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海事の国際的動向に関する調査研究事業報告書(海上安全) 別冊 AISの国際的動向に関する調査研究

 事業名 海事の国際的動向に関する調査研究
 団体名 日本海難防止協会 注目度注目度5


AISとCOLREG規則改正の必要性
(英国航海学会スティット氏)
 
1 COLREG規則2(船員の常務:衝突予防法第39条関連)
 AISを効果的に使用する方法を訓練されていない乗組員がAIS搭載船で航海した場合に、規則2に関係する船員の常務違反に問われるかについて議論があり得る。
 AISの搭載は更なる責任を負うこととなるかもしれない。過去100件以上の衝突事故を取扱った裁判官は、レーダーの使用に関し、「レーダーを搭載した船はしていない船に比べ有利である。と同時に当該機器を有効に活用する義務を生じる。より良い機器を搭載している船ほど、失敗したことに対し言い訳することが難しくなる。」との立場を取った。AISについても同様と考えるのが妥当であろう。
 
第六条(安全な速力)船舶は、他の船舶との衝突を避けるための適切かつ有効な動作をとること又はその時の状況に適した距離で停止することができるように、常時安全な速力で航行しなければならない。この場合において、その速力の決定に当たつては、特に次に掲げる事項(レーダーを使用していない船舶にあつては、第一号から第六号までに掲げる事項)を考慮しなければならない。
一 視界の状態
二 船舶交通のふくそうの状況
三 自船の停止距離、旋回性能その他の操縦性能
四 夜間における陸岸の灯火、自船の灯火の反射等による灯光の存在
五 風、海面及び海潮流の状態並びに航路障害物に接近した状態
六 自船の喫水と水深との関係
七 自船のレーダーの特性、性能及び探知能力の限界
八 使用しているレーダーレンジによる制約
九 海象、気象その他干渉原因がレーダーによる探知に与える影響
十 適切なレーダーレンジでレーダーを使用する場合においても小型船舶及び氷塊その他の漂流物を探知することができないときがあること。
十一 レーダーにより探知した船舶の数、位置及び動向
十二 自船と付近にある船舶その他の物件との距離をレーダーで測定することにより視界の状態を正確に把握(はあく)することができる場合があること。
 
第三九条(注意等を怠ることについての責任)この法律の規定は、適切な航法で運航し、灯火若しくは形象物を表示し、若しくは信号を行うこと又は船員の常務として若しくはその時の特殊な状況により必要とされる注意をすることを怠ることによつて生じた結果について、船舶、船舶所有者、船長又は海員の責任を免除するものではない。
 
2 COLREG規則6(安全な速力−同法第6条関連)
 速力の決定には他の要素を活用すべきで、基本的にはAIS情報の利用が速力の決定にそれほど大きな影響は与えるべきでないが、レーダー情報に関する記述と同様、AISの効果的な使用法につき付言すべきであろう。
 
3 COLREG規則7(衝突のおそれ−同法第7条関連)
 不十分なレーダー情報等に基づく判断に関し、AIS情報の活用はここでいう不十分な情報となる可能性が低いことから、船員の常務として必要とされる注意と考えられる。よって、不十分なレーダー情報であってもAIS情報が必要な付加情報を与えることも考えられる。
 
第七条(衝突のおそれ)船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断するため、その時の状況に適したすべての手段を用いなければならない。
2 レーダーを使用している船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあることを早期に知るための長距離レーダーレンジによる走査、探知した物件のレーダープロッティングその他の系統的な観察等を行うことにより、当該レーダーを適切に用いなければならない。
3 船舶は、不十分なレーダー情報その他の不十分な情報に基づいて他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断してはならない。
4 船舶は、接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められない場合は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならず、また、接近してくる他の船舶のコンパス方位に明確な変化が認められる場合においても、大型船舶若しくはえい航作業に従事している船舶に接近し、又は近距離で他の船舶に接近するときは、これと衝突するおそれがあり得ることを考慮しなければならない。
5 船舶は、他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを確かめることができない場合は、これと衝突するおそれがあると判断しなければならない。
 
