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私はこう考える【自衛隊について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1993/05/21 毎日新聞朝刊
[記者の目]PKO国会論議 認識不足、慌てる与野党
◇逃げずに国民の疑念解け
 カンボジアでは国連平和維持活動(PKO)参加五原則の一つ「停戦の合意」が事実上破棄され、文民警察官や選挙監視要員らの安全対策が強い関心を呼んでいるのに、この問題に取り組む国会の真剣味と熱気が一向に感じられない。
 一年前、PKO協力法の成否をかけて、徹夜と牛歩の攻防を繰り広げたのに、派遣された要員の生命が危険にさらされているいま、なぜ、まともな審議をしないのか。国会は二十日から予算委員会を再開した。法の問題点、派遣継続の是非をめぐって突っ込んだ議論を戦わせ、国民の疑念を解いてほしい。国会にはその責任がある。PKO論議から逃げないでほしい。
 カンボジア情勢や日本の対応について連日、政府見解を発表している河野洋平官房長官の事務所に抗議の電話が相次いでいるという。渡辺美智雄副総理・外相(当時)らが今年初め改憲を提起した時、宮沢喜一首相とともに護憲の立場を鮮明にし、モザンビークへの自衛隊派遣に最後まで慎重だった河野氏の言動が印象に残っている人たちにすれば「停戦合意は崩れていない」などの発言は裏切られた気持ちにさせるのだろう。
 私が気になるのは、不満が直接官房長官のところに向けられている点だ。政府方針に対する不満は支持する国会議員に訴え、それが国会審議に反映していくのが議会制民主主義だ。不満が過度に直接、政府へ向けられるのは、こうしたシステムが健全に機能していないからではないだろうか。
◇開会中も即応出来ず
 カンボジア問題に対する国民の関心は高い。しかし、国会が緊迫した情勢を踏まえ集中的に質疑したのは四月二十八日の衆参両院本会議が最初だ。政府がカンボジアPKOの状況と、国連モザンビーク活動(ONUMOZ)への自衛隊派遣を報告するのと併せて開かれたものだが、中田厚仁さんが殺されて二十日過ぎていた。さらに今月に入って十一、十三両日衆院、十四日参院で本会議質問が行われたが、これも高田晴行警視ら五人が死傷してから一週間後だ。
 湾岸危機の時も国会が実質審議に入ったのは、イラクがクウェートに侵攻してから二カ月たってからだった。このとき国会の対応の遅さが問題になったが、今度のように開会中でも国会は即応しなかったのだ。
 しかも、本会議の質疑は質問者と政府側があらかじめ用意した原稿を棒読みする一方通行だから議論が深まらない。衆参両院外務、内閣、地方行政、安全保障などの委員会もPKO問題を取り上げたが、ここでも突っ込んだ論議は聞けなかった。
 問題は外交方針の根幹にかかわる。首相と全閣僚が勢ぞろいする予算委か、特別委員会で集中的に議論するのが筋だろう。
 現在のカンボジア情勢は首相自ら「当初予定していたことと違った」と認める状況になっている。昨年六月の協力法が成立した時描いた「平和が戻ったカンボジア」「安全なPKO」「日本独自の判断で業務を中断し撤収する」といった条件はことごとく崩れている。
 そして、派遣要員の安全すら十分守れない事態に直面しているのだ。政府は、自衛隊施設大隊の「輸送業務」を拡大適用して、選挙監視要員の警護をさせようとしているが、海外での武力行使を厳しく禁じながら「正当防衛」という、あいまいな概念で正当化できるのかどうか。昨年なら長時間かけ、審議した問題だ。それなのに突っ込んだ審議を先送りしてきたのは、各党がPKO論議に逃げ腰だからではないだろうか。
◇感じられない真剣味
 高田晴行警視らの死傷事件から二日後の六日、社会党の嶋崎譲副委員長が首相官邸を訪れ、山花貞夫社会党委員長名の再発防止策などを申し入れた。記者会見に臨んだ嶋崎氏は「PKO業務の中断・撤収を要求した」と説明したが、同席した川橋幸子広報局長は「そんなことは話してません」とさえぎり、「いや言った」という副委員長と押し問答を繰り広げた。これは社会党内で意思統一できていないことを世間にさらした光景といえよう。社会党はPKO協力法審議の際、PKOには自衛隊ではなく文民警察官を重点的に派遣するよう主張した。上原康助議員は十九日の衆院外務委員会で「反省すべきは反省する」と発言したが、国際情勢に対する甘い認識を露呈する結果となった。
 公明党も自民、民社両党とPKO協力法成立を推進したことが支持者の突き上げにあい、地元で立ち往生した議員も少なくないという。市川雄一書記長は十一日「政府は中断・撤収を検討すべきである」と方針転換を打ち出したが、総選挙を直前にして日本だけ引き揚げることが可能と本気で考えたのだろうか。これもあわてぶりが手にとるように分かる。
 また、民社党の大内啓伍委員長は、九日のテレビ番組で「参加五原則はもともと守りにくいと思っていた」と述べたが、五原則があるから安全だと説明されて参加した要員とその家族は、どんな気持ちでこれを聞いただろうか。
 自民党の梶山静六幹事長も十二日の政府与党首脳会議で「文民の安全問題を十分議論しなかったことを反省している」と述べている。各党ともこの問題では苦い思いが込み上げてくるのだろう。
 予算委がなかなか開かれなかったのは、政治改革法案の処理を少しでも先送りさせようとする自民、社会両党の思惑があるといわれる。しかし、それだけとは思えない。問題を真剣に考えれば、PKO問題に限った集中審議だって可能だ。むしろ、苦しい立場を率直に出して真っ正面から議論してもらいたい。国民の代表なら、目をそむけることは許されない。
<榊直樹記者・政治部>
 
 
 
 
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