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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2000/05/23 世界週報
なかなかうまくは運ばない陸海空軍の統合運用
江畑 謙介
英ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー特派員
RMAをもってすれば統合可能・・・?
 現在、米軍が熱心に進めている改革の一つにRMAがある。「リボリューション・イン・ミリタリー・アフェアーズ(軍事における革命)」の略で、一九九〇年代に入って始まった「革命」とも形容できる情報技術(IT)の発達を活用するなら、戦場のあらゆる状況をリアルタイムで把握でき、遠方から精密誘導兵器を投入することにより、極めて短時間で味方の犠牲も少なく勝利を収められるだろうという考え方である。
 ここで注意せねばならないのは、前置詞が「イン」であり、「オブ」ではない、つまり「軍事の革命」ではないという点である。要するに武力の破壊力をもって相手の意図をくじくという軍事の本質に変わりはなく、そのやり方が「革命的」になるというものである。簡単に言えば、極めて効率的な戦いができるだろうということにほかならない。
 偵察衛星から歩兵が持つ高分解能熱線映像装置まで、あらゆるセンサーを有機的に結合し、インターネットのように必要とする情報をいつでも自由に取り出し、送ることができるなら、そしてそれを敵にはさせないようにするなら、(宇宙を含む)戦場において絶対的な支配権を握れる。そして敵の勢力に必要にして十分な戦力を、最も効果的な時間と場所において投入することにより、短時間に最少の犠牲で勝利を収められるであろう。内陸深くに潜む敵戦軍部隊を海上の艦艇から発射したミサイルで攻撃したり、大洋の中心にいる敵の艦艇を爆撃機から長射程対艦ミサイルで撃破できるようになると、従来の陸海空軍の区分も必要が無くなり、あらゆる任務に対応できる統一の軍隊が登場し、非常に効率的な運用ができるのではないかとすら考えられている。
 既に弾道ミサイル防衛においては、米海軍の「コオペレイティブ・エンゲージメント・ケイパビリティー(CEC)」という、兵器の誘導に使用できる高精度(高品質)情報を海上艦艇や早期警戒機と共有して広域対応能力を高めるシステムを中心に、イージス艦のSPY-1レーダー、空軍が運用する(弾道ミサイル)早期警戒衛星、赤外線センサーを搭載する早期警戒管制機(AWACS)、陸軍の戦域ミサイル防衛(TMD)システムに使用するGBR(地上設置型レーダー、THAAD迎撃ミサイル用)、MPQ-53レーダー(パトリオットPAC-3迎撃ミサイル用)のデータを融合する方法で、広域の弾道ミサイル警戒・迎撃態勢を構築するというSIAP(単一統合空域画像)計画が推進されている。
陸・海・空が縄張り争い
 ところが弾道ミサイル防衛という限られた分野ならばともかく、ある戦域(戦場)の統合指揮権を陸海空軍の誰が持つかという話になると、途端に縄張り争いが表面化する。戦域内においてミサイルだけではなく、航空機(有人機と無人機および巡航ミサイル)も含めた対空防衛作戦の指揮を誰が執るかという問題が生じた。この航空機という要素を加えただけで、陸海空軍が延々七年も主導権争いをすることになったのが米国防総省の「航空およびミサイル脅威に対抗する統合ドクトリン」である。それを具体化した「ジョイント・パブリケーション(統合通告)3−01」が昨年一〇月一九日に公式発表されるまでに、文書の文言をめぐって三年以上にわたって各軍が侃々諤々(かんかんがくがく)の論争を繰り広げている。この文書は、各種のセンサーと兵器の統合的運用に関する、これからのすべての統合ドクトリンの前例となるためであった。
 その作戦の性質からして空軍が主導権を取ろうと考えたのは当然であり、大気圏内と宇宙の全空間において自由な作戦権限を得ようとした。湾岸戦争や昨年のユーゴスラビア空爆作戦におけるように、統合軍の航空部門の指揮官(JFACC)には空軍が指定される可能性が高い。しかし、陸軍や海軍(海兵隊)は地表・海上における自分たちの作戦にまで空軍が侵入してくることに抵抗した。海兵隊は「カウンター・エア(対航空戦)」という用語に反対し、「シアター・エア・ディフェンス(戦域防空)」にせよと主張した。JFACCの対航空戦は、(各軍)統合作戦域の中において、地表・海上の作戦指揮官の権限を侵すことがないようにしようという考えからであった。そしてこの統合作戦域における地表・海上の指揮官は、「(JFACCによって)支援された(サポーテッド)指揮官」であり、JFACCは地表・海上の指揮官を「支援する(サポーティング)指揮官」という位置付けである。陸軍や海軍は空軍のJFACCが「白紙委任状」を手にすることを恐れた。
「同調化」で一段落
 JFACCをめぐる論議が続いていた当時、米統合参謀本部事務局長は二代続けて米海軍の中将が務め、前任者のブレア中将から引き継いだクラーク中将はもっと地表・海上部隊寄りであったが、次に現在の局長であるフルフォードJr.海兵隊中将が就任して、ようやく新たな用語が生み出され論争の解決ができるようになった。
 その新語とは「シンクロナイゼーション(同調化)」で、陸、海、空の指揮官が互いに「同調化」の努力を行うというものであった。この新用語を使うことで、対航空戦においてJFACCは「(地表・海上作戦の指揮官から支援を受ける)サポーテッド」指揮官としての位置付けが定まり、その権限内において、統合作戦域内における対航空作戦の計画立案、組織化、作戦実施を行い、優先度や実施時期の決定権を持つとされるようになった。そして統合軍指揮官が作戦域内の陸上、海軍部隊指揮官を任命した場合、これらの指揮官もその作戦域内での「サポーテッド」指揮官となり、JFACCを含むサポーテッド指揮官は互いに機動、攻撃、阻止作戦において「同調化」をせねばならないとされている。
 日本でも陸海空三自衛隊の統合的運用の必要性は以前から言われ(統合幕僚会議の設置自体がその目的のためである)、細川首相の個人的諮問委員会として設置された「防衛問題懇談会」の報告書でも強調され、また昨年度の防衛白書でも統合幕僚会議の機能の充実を謳っている。しかし、現実は米軍での議論にすら遠く及ばず、「効率的運用」を具体化するには相当の険しい道のりを経ねばならないようである。
◇江畑謙介(えばた けんすけ)
1949年生まれ。
上智大学大学院修了。
軍事評論家。
 
 
 
 
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