4 COLREG19規則(視界制限状態における船舶の航法−同法19条関連)
 規則19(d)(同第19条第4項及び5項関連)を含め第19条は必要な改正がなされる必要が将来出てくるであろう。
 AISは衝突のおそれを判断するための情報を提供する手段の一つとして、レーダーに比べ目標を早く捕捉できるばかりでなく、一般に目標の針路・速力の変化をより早く認識できる。その意味で、ある状況ではAISを実質的に継続して監視する必要がでてこよう。その意味からレーダー映像とAIS情報が重畳されることは大変意味がある。
 
第三節 視界制限状態における船舶の航法
 
第一九条 この条の規定は、視界制限状態にある水域又はその付近を航行している船舶(互いに他の船舶の視野の内にあるものを除く。)について適用する。
2 動力船は、視界制限状態においては、機関を直ちに操作することができるようにしておかなければならない。
3 船舶は、第一節の規定による措置を講ずる場合は、その時の状況及び視界制限状態を十分に考慮しなければならない。
4 他の船舶の存在をレーダーのみにより探知した船舶は、当該他の船舶に著しく接近することとなるかどうか又は当該他の船舶と衝突するおそれがあるかどうかを判断しなければならず、また、他の船舶に著しく接近することとなり、又は他の船舶と衝突するおそれがあると判断した場合は、十分に余裕のある時期にこれらの事態を避けるための動作をとらなければならない。
5 前項の規定による動作をとる船舶は、やむを得ない場合を除き、次に掲げる針路の変更を行つてはならない。
一 他の船舶が自船の正横より前方にある場合(当該他の船舶が自船に追い越される船舶である場合を除く。)において、針路を左に転じること。
二 自船の正横又は正横より後方にある他の船舶の方向に針路を転じること。
6 船舶は、他の船舶と衝突するおそれがないと判断した場合を除き、他の船舶が行う第三十五条の規定による音響による信号を自船の正横より前方に聞いた場合又は自船の正横より前方にある他の船舶と著しく接近することを避けることができない場合は、その速力を針路を保つことができる最小限度の速力に減じなければならず、また、必要に応じて停止しなければならない。この場合において、船舶は、衝突の危険がなくなるまでは、十分に注意して航行しなければならない。
 
5 監視義務COLREG8・16・17規則(衝突を避けるための動作、避航船の航法、保持船の航法・同法第8・16・17条関連)
 AISは船舶の動静監視の支援に重要な役割を有し、右は衝突の危険をより早く判断する支援のみならず、結果的に他の船がどのような行動を取っているかを監視することができる。そのことは、保持船にとって、他の船が規則8、規則16の定めに従った動作をとっているか否かを確認する助けとなる。
 規則17に基づき、保持船は自ら衝突を避けるための動作を取る必要があるが、この場合、(1)何時、どのようにして、他の船が衝突を避けるための動作を取っていないことが明らかになるのか?、(2)避航船の動作のみによって衝突を避けることが出来るか否かについて、保持船の当直士として、どのようにして判断できるのか?というジレンマがつきまとう。
 AISはこのジレンマの解決に役立つはずである。AISを通じて得られる動的情報により、他の船が針路・速力を変更した場合に、航海士はレーダーに比べ、より正確な情報をより早く入手することができ、また静的情報からも他の船の運動性能を推測するなど、航海士にとって右判断に必要な有益な情報を得ることが出来る。
 
