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平成15年度 ハノイにおける都市及び公共交通開発セミナー 報告書

 事業名 基盤整備
 団体名 海外運輸協力協会 注目度注目度5


2.3. 第3部 パネルディスカッション「将来の都市公共交通開発の方向」
 
 
ハノイ人民委員会 建築計画局 副局長 To Anh Tuan
「2020年に向けたハノイにおける都市と交通システムの開発の方向」
"Orientations on The Urban Development Planning and Transport System in Hanoi City by the 2020"
 
 2020年のハノイ開発計画は、1998年6月20日付の108/1998/QD-TTgの首相決定によって承認された。同開発計画はベトナムの工業化・近代化事業におけるハノイの位置付けや役割、開発方向性等を定めたものであり、最終的な目的はハノイを民族の特色と伝統を保つ近代都市へ発展させ、政治、経済、文化、科学技術及び国際交流の大拠点と東南アジア並びに世界の大都市という位置付けを目指している。ハノイの役割、位置付け及び施策は、共産党政治局による15/NQ決定及び国会常務委員会によるハノイに関する法令で再確認された。このような状況の中でハノイは近年、GDP成長率の10%という活躍的な成長を見せている。
 
 しかし、ハノイは、こうした発展の同時に、都市居住問題、環境問題、交通問題など多くの課題に直面しており、これらの課題を解決するには、これまで以上の努力、時間と財源が必要である。これらの問題の中でも緊急かつ重要な課題として、ハノイの都市交通システムの開発が挙げられる。そして、世界各都市で実施されてきた都市交通開発の経験を学ぶことは、ハノイが直面している課題の解決に重要であると言える。ベトナムの首都ハノイは、ベトナムの政治、経済、文化、科学技術の中心地であり、ベトナム北部の経済三角地帯において重要な位置付けを持つ。また首都圏の中核であり、その都市圏は半径30〜50キロメートルで、中心都市(ハノイ)及びハタイ省、ビンフク省、バクニン省、フンイエン省、ハイズオン省、ハナム省の各省にある衛星都市から形成される、人口約450万〜500万人の大都市圏である。
 
 現在のハノイを取り巻く新衛星都市として、西には、ミエウモン、スアンマイ、ホアラク、ソンタイがあり、これらの新都市は科学技術の研究開発、ハイテクを中心とする工業、観光、保養、国家文化の都市機能を果たす。またミエウモンには首都圏の第2国際空港の建設も予定されている。これら新都市の計画人口は約100万人で、面積が1万7千ヘクタールと計画されている。これらの新都市開発はホアラクからスタートし、現在国家大学やハイテクパーク、ベトナム文化村、フカット工業団地、ドンモゴルフ場など多くのプロジェクトが着手されている。
 
 また、北には、ソクソン、スアンホア、ダイライ、フクイエンの新都市がある。これらの新都市は工業団地(メリン、スアンホア、ソクソン等)、観光地(ダイライ、ドンクアン、デンソク)及びノイバイ国際空港のサービス区である。人口が2020年に50万人で、その面積が7,500ヘクタールと予定されている。
 
 首都圏にはバクニン、フンイエン、ハイズオンの衛星都市、ヌクイン、ホ ノイのサービス・工業エリア、ツオンティン、フスエン、フリ工業都市などがある。ハノイ都市圏の各衛星都市間の円滑な連絡を図るために、既存の国道1A号線、2号線、3号線、5号線、6号線、18号線、32号線及びラング〜ホアラク高速道は改修・拡張すると共に、幾つかの環状線が計画されている。
 
 このような大ハノイ首都圏の核となる中心都市がハノイである。ハノイの開発は、主に西とホン川の北部に進められる予定である。2020年に中心都市は人口が250〜270万人で、面積が2万5千ヘクタールとなる。中心都市はホン川の両岸に分布し、そのうち右岸側(現在の市内も含めて)が150万〜170万人、左岸側が100万人という構成である。
 
