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(2)避難水域(議題8関連)
 議論の主要点は以下の通り。
(1)各国提出ペーパーについての議論と次回NAV49での検討項目
 まず事務局側より、77/8及び77/8/1についての説明があり、77/8/1のパラ3が承認された。また、LEG86の提案である、financial securityとcompensationについて早急にLEGで検討すべき旨総会決議に含めることについても承認された。
 続いてIUMIより提案の説明(77/8/2)と、英国からそれについての(77/8/11)説明がなされた。この中でガイドラインを条約化すべしとのIUMIの提案は時期尚早ということで否定された。また、77/8/11は次回のNAV49で検討されることとなった。
 次に、スペインからの提案である77/8/5〜8/7が審議された。77/8/5(リスク評価のガイドライン)については、ガイドラインの表題の変更は根本に関わる問題であり認められないが、その他の変更提案は、次回のNAV49で検討されることとなった。8/6(船長等に求められる行動についてのガイドライン)と8/7(ガイドライン本体)については、ギリシャ、バハマ、ニュージーランド、マルタ、マーシャル、イタリア、オーストラリア等から、Safe Shipの概念の導入、避難場所まで安全に移動出来る保証を船長に求めること、無制限の補償の担保を求めることは実質的に避難船を締め出すことになりかねないとの反対意見が出される一方、アルゼンチン、メキシコ、ホンジュラスから議論のたたき台としてNAVで検討すべきとの意見が出された。またサイプラスからは8/6についての提案は有益な提案がなされており、項目によってNAV49で検討すべきとの意見が出された。これを踏まえ、議長から大多数の国がスペイン提案について反対であるとの判断を示し、8/6及び8/7はすべて却下されたとの総括意見が出された。これに対しスペインをはじめとする国から異議が唱えられた。
 一旦休憩に入ったが、休憩の後、議長から修正提案がなされた。8/6のうち、2.2.1、2.3.1及び2.6.1の修正意見については、NAV49で議論されることとなった。その他の議論も踏まえ、今回のMSC77の結論として、次回NAV49での検討対象となる事項を事務局で整理することとなった。なお、ドラフティングに関する事項については、直接NAV49にペーパーを提出することが認められた。
(2)法的責任と補償について
 避難船を受け入れることに伴う各種被害に対する法的責任と補償については、LEGで検討されることとされた。今回議論されたガイドラインは技術面のガイドラインであり、それを明確にするため、「本ガイドラインには避難場所の提供又は拒否の決定に伴う損害に対する法的責任と補償は取り扱わない。」ことを明記することとなった(MSC77/2/1パラ13参照)。
(3)MASについて
 フランスの、MASの機能はMRCCが担当すべきと提案に対し、わが国からは、その最終判断は各国に委ねる必要があり、NAV47等で慎重に検討すべき必要がある旨主張し、オーストラリア等の同様の意見を表明した。議長は次回NAV49で検討すべき旨総括した。
(4)今後の進め方
 今後の進め方については、次回のNAV49でガイドライン案が審議され、その結果が直接秋の第23回IMO総会に諮られることで承認された。
 また、避難場所については、ガイドラインの作成後の経験を踏まえてガイドラインの更なる検討を行う必要があるので、次回のMSCの議題とはしないこととなった。
(3)COMSAR7からの報告(議題10関連)
(1)COMSAR7からの報告
 事務局よりMSC77/10に基づき本年1月に開催されたCOMSAR7の結果が報告された。特筆すべき事項は以下の通り。その他は特段のコメントも無く同意された。
イ 緊急医療キット/バッグの使用と緊急時のそれの使用の評価に関する義務と責任の指針のMSC/Circ.案の承認
 UKより本件についての懸念が述べられ、スウェーデンはそれを受けて、本サーキュラー案には専門家の意見が必要とし、次回COMSAR8での本件についての検討に専門家の参集を呼びかけて検討・完成すべき旨提案し、ICSがこれを支持をした。プレナリーはこの提案に合意した。
ロ IAMSARマニュアルの改正提案の採択と関連したMSC/Circ.案の承認
 ギリシャより本改正案の3.3.4項にRCCが無い場合の取扱いを付け加えることの提案があった。これを受けてスウェーデンが具体案を発言し、トルコが支持した。プレナリーはこの提案に賛成し、それに沿って修文した上、同サーキュラ案を承認した。
ハ AISの無線局予備電源への接続に関する独、米提案の検討。NAV49、COMSAR8での検討の了承
 本件に関し、英国よりMSC77/10/5(英&独)に基づきAISを無線局の補助電源(バッテリー等)に接続するというSOLAS IV/13.2規則の改正案の説明があった。