第八条(衝突を避けるための動作)船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、できる限り、十分に余裕のある時期に、船舶の運用上の適切な慣行に従つてためらわずにその動作をとらなければならない。
2 船舶は、他の船舶との衝突を避けるための針路又は速力の変更を行う場合は、できる限り、その変更を他の船舶が容易に認めることができるように大幅に行わなければならない。
3 船舶は、広い水域において針路の変更を行う場合においては、それにより新たに他の船舶に著しく接近することとならず、かつ、それが適切か時期に大幅に行われる限り、針路のみの変更が他の船舶に著しく接近することを避けるための最も有効な動作となる場合があることを考慮しなければならない。
4 船舶は、他の船舶との衝突を避けるための動作をとる場合は、他の船舶との間に安全な距離を保つて通過することができるようにその動作をとらなければならない。この場合において、船舶は、その動作の効果を当該他の船舶が通過して十分に遠ざかるまで慎重に確かめなければならない。
5 船舶は、周囲の状況を判断するため、又は他の船舶との衝突を避けるために必要な場合は、速力を減じ、又は機関の運転を止め、若しくは機関を後進にかけることにより停止しなければならない。
 
第一六条(避航船)この法律の規定により他の船舶の進路を避けなければならない船舶(次条において「避航船」という。)は、当該他の船舶から十分に遠ざかるため、できる限り早期に、かつ、大幅に動作をとらなければならない。
第一七条(保持船)この法律の規定により二隻の船舶のうち一隻の船舶が他の船舶の進路を避けなければならない場合は、当該他の船舶は、その針路及び速力を保たなければならない。
2 前項の規定により針路及び速力を保たなければならない船舶(以下この条において「保持船」という。)は、避航船がこの法律の規定に基づく適切な動作をとつていないことが明らかになつた場合は、同項の規定にかかわらず、直ちに避航船との衝突を避けるための動作をとることができる。この場合において、これらの船舶について第十五条第一項の規定の適用があるときは、保持船は、やむを得ない場合を除き、針路を左に転じてはならない。
3 保持船は、避航船と間近に接近したため、当該避航船の動作のみでは避航船との衝突を避けることができないと認める場合は、第一項の規定にかかわらず、衝突を避けるための最善の協力動作をとらなければならない。
 
6 VHFの使用
 衝突予防のためにVHFを使用することの是非は長年議論されていることである。VHFの活用を支持する者は、AISを活用することにより通信を行いたい船の認識の過誤の可能性を低下できるとするが、他方で、AISは、言語、アクセント、文化などの違いにかかわらず、純粋に衝突の危険を判断し、衝突を避けるための動作が取られているかどうかを判断するために使用されるべきであり、相手船と連絡する時間があるならば、相手船の動静把握に活用すべきと主張する。
 米国の特定の海域ではVHFによる情報交換が義務となっているところも多く見かけるが、「VHFで相互に交信・了解すればCOLREG違反の航行が是認される」というものではないことは当然であり、IMOもその点を強調している。AISを衝突予防のための手段として積極的に活用したいのであれば、VHFによるCOLREG違反の航法を厳しく戒める必要がある。
 
ロングレンジAIS
(IALA AIS委員会ワード委員長)
 
1 IMOの立場
 MSC76において、インマルサット−Cポーリングをロングレンジ・トラッキングのためのシステムと認識、COMSARでは機能要件案を作成、コレスポンデンス・グループで検討中。
 
2 IALAの主張
(1)システムは使用される技術において自由であるべき。また、データー内容及びフォーマットは標準化されるべき。更に、搭載義務がなされているAIS機器を活用し新たな機器の搭載や乗組員の負担を軽減すべき、と主張。
(2)ロングレンジ・トラッキングにより得られる情報に関し、現在提案されているID、位置、針路・速力、時間情報のみならず、仕向地、ETA、危険物搭載か否か、及びセキュリティ関連情報が適切な間隔で供給されることが不可欠。
(3)AISはデーターを収集し情報を生成するものである。AIS及びロングレンジAISはそれぞれ単独ではこれらの情報を適切なタイミングで提供することは不可能であり、AISと長距離通信システム、例えばインマルサット−Cシステムとを組み合わせることで有効となる。AISとロングレンジ用通信装置との結合には、ソフトウェアと物理的な結合のみが必要なだけで、これにより当局は、乗組員に新たな作業を強いることなくAISで利用可能な情報を自動的に入手することができる。
 