 都市開発の方針によれば、中心都市は3つの地域に分けることができる。「開発規制地域」: 開発が規制される地域は、南と西には第2環状線(ミンカイ・チョンチン・ラング・デブオイ・ラクロンクアン)、北には西湖、東にはホン川によって囲まれ、主に昔の4区(ドンダ、バディン、ホアンキエム、ハイバチュン)の面積及びタイホー区の一部からなる。ここは長い歴史があり、ハノイ・タンロンの発展の歴史に欠かせない一部であり、多くの文化や歴史、建築の遺跡が残されている。人口密度の高い地域でもあり、バディンの政治街やホアンキエム湖周辺の行政・商業・サービスエリア、旧市街、フランス新市街など重要なエリアを持つ。この部分に対する開発方針は都市建築の特色を保存・修復という形で維持し、人口の削減、工業施設や不適切な施設の移転、建築密度及び高層ビルの建設の制限、インフラの補足整備、緑と公共施設の面積の増加等といった方法で環境と景観を良くし、都市の質を改善する。この地域の人口は2020には現在の95万人から80万人に減ると予測されている。
 
 「開発地域(ホン川右岸)」:第2環状線の外側に配置するエリアからなる。具体的にはタンロン橋の南側、32号線、6号線、1A号線沿い、開発制限地域の北部、西部と南部である。この地域は人口が2020年に70万〜90万人、建設用地が8,800ヘクタールと見込まれている。新興住宅地の他に西湖の西部に立地する行政・商業・サービスの新しいエリアや西湖周辺の観光・リクリエーションエリア、外務サービスエリア、国家スポーツコンプレックス、大学村、南西部の文化村・リクリエーション施設、ナムタンロン、カウジエン工業団地等の建設が予定されている。
 
 旧市内エリアと隣接する位置という特徴から、この地域は中心都市の一次開発の対象となる。ここでは現在、ナムタンロン、リンダム、ディンコン、ハッヴァン・トヒエップ、チュンホア・ニャンチン、メチー、ミディンの新興住宅地や交流都市の開発、国家スポーツコンプレックス、ナムタンロン、カウジエン工業団地等、開発が活発的に進められている。
 
 「新規開発地域(ホン川左岸)」:この地域の殆どは新規に開発され、タンロン橋の北部からサイドンまでドンアイン、ザラム2区の12,500ヘクタールをカバーする予定。2020年の人口は100万人と推測されている。ここではフオンチャック、スアンチャック地区において、住宅や商業、サービス、行政、文化エリアを含める一つの近代的な新都市の開発が行われ、バクタンロン、ドンアイン、サイドン、ドックザンの工業団地、コルア観光地、バンチー観光・リクリエーションエリア等の建設も予定されている。既に着手準備の段階にあるプロジェクトは幾つかあり、例としてバクタンロン・バンチー、サイドン工業団地、サイドン、ビエトフン新興住宅地が挙げられる。
 
 ホン川北側の開発の基礎であるカウチュイ〜ドンチュ〜バンチー〜バクタンロンを結ぶ道路の建設プロジェクトは最近首相に承認された。
 
 また、既存の工業団地(ミンカイ、ビントウイ、チョンディン、ザップバット、ファッバン、バンディエン等)については環境を汚染している企業や工場を市内から郊外へ移動し、ハイテクの導入や事業の転換の方法で開発計画との同調を図り、環境と周辺の住宅へ影響を与えないように努力する方針である。ハノイの工業開発は総面積2,000ヘクタールのサイドン、ドンアイン、バクタンロン、ナムタンロン、カウジエンなどの工業団地に集中され、ITや電気・電子工業、アパレル、機械製造、高級建材の製造等、ハイテク工業や環境汚染の少ない工業、多くの土地と資源を必要としない工業または輸出向けの工業が優先される。その他に小規模の工業団地や手工業、伝統産業も発展させる方針である。
 
 同時に、ハノイの公共エリアはそれぞれのレベルに組織される。市のレベルではバディン官庁街、ホアンキエム湖周辺の行政・商業エリアの他に西湖の西部に立地する商業・財政エリアやフオンチャック・スアンチャック及びザラムに立地する商業・サービスエリアが計画されている。
 