 英国から、COMSAR小委員会で検討すべきとの発言があり、日本はこれを支持し、またSOLAS IV章の改訂であることから、NAV小委員会での検討は要しない旨発言した。同様に蘭、シンガポール、ロシア、中国、独等がCOMSAR小委員会で検討することを支持したところ、議長は、COMSAR8で技術的な検討の後に次回MSC78で本改定案の承認する旨提案し、プレナリーはこれに合意した。
ニ SOLAS船上の無線設備に関するGMDSS要件の調和のCOMSAR./Circ.案の承認
 独より衛星EPIRBの定期的点検及び検査について、本サーキュラー案の「4.10.5項 all EPIRB」及び「4.10項 float free EPIRB」の用語の使い方について、誤解を招く懸念があるとの指摘があり、独と事務局で修正することとした上で、Circ.を出すこととなった。
ホ SOLAS及びSAR条約改正に伴うガイドライン作成の同意
 事務局により本ガイドライン案についてCOMSAR8で検討することの提案(MSC77/10/3)があり、理事会を経て、第23回総会へ報告される予定である旨同意された。
へ インマルサットA業務の停止のMSC/Circ.案の承認
 インマルサットAの2007年末サービス停止に関する回章案が承認された。
(2)Combined Antarctic Naval Patrol
 チリよりMSC77/10/1に基づき、南極海域における科学、商業、観光にかかる海洋活動が増加してきていることから、Antarctic海域における海上交通の安全及び環境保護の為、1998年を皮切りにチリ及びアルゼンチンによる夏季合同パトロールを毎年実施していることの説明があり、ノートされた。
(3)将来のGMDSS移動衛星業務(MSS)の新規事業者に対する政府間監督の可能性
 デンマークによりMSC77/10/4に基づき本件について、IMSOへの提案内容を紹介するとともに、インマルサット以外の将来のGMDSS新規事業者もIMSOの監督対象に含めるよう、委員会からIMSOに要請することの提案があった。我が国を始め、マルタ、英国、ロシア、ギリシャ、豪、シンガポール、リベリア、マーシャルアイランド、フランス、ポーランド、スウェーデン、サイプラス、ノルウェー、蘭、香港、伊、CIRM等が原則的に本提案を支持した。また、我が国及びマーシャルアイランドは、インマルサット社だけでなくその他の新しい事業者の可能性も考えて、IMSO及びIMO間の検討を継続するよう発言し、サイプラス、英国、伊は、本件に関するIMOの方針を固めておく必要があると発言した。
 議長は、事務局にIMOとIMSO間で本件について調整することを指示した。
(4)海上での救助者に関するノルウェー提案(MSC77/10/2)
 ノルウェーは、海で救助された者について、できるだけ早期に安全な場所への引き渡しを実施するためには、本年1月に開催されたCOMSAR7の検討結果に基づくSOLAS条約及びSAR条約改正案では難民や不法移民のような場合に対応するには不十分であり、いかなる場合にも船長が被救助者を適当な国の安全な場所に搬送することができるようSafeguard規定を追加する必要性を強調し、提案文書にはその懸念と可能な解決策を記述している旨、説明した。しかしながら、ノルウェーは同国提案のSafeguard規定の追加に固執するものではなく、同規定と同様の効果が得られるのであれば同国の主張を満足するものとして、MSC77期間中にスウェーデンから提示された本件に係る第2回非公式会合の結果であるSOLAS条約改正案33.1bis及びSAR条約改正案3.1.9の解釈案が同条約改正決議案に盛り込まれるのであれば、これを支持する旨、表明した。
(5)UNHCRによる説明(MSC77/10/7)
 UNHCRは、人道的観点から海難救助の際に尊重されるべき諸原則を説明した。
(6)第2回非公式会合の結果(MSC77/WP4)
イ 6月3日、第2回非公式会合主催者であるスウェーデン海事局Mr. Urban Hallbergから、本年4月にスウェーデン国ノーチョッピング市で開催した同会合の結果についてMSC77/WP4を提出のうえ説明した。MSC77/WP4では、SOLAS条約改正案33.1bis及びSAR条約改正案3.1.9の解釈案として「すべての事案において、合理的な時間の範囲内で安全な場所が確実に提供されるべきであり、安全な場所を提供する、または、安全な場所が提供されるべき責任は、救助事案が発生したSAR区域を管轄する締約国にある」旨説明した。本解釈案は、今次会合中にSOLAS条約及びSAR条約改正に係る決議案に盛り込み、検討を行う必要性を強調した。
ロ マルタは、スウェーデン提出の第2回非公式会合結果に係るMSC77/WP4は正式な文書提出期限を越えて今次会合初日付け(5月28日)で提示されたものであり、今次会合での検討に対し懸念を表明した。
