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5. 海外調査ニュース
●情報収集事業
調査団名:アジア・大洋州C班
対象国:スリ・ランカ
調査分野:港湾
調査期間(日数):14.6.26〜7.8(13)
 
【調査の概要】
 
 スリランカ国はその国土面積が65,610平方kmであり、北海道の約8割の面積である。人口は18,732千人で、その増加率は、ここ数年、約1.4%/年で推移している。国民所得として一人あたりのGDPは2001年ではUS$836であり、LTTEのテロ活動により、前年比7.5%のマイナスとなった。
 
 港湾行政はMinistry of Port Development and Shippingが監督するSri Lanka Ports Authority(SPLA)が管理することになっている。2001年に於ける港湾活動は、その前半において、顕著な伸びを示したが、後半は逆に著しく後退している。その理由は、2001年7月24日に発生したLTTEのコロンボ国際空港襲撃事件により、当国に寄航する船舶の保険料(保険料はテロ事件直後で船体価格の0.1%から0.25%で上昇したが、その後、更に0.5%から1.0%に)の追加部分が前述のテロ事件により高騰し、主に、コロンボ港に寄航していた大型コンテナ船が抜港したことで、トランシップコンテナの取り扱い数量が激減し始めたことに起因するものであった。政府の努力もあり、高騰した追加の保険料は、年末までには、大幅に減額されると共に、2002年始めには、この保険追加料金は加算されなくなっている。
 調査の対象港としたトリンコマリ港とオルビル港はSLPAが管轄する同国7港の内の2港である。トリンコマリ港の歴史は古く英国の東インド会社が活躍し始めた頃に開港している。港湾施設の建設が可能となる平穏な水域はコロンボ港の6.5倍である17平方kmを有し、世界第5位のNatural Harbourである。現況として、構内における主なる設備は1970年代に建設されたプリマの製粉工場とその荷役桟橋(水深-13m、桟橋延長200m)、1990年頃に操業を始めた東京セメントの荷役桟橋(水深-8.7m、桟橋延長155m)と工場、Ceylon Petroleum Corporation(CPC)の桟橋(水深-9.2m、桟橋延長200m)、建設完了が近いSLPAのケーソン岸壁(水深-13m、岸壁延長257.1mの背後に幅91.1mの荷捌き用埋立地)、それに、海軍の施設がある。間もなく着工が認可される設備としては、インド国の資本によりBOTで建設される石炭火力発電所があり、その荷揚げ設備として、水深-11.5m、岸壁延長250mがClappenburg岬に建設される予定である。その他、Ceylon Electricity Boardが計画する石炭火力発電所やCeylon Petroleum Corporationが計画する石油精製設備の建設などがある。依って、早い機会に、背後圏の工業立地をも含めて、港湾計画を核とする地域開発のマスタープラン作成が急務である。
 
 オルビル港は数年前からSLPAが港湾建設予定地としての調査を開始して、それなりの平面計画図があり、25mの灯台が3年前に完成しているが、当国の東海岸の中心部に位置する当港計画地点は、漂砂の移動が激しい場所でもあり、建設された灯台前面では、過去の3年間で、その海岸線が約50m浸食されていることが判明したので、当港の建設立地は見直す必要があると思われる。
 
トリコマリ港: 
SLPAが自己資金で建設中
-13m ケーソン岸壁252m
 
オルビル港建設予定地は小規模の漁村
 
●情報収集事業
調査団名:アジア・大洋州D班
対象国:カザフスタン共和国
調査分野:都市交通
調査期間(日数):14.7.23〜7.30(8)
 
 
背景および調査事項
 2000年2月から2001年5月にかけてJICAによるアスタナ新首都総合開発計画M/P調査が実施された。またアスタナ新首都から約20km南南東に位置するアスタナ国際空港では空港設備の拡張・改良を行う空港改修事業が実施中である。JICA M/Pではアスタナ国際空港からアスタナ都心部を経て国鉄アスタナ駅を結ぶ路線、既存の都心と新都心を結んでいる環状路線、および新住宅地域への路線の計3本の軽快鉄道(LRT)の建設が提案され、このうち空港と国鉄アスタナ駅を結ぶ路線は2010年を目途に提案されている。本調査ではこのLRT計画実施に向け我が国からの技術協力の可能性を年頭に置き関係省庁の聞取りと既存資料や関連情報の収集の他、現地踏査、現状実態調査を実施した。
 
現況
 アスタナ市の人口は著しい開発に伴い年々増加している。1998年は27.5万人、1999年では32万人で現在2002年は50万人とも言われている。これは一時的に開発地区事業に携わる労務者が人口増加原因と考えられ、今後の人口推移には十分注意しておくべきである。公共交通はバス、ミニバスおよびトロリーバスからなっており市民の多くはバス交通に依存している。バスは33路線あり、そのうち鉄道駅と空港を結ぶ路線は合計10台でまかなっており約10分間隔で運行されている。所要時間はおよそ50分で運賃は20Tenge(1US$=153Tenge)である。ミニバスは市が認可した民間企業により運営されており、およそ300台あり運賃は25Tengeである。トロリーバスは5路線あり運賃は20Tengeで総延長路線は51kmである。現在空港から旧市街地の間(約20km)には道路の渋滞は無く車での所要時間は15分である。
 旧市街中心部をはじめとした都市開発に伴い、いたるところで道路整備工事や新設道路工事が行われておりイシム川に架かる新しい道路橋も完成している。アスタナ市主導で着々と道路整備が進んではいるものの、大量の公共交通輸送が可能なLRTを含めた軌道系交通を考慮した道路計画が策定されていないのが現状である。
 
問題点と今後の見通し
 アスタナ市で登録されている自動車は1999年でおよそ3万台あり総人口に対しては低い水準と言える。しかし首都開発および道路網の整備が進み、経済成長にともなうアスタナ市民の所得向上を踏まえると、人口増加とともに道路交通量が増えると予測できる。JICA M/Pでは2030年の自動車保有台数は28万台と予測されており、道路交通に代わる軌道系交通システム(LRT)の導入を提唱している。
 上記を踏まえると公共交通においては依然バス、トロリーバス、ミニバスが主流ではあるが、いずれは軌道系交通を導入することにより更なる都市交通ネットワークの強化を図ることは必要であると考える。しかし現状はアスタナ国際空港の整備・拡張工事や都市開発に伴う建設ラッシュによる急激な発展により、将来の人口の伸びや道路交通の需要予測は非常に難しい。また新都心地区の完成に伴う行政機関をはじめ企業や住民の移転がいつになるか不透明な現状では、JICA M/Pで提案している空港−国鉄アステナ駅を結ぶLRT路線(2010年を目標)の着手は若干時期尚早と考える。一方で今回の調査を省みればアスタナ市東部の住宅地区開発が急速に進んでいることから、旧市街地と東部の住宅地区を結ぶ軌道系の公共交通を優先的に進めることが有効であると思料する。
 
市民の公共交通であるトロリーバス
 
市が認可している民間のミニバス







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