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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


2001/04/25 産経新聞夕刊
【和田秀樹のべんきょう私論】敗者復活戦がない中学受験
 
◆低レベルの公立 心すさむ“負け組”
 私は、多くの公立中学の子どもの心が荒れる理由として、敗者復活戦が用意されていないことも大きいと考えている。
 たとえば、御三家の中学校を惜しくも落ちてしまったなどという場合、高校受験でもう一度頑張ろう、大学は東大に入って見返してやろうなどという心理が働くはずだ。
 しかし、現状は限りなく厳しい。
 多くの私立の中高一貫校、特に名門といわれる学校では、高校からの入学を認めていない。高校からの入学を認めていたとして、その定員は多くの場合、中学入試のときの3分の1程度である。さらに言うと、高校からの入学ということであれば、下宿してもいいという地方の中学生も受験に参加するので、競争はさらに激しいものとなる。
 実際、私が通っていた灘中高でも、中学の定員は173人なのに対し、高校からは58人、そして、高校入学者の半数近くが西日本全域からの下宿生だった。
 昔であれば、中学受験に失敗しても、名門公立高校に入れば、最終的に、たとえば東大に入る、早稲田に入る、医学部に入るという形で、中学受験の勝者を見返すこともできただろう。
 しかし、良心派と称する教育関係者やマスコミが、受験競争を廃するという名目で、次々と公立の名門校をつぶしてしまった。
 そのため、経済的に私立中学に行けない家庭の子どもや、私立中学に落ちた子どもにとっては、その後のチャンスが限りなく小さなものとなってしまったのだ。
 そうでなくても、現状の公立学校不信は、2002年からのゆとりカリキュラムの導入でさらに強まることになるだろう。
 多少経済的に余裕があって、国際的なことを含めて、世の中の流れがわかっている親であれば、可能な限り、私立中学に通わせたいと思うはずだ。レベルが低いと考えられている私立中学でも、「公立よりはまし」という形で生徒を吸収していくだろう。
 すると、公立に入っている子どもたちには、そういう私立の中学に入れなかった負け組の集まりという感じが強くなってしまう。
 子どもたち自身もそれを自覚するだろうし、世間の見る目もそうなってしまう。中学受験に参加しなかった子にしても、その雰囲気を知らず知らずのうちに察知して、自分はダメ組にいると思いこむことになるかもしれない。
 そのうえに敗者復活戦が用意されないのなら、彼らの閉塞感は相当強いものになることだろう。結果的に、心の荒れはかなり激しいものになり得る。
 逆に、ワンランク下とされていた私立中学も、その後「見返してやれ」と生徒を勉強させて素晴らしい進学実績を残している。かつて御三家不合格者の集まりとされていた巣鴨や海城などの高校から、たくさんの生徒が東大に合格している。つまり、私立では敗者復活戦が用意されているのだ。
 最近になって、たとえば都立日比谷高校が入試改革を行ったり、あるいは公立学校に行っていても、よい塾や予備校に行けば、大学受験の際の逆転の可能性も高まってきてはいる。しかし、中学の雰囲気が変わらないことには、心理的につらい学校生活を送らせることになるだろう。
 親の側の自衛策としては、やはり敗者復活戦が用意され、負け犬感を持たなくて済む私立中学、国立中学に子どもをやるしかないというのが実情なのである。
◇和田 秀樹(わだ ひでき)
1960年生まれ。
東京大学医学部卒業。
東京大学医学部付属病院精神神経科助手を経て現在、一橋大学経済学部非常勤講師、東北大学医学部非常勤講師、川崎幸病院精神科顧問などを務めるかたわらマスコミにて積極的な言論活動を展開している。精神科医。


 
 
 
 
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