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第3章 観光振興に向けた地場産業資源等の再生・育成の展開方策
1 地場産業資源等の再生・育成に向けた課題整理
 各種調査結果をふまえて、地場産業資源等を活かした施策展開に向けての主要課題を5点に集約する。
 
(1)宮古の暮らしを支える生活文化の知恵とわざを継承していくしくみの必要性
 「石積」「サバニ」「野草、薬草」「宮古凧」「まぐ」「民間伝承」などの宮古の民俗、生活文化に根ざした知恵や技を世代継承し、地域で共有していくしくみが必要である。
 
(2)地域の課題を地域で解決する場としくみの必要性
 「宮古らしい空間の保護・再生・育成」、「宮古資源を活用した特産品開発」に加えて、「地域社会の身近な課題(海岸のごみや交通標識のわかりにくさ)」など、観光振興と健康なまちづくりの地域課題について、住民、事業者、行政が情報を共有し、共通認識を持ちつつ、それぞれの役割分担で課題解決していく場としくみが必要である。
 
(3)観光客と手わざを結ぶ情報交流・マーケティング拠点の必要性
 宮古の観光情報や歴史文化、食、伝統芸能、島の人との交流など宮古の魅力を五感で楽しめる場、健康のまちづくりや観光まちづくりに関わる市民活動の学びと実践の場、地場産品の商品開発、販売の場としての機能を持つ、地域と観光客を結ぶ拠点が必要である。
 
(4)地域資源を魅力的な活用につなげる人材の発掘・育成の必要性
 沖縄他地域と比較しても、旅客単価は安く、かつ地場産業が少ない現状が浮き彫りになった。一方で「地のもの」「島の人との交流」への観光客のニーズは高く、そのミスマッチが経済的な機会損失を招いている。魅力的な地域資源活用の実践を担うためには、多彩な人材を発掘し、その活躍の場をつくることが必要である。
 
(5)来島者ニーズに対応した新たな手わざ観光の取り組みの必要性
 宮古観光に求められている「滞在」「保養」「体験・交流」型観光に対応し、魅力を倍増し、「美しい海・自然」を加えた、新たな手わざ観光メニューの充実が必要である。その企画や実施を具体化するためには、活動のコア(核)となる組織や場所(場面)、手わざをもって参画する人材が一体的に機能する必要がある。
 
 本調査における多様な検討のねらいは、「宮古に息づく手わざの再評価と、これを観光資源として、また、“健康なまち”(人もまちも自然もともに健康で共生できるまち)を実現するための手法としての活用を展望すること」である。
 市民会議や研究委員会の場での手わざをめぐる諸検討によって、「宮古のローカルに特化したものこそ、グローバル化した社会で輝きを持つ」という認識が参加者に共有されるとともに、実践にむけての「市民の強い協働のニーズ」が鮮明にされた。
 そこで、施策展開に際しての基本的な考え方を以下の3点に整理した。
 
(1)“手わざ”に着目したまちづくり
 地域で育まれてきた宮古の“手わざ”は、その多くが産業というより“生業(なりわい)”であり“くらしの知恵”である。島の自然とともにあって、日々を楽しく心豊かに生きる宮古の生活そのものを映し出してきたものともいえよう。
 こうした宮古の暮らしを支える手わざが息づくまちこそが、観光振興や本市が目指す“健康なまち”へとつながり、またその相互連携を深めることにより、宮古の地域個性(ローカリティー)や地域の活力づくりに寄与し、市民の自信や誇り意識を持てるまちづくりにつながると考えられる。
 
 
 
(2)“市民との協働”によるまちづくり
 今日の社会的状況は、市民や地域コミュニティが事業者や行政などと相互に連携・役割分担しあって、自ら地域の諸課題に取り組んでいく自律的なまちづくりの「協働」が期待されている。
 その点、今回の市民会議の中では、市民自らが参画をイメージした数々の具体性のある事業メニューが提起され、市民の強い協働のニーズが確認された。本市には、これら市民からの協働のニーズを真摯に受けとめ、提案の実現化を図ることが求められる。そこで、施策展開の際には、市民との協働に着目することが重要である。
 
(3)発展し継続するストーリー(物語)を持つまちづくり
 宮古に暮らす人々のさまざまな営みのなかで育まれてきた手わざを地域資源として、観光振興や“健康なまち”の実現に向けての取り組みを成功に導くためには、まず市民と行政が地域資源や課題を共有し、その利活用や解決に向けて計画段階から市民が主体的に関わる仕組みと、その計画を実践に移し、活動成果の検証を行い、さらに活動を継続、発展していくストーリーが必要である。
 さらに、ストーリーの構築の考え方として、(1)課題を個別に捉えず、必ず相互に関連づけて考えること、(2)課題を同時並列的なものとしては捉えず、必ず次の段階に展開するストーリーに引き寄せて捉えること、の2点に留意する。
 
 
 上記をふまえ、施策展開に際しては、そこに関わるすべての人々が、宮古の手わざの体験や発見、継承あるいは創造を通じて、地域の歴史・生活文化にふれ、楽しみながら地域の誇り意識を育み、その発展を市民が主体的に担っていくストーリー性を持ったまちづくりの考え方が必要である。
 このような考え方をもとに施策展開していく際のキャッチフレーズを宮古の方言で「うれしい」とか「楽しい」ということを意味する「ぷからす」という言葉をキーワードとして織り込み、以下のように設定する。
 
【キャッチフレーズ】
きらめけ 手わざ!
市民パワーでつくる 平良(ひらら)ぷからすストーリー!
 
 施策展開の基本的な考え方をふまえ、前述の5つの主要課題を計画に展開していく方法としては、市民会議の意見の中からモデルテーマを選定し、それを具現化するイメージを描く(ストーリー化)中から、戦略的な課題を見定め、その発展系として手わざを活用した観光のまちづくりの主要課題に連関させて、全般のテーマへと接近していくものとする。
 なお、市民会議3グループに共通して、具体的で多くの提案が出されたのが「体験観光」であったことから、これをモデルテーマとして以下に展開を示す。
 
図表3−1 施策の展開モデル







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