 ハノイの緑は公共的な緑(公園)、特殊の緑(通り沿いの緑、苗木栽培場の緑)、それぞれの機能を持つエリア(工業団地、住宅、学校等)の緑に分類することができる。公園や緑地、リクリエーション施設の一人当たりの面積は16平方メートルである。計画ではイェンソ、メチー、西湖、コルア、バンチー、クコイ等で幾つかの大型公園が建設される。
 
 ベトナムの首都であるハノイの交通網開発は次のような考え方で計画されている。
 
・ハノイはベトナム国の最も重要な都市だけではなく、東南アジアにおいても経済・文化・国際交流の大拠点である。
 
・ハノイの交通システムは全国の交通システムの一環として、北部の重要経済圏及び首都都市圏との関係を十分に配慮し計画されなければならない。
 
・ハノイ交通計画は道路や鉄道、水路及び航空システムをうまく連携させなければならない。またハノイの交通システムは段階的に近代化され、経済・文化・社会の発展及び治安・国防のニーズに応えなければならない。
 
・ハノイの都市交通の開発は公共輸送事業を中心に実施するものである。
 
・ハノイ交通計画は国際レベル、国家レベル、地域レベル及び都市レベルの様々な課題に対する、一貫性のある解決策でなければならない。
 
 道路開発については、ハノイとその衛星都市とを結ぶ国道1A号線、2号線、3号線、5号線、6号線、32号線、ラン・ホアラク高速道は、拡張工事が計画されており、ハノイ〜ハロン高速道、ファッバン〜カウゼは、計画中である。将来には中心都市とビンイエン、ハイフォン、フンイエンの各都市と結ぶ高速道も計画されている。
 
 鉄道開発については、ハノイのマスタープランによると、鉄道網は西部の既存鉄道インフラを改善することと、ゴックホイ駅からタインチー橋を経てコビに行き、そしてドアン川を越えてバクホン駅まで行く路線を新設することで整備される予定である。これによってハノイの環状鉄道路線が整備されることになる。また、フジエン、ハドン、ビエトフン、ザップバット、ザラム、イエンビエン、バクホン、バンチー、コルアの駅で駅舎のインフラも改善される予定。この中でコビ、イエンビエン、ビエトフン、バクホンは貨物列車の編成駅でザップバット、ザラム、フジエンは旅客列車の編成駅である。
 
 航空開発については、ノイバイ国際空港の拡張計画は1994年4月4日付の152/QD-TTg首相決定によって認可された。ザラム空港、バクマイ空港及びホアラク空港は国内線の空港である。将来には、第2国際空港がミエウモン(ハタイ省)に建設される予定である。
 
 水路開発については、ホン川の整流及び浚渫、既存のクエンリョン港及びハノイ港の改善工事、バンキエップ港、トウンカット港及びドンチュウ港の新設等が計画されている。水路輸送のために、現在ベトナム交通運輸省は日本のJICAの支援を得て、ホン川の整備のプロジェクト形成を進めている。
 
 このような対外交通システムを整備することによって、ハノイは世界中や近隣諸国の大都市、そしてベトナム国内の大都市への円滑なアクセスを確保することができる。
 
 都市内交通についてであるが、ハノイの都市交通の開発は公共輸送事業を中心に実施するものである。マスタープランによると、2020年にはハノイの公共輸送は移動需要の50〜60%を満たさなければならない。2010年にはとりあえず30%満たすことを目標にしている。公共輸送の主な手段はバス、都市鉄道(高架鉄道、地下鉄及び普通の鉄道を含む)、ハノイとホアラク、ソクソンのような衛星都市を結ぶ都市間鉄道。この中で、都市鉄道は公共輸送の主要なルートとして開発が優先される。バンディエン〜ハノイ駅〜イエンビエン、ハドン〜ガトウソ〜カットリン〜ハノイ駅、ハノイ駅〜カットリン〜キムマ〜トウレ〜フジエン〜ミンカイ、ザップバット〜第3環状線、タンロン橋〜ノイバイ、キムマ〜ランチュン〜ホアラク、サイドン〜ドンチュウ〜バクタンロン及びニャットタン〜ドンアインの鉄道路線が整備される。
 
