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海事の国際的動向に関する調査研究事業報告書(海上安全) 別冊 AISの国際的動向に関する調査研究

 事業名 海事の国際的動向に関する調査研究
 団体名 日本海難防止協会 注目度注目度5


別添7
 
AISに対する船主の見解
国際海運会議所
海事アドバイザー Peter Hinchliffe
 
【要旨】
 海上セキュリティの確保のお題目でAIS導入が前倒しされているが、右早急な導入はAIS機器の船舶への搭載、機能の十分な活用、関連機器の検査と認証、更には現実的な運用計画の面で実質的な問題を生じている。
 限られた海域のみでの実証実験と搭載義務を平行して行なったことにより、早急に解決すべき新たな問題を生じている。
 AISの目的に関しても、AISがVTS業務支援、衝突予防機能、航行援助及び海上セキュリティの確保といった明らかに異なる活用を意図していることから理解しづらい。
 更に、AISは全世界的なシステムであるから、AISデーターの受信、解析及びそれに基づく行動に関し沿岸国が責任を持つ必要があることは明らかである。
 
【ポイント】
1 AISの開発
 短期間で搭載を終了するため、AISシステムを充実するための開発の時間が限られ、ひいてはAISが持つポテンシャルを十分に引き出す余裕がないなどの影響を与える。
 
2 陸上施設の整備
 航行援助システム(VTMS)のための陸上局整備が不可欠であり、船−陸間のAISデーターの受信、処理なくして、船−船間での活用を超えたAISの発展はありえない。
 
3 自動化・省力化の確保
 強制船舶位置通報システムにおいて、AISを通じて通報した場合、陸上局から通報船あて通報受領を自動的に回答するシステム・手続きの確立や、全世界で周波数の切り替えなしでAISを活用できるよう必要な手当てを今後早急に行う必要がある。
 
4 COLREGの改正の必要性
(1)規則6(b)安全な速力
 同項はレーダーを使用している船舶が安全な速力の決定にあたって考慮すべき事項を掲げているが、AISについても同様の規定が必要か否か考慮すべき。
(2)規則7(c)衝突のおそれ
 同項は不充分なレーダー情報により衝突のおそれを判断してはならない旨規定しているが、AIS情報につても同様の規定が必要となるかもしれない。
(3)規則19(d)視界制限状況における船舶の航法
 同項は、レーダーのみにより探知した船舶についての航法を規定しているが、同様にAISでのみ探知した船舶について別途、規定する必要があることは明かである。
(4)IMOは衝突予防のためのAISの使用に言及した「AISの運用に関するガイドライン」を採択し、IALAも同様にガイドラインを出しているが、一定期間AISを利用した後、それぞれのガイドラインの見直しが行なわれよう。その時になって、現場での実務的な経験に基づき、技術面の進展も考慮しつつ、COLREGの包括的な見直しを検討することが適当である。
 
5 ディスプレイについて
(1)条約では、船舶に搭載されるAIS機器は小型表示装置を備えることになっているが、実際的には通常サイズの個別の表示機が必要で、右備付けのため船橋内に新たにスペースを確保する必要がある。それにより監視すべき情報が増え船橋内の当直士官の作業量が増大する。反対にこれが小型表示機の場合には希望する情報を得るため画面を上下する必要があり時間を要する。
(2)更に重要な点は、AISで得られる情報と、レーダー及び目視で得られる情報との相関関係を頭の中で整理する必要があるという点である。
(3)また、AISによって相手のIDが容易にわかることから、逆に今まで以上にVHFを使ってしまうという点。
(4)これらの点を解消するためにはレーダー情報、AIS情報を同時に表示する統合表示システムが必要であるが、多くの船がそれを搭載するには相当の期間が必要であり、AISの早期導入は結果的にその種統合表示装置の導入を遅れさせ、小型表示装置のみが当面使用されるであろう。
(5)船員にあっては、特にAISを衝突予防機能として使用する際、CPAとTCPAの精度は相手船が発信する情報の精度に依存することを十分心にとめておく必要がある。
 
6 クラスB・AIS
 非対象船、特にプレジャーボートを対象とした安価で低機能型のAIS機器が間もなく開発され市場に出回るであろうが、右はAISディスプレー上の画面の劣化を惹起し、誤情報に基づき衝突予防措置を取る可能性が懸念される。
 
7 航行援助としての活用
 ブイの位置、灯質などの基礎情報に加え、リアルタイムの風向・風速、潮流情報がAISを通じて提供されること自体は有益であるが、海図、レーダー情報と共に同一の画面で表示されてはじめて価値がある。
 
8 海上テロ行為に対する武器としてのAISの活用
(1)現状においては、AIS情報の収集、解析、活用について沿岸国の義務規定はない。AISをテロ対策の一環として活用するためには、施設・機器の整備、要員の配置・訓練、対処計画の立案等体制の整備が必要であるが、沿岸国がそれらに対する投資を義務づけられていない限りAISの海上セキュリティヘの貢献は難しい。
(2)テロリストによる悪用
 テロリストが小型のAIS機器を持てば、獲物となる船舶の静的・動的情報を確実に手に入れることができる。その意味から、船長が船舶の安全、または乗員・積荷の安全が損なわれると考えた場合にはAISの作動を止めることができるという根底のコンセプトを固持すべきである。
 
9 まとめ
 船員に対してはAISを航行援助のための機器として使用し、見張りをしない口実に使うなと指導したい。同時に、沿岸国に対しては、世界の海上輸送の自然な流れを損なうことなく、効率的かつ更に安全な運航管理体制の中で、海上セキュリティの増進を図るため、AIS情報を収集し活用することを期待する。
 
<参考>
 
AISコントローラー(SAAB製:上部)とコンピューター表示機
 
AISコントローラー(JRC製)
 
コンピューター表示例1: 行き会い船(左)と自船(南下中)
行き会い船針路114.7度、速力13.8ノットで左転しているのがわかる。
 
コンピューター表示例2: 特定の船の詳細な情報
選択した船(中央下四角の括弧)の船が船名MALMOLINKで北向け
速力16.1ノットで航走しているのがわかる。
 
レーダー映像とAIS情報の重畳
自船(中央)から約60度方向の障害物の裏側に、
船首を南東に向けた船がいることがわかる。
 
ブイに装備するAISトランスポンダー(ゼニライトブイ製)
上部白円筒型の物は、VHF・GPSアンテナ。下の箱とともにブイに取付けられ、
ブイ灯質情報の他に、左2つの入力口から、海潮流、風向、温度などのデーターを
入力すればリアルタイムの情報をAISで発信できる。







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