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1997/06/20 毎日新聞朝刊
[徹底解説ガイドライン]/6 捜索・救難 あいまいな活動範囲
 
 東京から東に約1000キロの太平洋上。1992年1月23日早朝、米国に向け飛行中のF16戦闘機が空中給油機と接触、墜落した。海上自衛隊の対応は早かった。救難飛行艇が小型浮舟に避難した乗員を発見、海上で、救助ボートを用いて救出に成功した。
 偶発的事故ではなく、特定の国と交戦した米軍機から搭乗員が脱出、救援要請してきたらどうするか。「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」見直し中間報告では、周辺有事の際にも「日米両国政府は、日本周辺海域における捜索・救難活動について適切に協力する」との方針を打ち出した。米兵を含めた遭難者を対象とし、海上自衛隊のほか、海上保安庁による活動も念頭に置いたものだ。
 しかし、人道的側面を持つこの分野にも微妙な側面がある。自衛隊などの参加度合いによっては、憲法が禁じる「武力行使との一体化」との兼ね合いが論点として浮上しかねない。
 問題は活動海域の範囲。10日の衆院安保委員会で福島豊氏(新進)の質問に、秋山昌広防衛庁防衛局長は「領海に限らず、日本周辺の公海、上空」と説明。そのうえで「戦闘地域と一線を画する地域が中心」との限定をつけた。政府は「一線を画する地域」を「戦闘に巻き込まれることが通常、予測されない地域。紛争の全般的状況、相手の攻撃能力、航空優勢の確保を総合的に判断する」(折田正樹外務省北米局長)と説明するが、戦闘地域から急きょ米軍機が移動してきた場合など、あいまいな印象をぬぐえない。
 捜索や救難を行う法的根拠も論議されそうだ。政府は阪神大震災の際も注目された災害時の自衛隊派遣条項である自衛隊法83条を挙げ「要件に該当すれば遭難した米兵の捜索、救難は可能。憲法上も問題ない」と従来、説明。だが、周辺有事の際の対米協力も「災害派遣」と同じ枠組みで説明できるのか。「根拠をすっきりさせる意味で自衛隊法改正を検討する余地はある」と政府関係者は認める。
 福島氏は政府答弁に対し「捜索、救難の際に米国の交戦国から攻撃を受けた場合はどうするのか。実際に米軍から捜索や救難の要請があった場合に『戦闘地域と一線を画せない』との理由で拒否することは現実的に可能か」と疑問を投げかける。 =つづく
 
 
 
 
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