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神戸空港の需要予測
 
 神戸空港の需要予測については、平成7年度に実施していましたが、昨年の交通政策審議会空港整備部会において新しい需要予測の手法が示されました。この予測手法は、航空や鉄道の交通手段の選択について、所要時間と費用に加え、交通手段の利便性を考慮して行うというものです。神戸市では、この新たな予測手法により、最新の社会経済状況も反映して、需要予測の精査を昨年度実施しました。
〔予測の考え方〕
(1)利便性(便数)の考慮
 例として、神戸から東京へ行く場合、新幹線を利用するケースと、神戸空港または伊丹空港、関西国際空港を利用するケースが想定されますが、これらの交通手段を選択する要素として、それぞれの所要時間と費用に加え、利便性(便数)を反映しました。
(2)空港容量の想定
 羽田空港については、2010年度以降、再拡張の完了を見込むとともに、伊丹空港については現在の発着枠(ジェット便250回/日)で推移するものとし、神戸空港については時間あたり5回程度(60回/日)の発着回数を想定しました。
(3)最新の情報の反映
 予測に用いる社会経済指標等は、現在公表されている最新の政府経済見通しや直近の旅客流動データを使用しました。具体的には、将来経済成長率を年平均1.5%程度に設定しました。
 予測のケーススタディとして、新幹線の所要時間を全て「のぞみ」の最速時間に置き換え、将来経済成長率を年平均1.5%程度から一律0.5%ダウンさせるなど、航空に最も厳しい内容となる条件についても予測を行いました。
 また、予測手法や前提条件等の予測内容については、学識経験者からなる「神戸空港需要検討会」において慎重に審議していただくとともに、検討会の審議や会議資料を公開し、予測の妥当性及び予測過程の透明性の確保に留意しました。
 今回の予測の結果では、平成7年度予測が年間340万人(開港時)、420万人(平成22年度)であったものが、それぞれ年間319万人、403万人と算定されました。需要予測値は前回の予測に比べ約4〜5%減少したことになりますが、東京、札幌、那覇等の幹線需要も大きく、十分な利用があるものと見込んでいます。
 
神戸空港需要予測値
年度 開港時 平成17年度 平成22年度
今回予測値 319万人 403万人
ケーススタディ 最小値〜最大値 300〜343万人 386〜417万人
発着回数 54回/日 60回/日
前回(H7年度) 340万人 420万人
 
 
周辺地域との交通アクセス
 
 神戸空港は、全国の11空港と結ぶことを想定していますが、空港までのアクセスに優れていることが神戸空港の特長となっています。開港時には、新交通ポートアイランド線が空港ターミナルまで延伸され、都心の三宮と約16分で結ばれる予定です。空港ターミナルには駐車場やリムジンバス乗場を整備するほか、空港島北側には船着場を設置するなど、空港利用者が様々な方法で空港に来ることができるように計画しています。
 また、神戸の都心部と周辺地域とは、JR、阪神、阪急、山陽、神鉄、市営地下鉄等の鉄道で結ばれているほか、阪神高速、山陽、中国、神戸淡路鳴門などの高速道路ネットワークで結ばれており、スムーズに神戸空港にアクセスすることができます。
 
想定路線の発着回数(平成22年度)
 
 
神戸空港の活用に向けて
 
 神戸空港の利用促進及び航空関連・臨空産業の誘致に向けて、昨年4月に兵庫県・神戸市・神戸商工会議所で設置する「神戸空港整備推進協議会」内に官民からなるエアポートセールスチームを設置しています。
 これは、航空や関連産業にノウハウを持ち、人的ネットワークを有する民間の専門家の協力を得て、関連事業の具体化とエアポートセールス活動に取り組むものです。
 セールスチームでは、現在、旅客・貨物の誘致推進、航空・空港関連産業の誘致推進の2つの分野についてプロジェクトチームを設け、エアライン、臨空産業や人流・物流業界などの関連企業を対象に情報提供や企業ニーズの把握を行っています。
 今後は、エアラインの就航に向けた取り組みが重要になると考えており、神戸空港において想定している東京便をはじめ、より多くの路線が就航するように努めてまいります。また、地元においても航空利用者の増大を図る取り組みを行っていくとともに、全国からたくさんの方々が航空機で神戸、兵庫県へ来ていただけるよう幅広いエアポートセルスを展開して行きたいと考えています。
 
■空港島の土地利用計画図
(拡大画面:130KB)
 
 
市民に親しまれる空港に
 
 神戸空港の整備にあたっては、環境にやさしい「エコアップエアポート」として様々な環境保全・創造施策に取り組みますが、あわせて市民に親しまれる空港づくりをめざしています。
 例えば、空港島の護岸は緩やかな石積式とし、自然の磯のような豊かな生態系が育まれる浅場を幅広くつくりますが、これらの一部には階段式護岸を設け、市民が気軽に水辺に親しむことができるような空間を計画しています。また、島の西側には、人工ラグーン(海水池)とそれを取り巻く砂浜・磯浜を整備し、レクリエーション性の高い大規模な公園を計画しています。
 
人工ラグーン図
 
階段式護岸図
 一方、空港の玄関口となる旅客ターミナルビルや貨物ターミナル、駐車場の整備・運営については、昨年12月に兵庫県、神戸市、神戸商工会議所が発起人となり、航空会社2社、地元企業29社を加えた34名を株主として、資本金4億5800万円の「神戸空港ターミナル株式会社」を設立しました。ターミナル会社では、前記のターミナル事業と空港の利用促進活動を2本の柱として事業を進めています。
 今年8月、ターミナル会社では、旅客ターミナルビルの設計・建設・維持管理及び入居者誘致等の一括提案を受ける事業提案競技の募集を行い、12月に事業者を決定する予定となっています。この提案競技では、基本方針として(1)コンパクトな施設と拡張可能性(2)航空需要への柔軟対応性(3)安全性(4)視認性とアメニティ(5)人にやさしい空間作りと清潔性(6)賑わいづくり、の6つのコンセプトを設けるとともに、ターミナルビルと一体的に整備する賑わい施設についても提案を求めており、旅客をはじめ多くの人々が空港を訪れ、楽しんでもらえるような施設をめざしています。
 
 
おわりに
 
 神戸空港は、昭和57年に基本構想を発表して以来、17年の歳月を経て現地着工に至りました。この間、阪神・淡路大震災という不幸に見舞われましたが、神戸市復興計画の目標年次にあたる平成17年度の開港に向けて鋭意事業を進めています。
 神戸空港は、新しい神戸をつくるための都市基盤であるとともに、全国各地と神戸を結ぶ交流窓口となるものです。空港の開港によって、神戸は海・空・陸の総合交通拠点となり、人・物・情報そして文化が交流する新たな交流窓口が誕生します。
 より多くの方々に親しまれ、快適な時間を過ごしていただくために、今後とも、様々なご提案をいただきながら、ユーザーフレンドリーな空港づくりをめざしてまいります。







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