 開発抑制地域に関しては、主に第2環状線以降の既存の道路が改修される予定である。また、ホン川の両岸の新都市の道路は、次のような基準で整備される。
 
・主要道路は幅員が70〜80メートルで、インタエリアの道路は幅員が50〜60メートルで、平均密度が1.28キロ/平方キロ
 
・エリア道路は幅員が35〜50メートルで、平均密度が2.5キロ/平方キロ
 
・サブエリア道路は幅員が25〜35メートルで、平均密度が4.7キロ/平方キロ このように、将来にはハノイの道路密度は平均して4.7キロ/平方キロに達さなければならない。
 
 改修される都市(第2環状線以降)については上記の基準の適用は現状を配慮して行うが、少なくとも新開発都市の70%のレベルでなければならない。
 
 また、都市交通と都市間交通を合理的に構成するためにハノイは現在、幾つかの環状線を整備している。東西線(グエンクアイ〜チャンカットチャン〜ダイコビエト〜ラタイン)、第2環状線(ザラム〜ビントウイ〜ミンカイ〜チョンチン〜ラン〜カウゼイ〜ブオイ〜ニャッタン〜ドンアイン〜ドックザン)、第3環状線(ノイバイ〜ドンアイン〜サイドン〜タインチー〜ファッバン〜マイジク〜バクタンロン〜ノイバイ)が既に整備されたまたは現在整備されている。将来には第4環状線(ハドン〜ニョン〜キムアイン〜チュンザ〜ティエンソン〜ヌクイン〜ゴックホイ)も整備される予定。
 
 放射状道路では、既存の国道が改修・改善される予定である。例えばザイフォン、グエンチャイ、スアントウイ、ゴザトゥ、グエンバン等である。ホン川両岸の都市交通システムを完成させるために、ハノイは既存の橋3本の他にホン川を渡るタインチー橋とドアン川を渡るフドン橋(第3環状線)の建設工事が着手された。将来にはホン川の4本とドアン川1本の橋の建設が予定されている。
 
 都市交通を効率的に計画するには交通網の構成や、交通手段の選択、輸送分布等だけではなく、駐車場システムの問題もうまく考えなければならない。現在ハノイは2020年までの公共駐車場システムの計画を進めている。この計画によれば、駐車場は放射状線上やハノイの入り口、公共エリア、工業団地、住宅地及び都市交通が重点的に整備される。
 
 2005年及び2010年までの交通開発の課題は、以下の通りである。
 
・認可された交通網整備プロジェクトを進める。この中でリエウザイ通り、物理研究所〜民族学博物館通り、ハノイ交通管理能力の改善プロジェクトの第1フェース、ガトウソ、ナムタンロン、ブオイ、キムリエンの重要交差点の改善プロジェクトが挙げられる。
 
・東西線を完成し、グエンカイ〜チャンカットチャン、キムリエン〜オチョズア〜カウゼイ間の道路を完成する。
 
・第2環状線(ビントウイ〜ミンカイ〜チョンチン〜ラン〜カウゼイ〜ブオイ〜ニャッタン間)を完成する。
 
・第3環状線を整備する。(ナムタンロ〜マイジク〜ファッバン間)
 
・第4環状線の第1フェースを実施する。
 
・放射状線の国道1A号線、2号線、3号線、5号線、6号線、18号線、32号線を改修・拡張する。認可された計画に基づいてこれらの国道の市内部分を完成する。
 
・ホン川北部における新都市のためのカウチュイ〜ドンチュー〜バクタンロン〜バンチーの新道路を建設する。
 
・バンディエン〜イエンビエンの都市鉄道と32号線沿いの鉄道を段階的に整備する。
 
・認可された各区の交通開発計画に基づいて市内と市の入り口に幾つかの駐車場を整備する。
 
 ハノイは都市インフラを整備し、近代的でいながら伝統の特色を保ちつつある都市として長期的に安定な発展を目指す。このことは既に首相により承認された2020年までのハノイの開発計画に定められている。この数年ベトナム政府及びハノイ人民委員会は国内外の投資家を多くの建設プロジェクトに誘致すべく様々な施策を行ってきた。同時にハノイのインフラ整備資金の確保ために世界銀行や外国の政府との交渉を進めてきた。ハノイは日本政府も始め、多くのドナーから財政支援を得ている。この財政支援で、ハノイは排水プロジェクトや交通管理能力改善プロジェクトなど、多くのプロジェクトを実施してきた。しかしながら、将来の発展のためにはさらに多くのプロジェクトと大きな財源が求められている。
 