船舶交通管理(Vessel Traffic Management: VTM)とパイロット業務
(英国航海学会)
 
1 現状
 船の大型化と船員のサブスタンダード化の傾向を受け、船は運航の安全を確保するため、航路の安全に関すること、気象・海象情報などに関する情報入手に関し、これまで以上に陸上からの支援を必要としている。
 
2 対策
 このため、船舶交通管理の改善が必要であり、ボイスによる無線通信を低減し電子・電気通信を増加させため、ロングレンジAISの活用によるETAの早期入手及び監視を実施するとともに、陸上側のネットワークを強化し情報の共有化を図りVTMの機能を向上させる必要がある。
 
3 将来構想
 今後、船舶交通管理を考える上で、VTSは海域(スペース)を管理し、パイロットは船舶を管理するものであり、その両者の間にAISがあるという考え方に立ち、双方がAISで得られる情報を同じ土台で理解するために「訓練」が不可欠である。更に航路管制から港内管制に至るまで系統立てた継ぎ目のないサービスの提供と手続きが確保される必要がある。
 
AISとセキュリティ
 
1 USCGの取組み(米国コーストガード・ハイ水路管理局長)
(1)セキュリティヘの対応
 米国におけるセキュリティへの対応は、第一段階として「情報収集(Awareness)」、第二段階は「警戒(Precaution)」、第三段階として「防御(Protection)」、最後に「対応(Response)」という段階に区別した上で、右をセキュリティに関わる者全てが共通の理解として持ち合わせ、自分がなすべきことを責任をもって実施することが必要であるとの考え方の上に成り立っている。
(2)「ドメインアウェアネス(Domain Awareness)」
 海上における情報収集についは、「ドメインアウェアネス(Domain Awareness)」という考え方に基づき、米国沿岸を航行する船舶及び米国の港湾に入港しようとする船舶の動静を把握するため、入港船の事前通報入手の強化やCISの実施などに加え、AISによる船舶動静の常時監視を行うこととしている。AISの範囲外、つまりVHF以遠についてはロングレンジトラッキングが不可欠であり、次回IMO会議にはロングトラッキングの実施に関するペーパーを提出する。
(3)AIS情報の共有
 船舶の船籍、乗組員、積荷などによって同じAIS情報でも共有する際の取扱いが異なる。その中で、国土安全に関わる重要な情報に関しては、秘密情報としてFBIや税関といった関係機関との間でのみ情報交換するものとしている。
 
2 9.11とAIS(英国国際海事セキュリティ会社(IMS))
(1)セキュリティの見地からAISの利点
イ 沖合い最大40海里前(入港前2-3時間前)から入港船が危険物を搭載しているか否かを含む詳細情報が入手可能。
ロ セキュリティ担当が事前チェックする時間的余裕が得られる。
ハ 同時に法令の励行のために必要な時間的余裕が得られる。
 つまり、情報をいち早く入手することでより良いセキュリティ・コントロールが可能となる。
(2)AISの欠点
イ 船舶の位置、針路、速力、積荷等の詳細な情報は、犯罪者、海賊、テロリスト達にも同様に役に立つ。
ロ ターゲットとしては、タンカー、HNS搭載船、高価値貨物搭載コンテナ船、客船、VIP乗船中のヨットなどが考えられる。
ハ 情報入手の手段としては、AIS基地局を保有し独自にAIS情報を入手する、或いは港湾関係者や情報管理者から情報を得るといったことが考えられる。
(3)結論
 AISの利点はセキュリティ・リスクに勝るものであるため、ISPSコードの完全な履行により警戒を怠らないことが重要。







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更新日: 2019年8月10日

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