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2000/12/30 産経新聞朝刊
国立二小問題 誰が子供を傷つけたのか 朝日新聞への反論
 
 東京都国立市立第二小学校で今春、卒業式の国旗掲揚をめぐり、児童が校長に土下座謝罪を求めた問題で、今月二十六日付朝日新聞朝刊のコラム欄「ポリティカにっぽん」は産経新聞の報道を批判した。
 産経が土下座問題を大々的に報じたことから騒ぎになり、子供たちの心が傷ついたという内容である。
 評論の部分はともかく、事実に関する記述は本紙の名誉にかかわる問題でもあり、反論しておきたい。
 同コラムは《四月五日の産経新聞が「児童三十人、国旗降ろさせる。校長に土下座要求。一部教員も参加」との見出しで大々的に報道したところから騒ぎが始まる》と書いている。
 「大々的に」という部分を除けば、その通りだ。当時は、小渕恵三首相の容体悪化と有珠山噴火のニュースが重なり、一面や社会面のスペースが取れず、都内版と多摩版のトップでこの問題を報じた。本当は、もっと大々的に報じたかったが、最初は東京都民の読者にしか知らせることができなかったのが実情である。
 産経報道の核心部分である「土下座要求」のくだりは、国立二小の校長が同市教育委員会に出した報告書と関係者からの取材に基づいて書いた。関係者がだれかは言えないが、この報告書には、屋上に国旗を掲げた校長を追及する教員や保護者の声に交じって、児童の「謝れ」「土下座しろ」「校長やめろ」という言葉がはっきりと記録されていた。
 これに対し、朝日コラムは《保護者の依頼を受けて青年法律家協会の弁護士たちが詳しい聞き取り調査をした。校長を囲んだ子供や立ち会った教師の多数は、「土下座という言葉は聞いていない」と答えた。が、少数は「一人の子供が土下座してもいいくらいだよ、というのを聞いた」とする》と書いている。
 青年法律家協会(青法協)がどのような調査を行ったか知らないが、われわれはあくまでも、校長が市教委に提出した報告書に信用性を置く。児童の発した「土下座しろ」という言葉は、校長の耳にいやしがたい衝撃をもって伝わったのである。事実、校長はこの言葉にショックを受け、しばらく学校を休んでいる。
 朝日は《九月二十五日、この問題の地元の集会を聞きにいってみた。国立二小卒業生の担任の先生が「子供の一人が『ぼくたち悪者のまま大人になっていくの』と悲しんでいる」と発言していた》《子供たちに行きすぎがあったとすれば、教育問題はそれらしい扱い方があるのであって、居丈高に騒げばいいというものではない。子供たちに無用な心の傷を与える》とも書いている。
 われわれはこの集会の模様も詳しくは知らない。しかし、子供たちの心が傷ついたとすれば、それは校長のせいでも産経新聞のせいでもない。ましてや、子供たちのせいではない。悪いのは、子供たちを校長批判の行動に駆り立てた国立二小の教師たちである。
 国立市の公立学校は、国旗・国歌に反対する日教組や全教などの系列にある組合に所属する教職員が多く、二小の組合加盟率は百パーセントに近い。その組合員教師らは卒業式前日の職員会議で九時間にわたって校長を追及し、式当日の朝、職員会議の模様を児童に漏らしたのである。
 そして、これが式後の土下座要求につながったことは、産経が繰り返し報じた通りである。
 国立市は今、石井昌浩教育長が中心になって、国旗・国歌の適正実施を含めた教育の正常化に懸命に取り組んでいる。今回の朝日コラムがあたかも国立二小問題の真実であるかのように独り歩きし、国立市教委や校長たちの努力に水をささないことを祈るばかりである。(石川水穂)


 
 
 
 
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