 
株式会社アルメック 岩田鎮夫
「公共交通整備アプローチ」
"An Approach to Public Transport Development"
 
 ベトナムの交通セクターでの業務的な関わりは6、7年になる。去年の8月からは、ホーチミン市での都市交通マスタープラン調査に携っている。今日は、ベトナムでのハノイやホーチミン市のような大都市での公共交通整備のアプローチについて説明したい。ご存知のように、ベトナムでは経済成長と伴にモータリゼーション化と都市化が非常に急速に進展し、都市環境問題、交通渋滞と交通安全が深刻な問題となっている。これらの問題が解決しなければ、健全な都市の存続は不可能である。しかし、個人交通手段から公共共通に移行させることは容易ではなく、非常に困難な作業であるが、ハノイとホーチミン市には不可欠である。良好な交通システムの整備なしでは、将来の都市での人々の需要を満たすことは不可能である。幸い、ベトナム政府の都市公共交通促進への姿勢は非常に強いものがある。今朝のプレゼンテーションにあったように、モデルバス事業が両市に導入され、ハノイでは良い結果が出ている。我々の調査結果によると、人々の認識も急速に変化している。5年前は、誰もバスについて語ろうとしなかったし、誰もオートバイの利用を放棄することを望まなかった。実際、我々がオートバイ利用の制御政策について議論すると嘲笑された。しかし現在、ホーチミン市での二万世帯を対象とした我々の調査結果によると、95%が公共交通開発を支援し、同じく90%の人々がオートバイの所有と利用に制限が必要であると考えている。これは、非常に健全な考え方であるといえよう。今は、これらの都市で良好な公共交通整備政策を、政府と市民が伴に真剣に考える良い時期だと思える。
 
 人口規模300〜500万人を越えるハノイやホーチミン市のような大都市では、将来確かに都市鉄道システムが必要である。都市鉄道システム不在では、将来の交通需要には対応出来ない。しかし、都市鉄道の建設コストは非常に高く、例えば、高架鉄道は1キロ当たり少なくとも4,000〜5,000万ドルかかる。地下鉄ではさらに多くの費用がかかる。実際20年後には、ハノイとホーチミン市で2、3路線、距離で30〜50キロ程度が財政的に最大限可能なレベルであろう。しかし、将来の両都市の交通需要は非常に大きく、ハノイでは、一日当たりのトリップ数は少なくとも800〜900万、ホーチミン市では1,000〜800万トリップと予測されている。この交通需要に対して、都市鉄道が2、3路線あったとしても、一日あたり100〜150万人の乗客の受け入れが可能になるだけで、その他の交通需要には対応が難しい。即ち、都市鉄道を整備しても、大半の需要は他の交通モードでまかなわなければならないということである。他のモードというのは、バスのことである。バスは現在重要であるだけではなく、将来においても都市鉄道の補完交通手段として重要である。もちろん、都市鉄道輸送には大きな役割がある。一つは主なコリドーに沿った交通混雑緩和であり、都市鉄道利用者には低コストなより早い移動時間、その他の道路利用者には混雑緩和を与えてくれるが、より重要なことは、コストのかかる鉄道整備事業は、将来の都市成長を導くのに非常に重要な役割を果たすことである。
 
 ハノイとホーチミン市は、今後20年間に200〜300万人の人口増に対応しなければならない。対応策として団地開発は可能であるが、良質の公共交通手段がなければ、通勤、通学、買い物などの日常生活に支障をきたすことは明白である。このため、我々は良質な公共交通の整備が必要である。何百万という人々の需要を満たすことが必要であり、もし周到に鉄道開発が計画されれば、交通と市街地開発問題両方を解決する非常に良い機会となるであろう。
 
