日本財団 図書館


○案件形成事業
 
調査件名:マニラ湾内海上交通安全のための流況調査
対象国:フィリピン
調査分野:海上保安
調査期間(日数):14.7.30〜8.4(6)
 
【調査の概要】
 
背景
 1991年6月、大爆発したピナツボ火山の大量の噴出物(Lahar)がマニラ湾に流入し、海底地形の変化等による船舶航行安全に及ぼす影響について、1994年7月JTCAの海外情報収集調査を行った。その結果、マニラ湾内に北方から流入するLaharが、潮流によって湾央のマニラ港まで運ばれてきて堆積が続く場合、水深の減少は勿論、海底の低湿に変化を起こし、錨掻きを悪化させて強風時に錨泊船舶の走錨が発生し易くなることが考えられると報告された。
 近年、海洋短波レーダシステムが開発され、陸上に設置したアンテナにより、広範な海域の表層流のリアルタイム観測が可能となり、我が国を初め、世界各国で利用されている。流況観測・予報の担当官庁であるフィリピン沿岸測地局は、このシステムに着目し、マニラ湾のみならず、船舶が輻輳する海峡等で、海・潮流の早い箇所にこのシステムを展開して、海上交通の安全向上のほか、海上捜索救難、油拡散防止、沿岸の海洋環境保全など、広範な用途に役立てようとの強い意向が表明され、今回JTCAの案件形成調査団として再度現地を訪問することとなった。
 
調査事項
 今回の調査対象は、マニラ湾の他、船舶が輻輳し、海・潮流の強い5海域が選ばれた。
 すなわち、ヴェルテアイランド水道、ビサヤン及びシブヤン海、セブ海峡、サンベルナルディノ海峡、スリガオ海峡である。
 これらの海域をカバーする海洋短波レーダアンテナの適切な配置について考察を加え、各海域を監視する中央局の設置、データの解析及び各方面への配布方法などについて検討した。
 その結果、同一箇所の観測期間を最低3年とし、常設箇所以外は必要データ蓄積が図られた後、別の必要箇所に移動して観測を行い、最終的にはフィリピン海域の必要箇所全てをカバー出来るような内容とすることとした。
 
現在の問題点
1)海洋短波レーダシステムは全く新しい概念に基づく観測装置のため、フィリピン沿岸測地局にとっては未知のシステムであり、初歩的段階から技術移転を図らなければならない。
2)リモート局の設置について、電力と電話の配線が必要であるが、実際に設置する場所に必ずしもこれらが得られるとは限らず、発電装置、無線電話装置を付帯させるほか、自然的・人工的破壊を防止するため、見張り要員を配置する必要があり、経費的に増加が免れない。
3)表層流のリアルタイムデータの受益者への配信について、受益者側の即応体制が未整備の場合が考えられ、当面はデータの利用範囲がある程度限られてしまう恐れがある。
 
 
今後の見通し
 本件に係る、費用がかなりの額となるため、日本政府への無償資金協力プロジェクト2004年度案件として申請する見込みである。フィリピン側にとっては、台風、エルニーニョ、赤潮などの自然災害対策にも本システムが利用できるため期待が大きい。
 
フィリピンコーストガード及びマニラ港
 
フィリピンコーストガード
 
○案件形成事業
 
調査件名:バタンガス州カラバルソン空港整備計画調査
対象国:フィリピン
調査分野:航空
調査期間(日数):14.10.16〜11.1(17)
 
【調査の概要】
 
背景
 バタンガス州は、マニラ首都圏に次ぐ経済基盤を持ち、ルソン島南部の経済・政治的中心地である。州都であるバタンガス市は首都マニラから南へ約100kmの位置にある。バタンガス州では、マニラ首都圏への物流拠点として、リパ市にあるフェルナンド空軍基地を民間と共用し、カラバルソン空港として整備拡張する計画が検討されている。
 
調査目的および内容
 調査は、カラバルソン空港整備計画策定の必要性と事業実施の可能性の両方を確認することを目的として実施された。
1)カラバルソン空港
 空港施設には、訓練機用の格納庫、管制塔、消防車庫、航空援助施設のVOR/DME等がある。滑走路は1,500m(03-21)が1本と、滑走路を挟んで西側と東側に平行誘導路が1本づつある。エプロンは、滑走路南側へ格納庫とともに1つと、滑走路中央西側へ1つある。空港の拡張は、北側を考えざるを得ないが、民家も少なく土地収用への問題は軽微と考えられる。
2)マニラ国際空港
 マニラ国際空港は、今後予測される航空需要の増加に備え、空港のターミナル施設容量の拡充を行っている。しかし、空港周辺は都市化が進み拡張用地の確保が望めない状況にあり、滑走路の容量が問題となり、現在の航空機使用事業をマニラ周辺の空港へ移転するよう検討中である。
3)空港周辺のインフラ整備および工業団地などの開発状況
 マニラ〜カラバルソン空港は、既存の国道と高速道路を利用すれば約1時間30分で到着する。一部の区間で高速道路が未整備であり、これらを整備すれば所要時間はさらに短縮できる。バタンガス州政府は、高速道路の延伸計画を最優先で実施する方針である。バタンガス〜マニラの国道沿いには、工業団地が多く建設されている。しかし、アジア地域の経済低迷のため販売実績は39.7%と低い。
 
問題点の整理
・英国コンサルタントが、ドイツのメーカーより依頼を受け2002年7月に作成した「カラバルソン空港整備計画書」があるが、経済・財務分析の前提条件が不明確であり、かつその内容に多くの齟齬がある等、資金調達のベースであるF/Sとしては不充分である。
・カラバルソン空港はマニラ国際空港の機能を補完する(競合する)ものと考えられるため、マニラ国際空港の将来の開発構想、スービック空港、クラーク国際空港などマニラ首都圏にあるその他の空港の調査、関係機関への調整を図る必要がある。
・マニラ国際空港の航空機使用事業の移管については、マニラ国際空港公団が検討中であり、早急に移管候補地を選定しなくてはならない。カラバルソン空港も候補地の1つであり、関係機関との調整も必要である。
 
今後の見通し
 州政府は地域経済発展とマニラ国際空港の補完のため、3,800mの滑走路を持つ国際空港規模の空港整備を考えており、英国コンサルタントの作成したカラバルソン空港整備計画書を国家経済開発庁へ提出している。しかし、前述したとおり内容が不充分なため調査団は日本政府の技術協力による整備計画の策定を提案した。しかし、州政府は早急な調査実施を希望しており、別途資金で調査が行われる可能性もある。
出典:フィリピン道路マップより








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION