増大は期待できない状況である。このため、本調査は、ルソン島北西部の5州(パンガシナン、ラ・ユニオン、イロコス・スール、イロコス・ノルテ、アブラ)において、我が国ODAにより、観光による地域の経済発展と貧困削減を目指し、観光資源の現状と課題、新たな観光資源の発掘、観光の発展に資するインフラ整備の現状と課題を明らかにするための情報収集を目的として実施した。
 
 
各州の援助対象となりうる観光資源、インフラ整備等
1)パンガシナン州
○リタイアメント・ビレッジの整備:リタイアメント・ビレッジは、国の政策として、国内外の高齢者をターゲットに推進されている。本州においてもボリナオ市に、周辺の宿泊施設やレクリエーション施設の開発と組合せた計画が策定され、実施が求められている。
○国内有数のマリンスポーツのメッカであるハンドレッド・アイランズや歴史的聖堂であるマナワグ教会の周辺アクセス道路ならびに宿泊施設の整備
2)ラ・ユニオン州
○サン・フェルナンド空港の拡張:ルソン島北西部の中心的位置にあるサン・フェルナンドに空港があるが、小規模でセスナ機の発着が可能な程度である。この空港を拡張し、旅客機の発着を可能にすることで、北西部全体の観光開発に資する。
3)イコロス・スール州
○ビガン市の防火対策:ビガン市の街並み保存は、スペインの援助により既に実施されており、ビガンは世界遺産のある観光の街として発展しつつある。しかし、この援助の中で防火対策は検討されておらず、既存の消防車は老朽化し、火災に対しては脆弱な状況にある。このため、新型消防車を導入し、火災から街を守るための整備が求められている。
○サンタ・マリア市にある世界遺産のアスンシオン教会については、既に州政府が国の支援により修復を実施しているため、この優先度は低い。
 
イロコス・スール州ビガン市
歴史的街並み(世界遺産)
 
4)イロコス・ノルテ州
○ラオアグ空港の拡張整備:ラオアグ空港は、ルソン島の北の玄関口として、台北、上海、北京、高雄、マカオ、香港を結ぶ国際空港であるが、滑走路は約2,800mであり、大型旅客機の発着ができないため、滑走路の延伸により、さらなる観光客の集客が期待される。
○サン・アグスティン教会の修復:パオアイ市にある世界遺産の本教会は、その本格的修復・保存方法等について早急に検討される必要がある。なお、東京大学等の協力を得て、2000年から5年間にわたる地盤変動調査を実施している。
 
イロコス・ノルテ州パオアイ市
サン・アグスティン教会(世界遺産)
 
5)アブラ州
○エコ・ツーリズム等:アブラ州は、避暑地に適した高地やアブラ川等の自然資源に恵まれているため、ハイランド・リゾートやアブラ川のボート下り、リタイアメント・ビレッジ等の新たな開発が可能である。このような観光開発と併せ、州都バンゲッドとラオアグを結ぶ現在整備中の道路を早期に完成させ、交通アクセスの改善による集客を図る必要がある。
 
今後の見通し
 本調査では、主な観光資源とそれを活かすためのインフラ整備のポイントを整理した。今後、案件形成調査に取り組むに当り、北西ルソンの将来地域構造を念頭においた援助対象プロジェクトの絞込みと地域構造の中における位置付けを明確にする必要がある。







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