 将来の都市構造については、ハノイとホーチミン市の人民委員会の代表から説明があったように、3つのシナリオが出されている。第1のシナリオは、土地利用規制であるが、将来の土地利用を都市の成長に併せてコントロールすることは非常に難しく、何もしないと、都市の成長は交通コリドーに沿って無秩序に進み、幹線道路沿いには商業もしくは他の市街地開発が発生し、沿道は非常に混雑する。第2のシナリオは、衛星都市の整備計画である。このシナリオは、紙の上では理想的に見えるが、実際に、新たなニュータウンを好機に開発することは非常に難しく、また、新規ニュータウン開発は時間を要する。これからの20年間で2百万人の人々を受け入れなければならないと想定すると、10以上のニュータウンが必要である。確かに、第2のシナリオは良いと考えられるが、注意深く実施する必要がある。第3のシナリオは他のシナリオより実践的である。中心市街地からある一定の距離を置き、主要な交通コリドー開発と伴に、環状道路沿いにサブセンターを開発するというシナリオである。この場合、環状道路開発が重要である。サブセンターの開発が環状道路の開発と関連付けられなければ、交通混雑の解決もしくは緩和には貢献しない。また適切な土地利用も促進されないであろう。このような事例は、世界中で多く見られる。
 
 都市計画において重要なことは、交通と都市の統合化された開発である。計画策定のアプローチは、コアになる大量輸送コリドーを選択し、統合された土地利用計画を策定することである。ホーチミン市とハノイでは4〜5の主要コリドーが郊外の地域を結んでいる。都市鉄道開発を計画するべき最も重要な大量輸送コリドーを決定し、そのコリドーの利用を最大化し、良いサービスを供給するのである。このコリドーの開発はマスタープランと統合し、沿道開発は制御され、駅やインターチェンジなどの施設開発や幅員確保のための用地買収をできる限り先行して実施する。この主要コリドー開発を前提とし、バスのネットワークも階層的に開発する。すでに説明したように、バスには異なった収容量の異なったサービスタイプがある。バスネットワークは同様に、階層的な方法で開発するべきである。容量に関しては、バス方式が最も効率的であり、バスレーン、優先レーン、フィーダーバスなど異なったタイプのサービスの供給が可能である。需要の増加、インターチェンジ施設や十分な幅員確保、市街地開発への土地利用規制といった条件がそろえば、都市鉄道へ最終的に移行が可能である。駅や駅周辺、またコリドー沿いの高密度の開発を指向している。おおまかな数値ではあるが、LRT一路線を可能にするためには、少なくともその沿道の旅客需要50〜100万人を必要とする。コリドーの需要がこのレベルに達したとき、おそらくバスから都市鉄道への移行が可能となるであろう。
 
 総合的な土地利用計画が非常に重要であると考えられる。家田教授のプレゼンテーションでクルチバ(ブラジル)のケースに見られるような、都市鉄道沿線の高密度開発、駅や駅周辺の都市サービスセンター、フィーダー交通サービスなどを含む統合性が重要であるということである。建設コストが高いため、鉄道での大規模なネットワーク整備は可能ではない。そのため鉄道の利用と能力を最大化するために、フィーダーサービスを充実させ、より多くの旅客を集る必要がある。クルチバでは、バスウェイとコミュニティーセンターが同じエリアに整備された。バス停留所に着くと、コミュニティーセンターがある、そしてそこで市民のための基本的なサービスが得られる。事務所に行く前、また帰りに、必要とするすべての基本的なサービスが、そのコミュニティーセンターで提供され、24時間オープンしている。下の写真は商業ビルとバスターミナルの例である。これは公共交通に乗客を引き付ける1つの方法である。
 
 公共交通のモード選択に関しては、多くの異なった種類がある。バスだけでも、路線バス、優先レーンバス、専用レーンバス、バスウェイを利用したバスなどがある。時間帯とシステムにより、容量あるいはサービスレベルが異なっている。当然、コストも異なる。平面で運営される限り、バスのコストは最小限に抑えられる。過去の経験によると高架鉄道のコストは1km当たり、1,000〜5,000万米ドルに対して、バスでは200〜300米ドルに過ぎない。中間の軌道システムとして、モノレールや高架のLRTなどの違ったタイプがある。しかし、ハノイの需要規模で、地下鉄システムを必要とするかは疑問である。これらは利用可能な交通モードであり、コリドーや地域によって注意しなければならない。限られた資源の中で、需要を満たす最適なシステムをどのように選択するのかが課題であろう。
 