ハ マルタの主張に対し、議長は5月28日、第2回非公式会合結果提出に関しプレナリーにおいて確認し、どの国等からも異論がなかったことから手続き的には問題のない旨説明し、本件は極めて重要な課題であることから、進捗を図る必要性について強調した。また、SOLAS条約及びSAR条約改正案について今次会合で承認されれば決議案とともに回章手続きに入り、次回会合(MSC78)までに各国等十分な検討期間があることから、所要の意見等を提出可能である旨、説明した。さらに、議長は、SOLAS条約及びSAR条約改正案に係る決議案を準備の上、今次会合中に検討することを提案、オーストラリア、フランス、英国等の支持を受け、6月4日に審議する旨、総括した。
(7)SOLAS条約及びSAR条約改正に係るMSC決議案(MSC77/WP.10)
イ 6月4日、右(3)(イ)及び(ロ)を受け、オーストラリア、フランス、ノルウェー、スウェーデン、英国及び米国の共同提案の形式で、SOLAS条約及びSAR条約改正に係るMSC決議案が提出され、スウェーデンMr. Urban Hallbergから概要説明が行われた。MSC77/WP.10中のANNEX1はSAR条約改正を、同ANNEX2にSOLAS条約改正を記述し、両ANNEXのカバーノート中に、右(3)(イ)に係るSOLAS条約改正案33.1bis及びSAR条約改正案改正案3.1.9の解釈案が引用された。
ロ マルタは、MSC77/WP.10の提案について、総論的に反対はしないものの、改めてSOLAS条約改正案33.1bis及びSAR条約改正案3.1.9の解釈案の今次会合への提出時期について懸念を表明し、今後、両条約の改正決議案については国内の関係当局間で検討を行うため、その立場を留保する旨表明した。
ハ 我が国からは、MSC77/WP.10中のSOLAS条約及びSAR条約改正に係る形式が標準的様式に準拠していない旨指摘した。これに対し、議長は、両条約改正に係る文書回章に際し、事務局に標準的様式による記述に改めるよう指示した。
ニ ICSは具体的な船長の責務等に係る基準について、また、シンガポールは、SOLAS条約改正案33.1bis及びSAR条約改正案3.1.9の具体的運用について明確化を求めた。これに対し、スウェーデンMr. Urban Hallberg(COMSAR副議長)から、これらについては、今後、COMSAR8においてガイドラインを検討する意向を表明した。
ホ 議長は、今次会合で本件に係るSOLAS条約及びSAR条約改正決議案について若干のエディトリアルな修正を加えたうえで同意(approve)し、次回会合(MSC78)において採択すべく、関係文書を回章する旨、総括した。
(8)ガイドライン骨子(MSC77/10/8)
 米国から、MSC77/10/8によりSOLAS条約改正案33.1bis及びSAR条約改正案3.1.9に規定するガイドラインの骨子が提示された。今後、米国をリード国としてインターセッショナルのコレスポンデンスグループを設置し、所要の検討を行い、COMSAR8において検討を実施し、MSC78で両条約改正案とともに採択する方向性が示され、特段の異論はなく了承された。
(9)進捗状況に係る事務局長から第23回総会への報告案(MSC77/10/3)
 事務局から説明が行われ、委員会において異論が提示されなかったことから、理事会を経て、第23回総会へ報告される予定である。
(10)我が国コメント
 我が国は、本件に係る一般的コメントとして、「本件は国際的な人権問題に深く関与するものであることから、他の国連機関における議論を踏まえて検討すべき」旨主張するともに、UNHCRの説明に対しては、「UNHCR説明の諸原則が人道的観点から海難救助の際に尊重されることには理解を示すものの、庇護希求者に一律に一時的庇護を認めることに関しては、各国の主権としての出入国管理政策に係る問題がある」旨の懸念を表明した。
 
(4)その他(議題25関連)
 イスタンブール海峡の航行関係(MSC77/25/3:露)
 トルコが設定している同海峡航行の制御のために航行に大きな遅延が生じていることに鑑み、露がMSCを通してトルコに対し、スムーズな航行の確保と国際航行の慣行にあった航行制御にするよう要請した。
 これに対してトルコは、最近同海峡に導入したVTSシステム及びその他の措置が安全航行に有効であること、危険物及びオイルを搭載した船舶の同海峡通行量が膨大に増加していることに鑑み、現在導入している航行制御を保持する旨表明した。
 希は露を支持し、同海峡の自由航行を確保するよう要請した。アイスランドは露を支持しつつ、関係国が本件を協議するよう提案した。ウクライナは、露を支持しつつ、トルコに対して同海峡航行の簡素化を要請した。伊は、同国船舶の同海峡航行に大きな遅延が生じた例を挙げて同海峡の航行の簡素化の必要性を表明しつつ、新たなVTSシステムがそれを補助することを期待する旨述べた。
 プレナリーは、トルコのVTS導入に留意しこれが航行の安全性の増加及び遅延の解消に寄与するものと期待し、トルコ及び関係国に一層の協調を呼びかけた。







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