 ハノイとホーチミン市では、バス専用レーンとバスウェイが最も可能性が高い選択肢であると考えている。バスウェイとバス専用レーンに関して言うと、道路の狭さがバスレーン導入の阻害要因にはならない。総合的な交通管理計画が適切に計画されるのであれば、他の交通との妥協も可能である。もし、名古屋のようなキールートバスの空間が十分あるのであれば、このキールートバスの道路空間は多種の交通と共有され、ピーク時にはバス専用となり、その他の時間は緊急車両など他のタイプの交通との共有が可能である。バスの運行頻度や新規バスの導入も重要である。同時に利用者へのサービス向上のためのあらゆる手段を考えることも必要である。停留所のデザイン、ノンステップ車両の導入、車椅子のためのリフトや停留所に自転車で行くための特別な駐輪場の整備などは、バス交通を魅力的にする方策の例である。ホーチミン市では、これらの方策は実際に実行されている。
 
 既に説明したことを要約すると、持続可能なバス整備を達成するために、少なくとも3つの分野について予測しなければならない。最初はバスの運行環境である。バスの運営は非常に難しい。バスの運行には良い環境が必要である。バスが少なくとも他の道路交通より速く移動する必要がある。そうでなければ、魅力的ではない。そのため、バス交通に優先性を持たせるために、非常に包括的な交通管理が必要となる。限定された道路空間の中で実践するのであれば、個人所有のオートバイ人気が高いハノイとホーチミン市で、交通安全を考慮しなければならない。オートバイで占有されている道路にバスのような大きな車両が、交通管理対策なしで導入された場合、交通事故の増加が懸念される。非常に重要な懸案事項の1つである。現在、政治的な理由により、バスは多額の助成金に頼っているが、この助成制度は永久には継続できない。長期的には、バス運営者の管理能力が重要になっていくという面でも、特別なバス運営と維持管理を含む適切で効果的な管理が必要である。現在、車両は新しいが、バスをきれいで魅力的に保つためには、適切な維持管理が必要である。バス維持管理もまた非常に難しい分野である。そしてもちろんマーケティング面でも、バス会社はあらゆる方策を試み、消費者に対して魅力あるサービスを提供するべきであろう。当然、最も重要なことは、政府主導ではない、人々の社会的な支援である。市民は公共交通の重要性に気付いている。公共交通は良いものであり、人々の生活の一部になるべきものである。それでは、どのように、バス利用の習慣を啓蒙するのであろうか。市民のバス利用への習慣化には、政府と社会の両方から協力と支援を必要としている。これら全ての3項目が、将来の持続可能な公共交通支援の基本的要素である。
 
 特にホーチミンシティとハノイに関しては、ユニークな特徴がある。それは、2つの都市には、文化遺産を持つ市街地があるということである。この重要な歴史的資産は、交通混雑と他の要因によって破滅されることなく、保全されるべきである。このエリアでの移動性とアクセスを確保するための方策が計画分野の一つである。他国の例を挙げれば、歩行者と公共交通はある一定のエリアへのアクセスが許可されているが、自家用車や他の車両の進入が厳重に制限されているケースがある。ハノイとホーチミン市は、このようなコンセプトの計画導入の可能性が高い。
 
 最後に、ハノイには嘗て1989年ごろに放棄された非常に大規模な路面電車のネットワークが存在していたことを明らかにしたい。13〜14年前、ハノイで路面電車が運営され、そのネットワークは広範囲で市の中心部全域と全ての主要コリドーで運行されていた。我々が試みていることは、これらのコリドーにバス専用レーンを復興させることである。この意味で、ハノイでは、13年前に既に解決策があったといえよう。しかし、なぜ放棄されたのか。多くの理由があるだろう。強調したいことは、この経験を近代的な方法で開始することが可能であるということであり、他の都市での経験を生かし、現在と将来の需要を満たすためにコリドーを再生するのである。路面電車の復活を意味しているのではなく、ハノイやおそらくホーチミン市での公共交通の新しい方法による復活を意味している。







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