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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/06/16 産経新聞朝刊
【教育再興】(72)広島の教育(12)福岡の試み(下)
 
 福岡県高校教職員組合(高教組)内部での改革を目指した組合正常化促進連盟(正促連)だったが、「内部批判が許される状態にはなかった」として高教組を脱退。すでに脱退していた教師らでつくっていた福岡県高校教職員会連合(福高連)と合流し、四十七年十月に福岡県高校新教職員組合(新高教組)を立ち上げた。
 発足時の宣言文では「特定のイデオロギーに牛耳られた旧組合による学校管理体制」と、高教組中心の学校運営を批判。「組合への貢献度で決まる校務分掌の選挙、組合と考え方が違うというだけで行われる無言闘争や村八分、半強制的な選挙運動」に反対すると宣言した。
 発足時の組合員はわずか二百人余り。初代執行委員長となった故永田茂樹さんは五十年三月「授業をしない教師たち」と題する一文を月刊誌に寄稿した。
 「着任拒否闘争が展開され、校長は徹夜交渉により倒れ、暴力がふるわれることもあった」「朝礼で校長が職員室に入るや一斉に教師が退場する」「衆院選で高教組から立候補者が出たときには、選挙活動の動員で延べ五十九万時間以上が自習になった」
 この文章の最後に永田さんは「教育の危機に対する信念だけを頼りに、私と家族への脅迫と迫害がさらに多くなるであろうと覚悟している。小学生のわが子に、『許してほしい』と深夜そっと手を合わせて、この筆をおく」としたためた。
 
 県教委と高教組との対立は、その後も続いた。管理職試験に対して試験会場の高校でピケを張って受験者の入場を妨害し、警察官が出動する騒ぎも起きた。ストへの大量参加も相変わらずだった。しかし、昭和四十四年度には九九%を誇っていた高教組の組織率は徐々に減少した。五十年度には四分の三程度、六十年度は半分程度にまで落ち込み、そのころ、校長着任拒否闘争を終息させた。
 偏向教育などを理由に教師三人が懲戒免職処分を受けた伝習館高校で、処分取り消しを求めた訴訟は平成二年一月、最高裁判決が言い渡された。判決は「県教委の処分は社会観念上、著しく妥当性を欠くものとはいえない」として、処分は適法との判断を示した。
 「何が問題なのか、県教委は分かっていた。ただ、それを正す腹構えがなかっただけ」。正常化への突破口を開いた元福岡県教育長、吉久勝美さん(七五)は回想する。
 「黙想」。伝習館高校では今、チャイムが鳴ると発せられる学級委員長の声で全員が目を閉じ、教師の「やめ」という言葉で授業が始まる。全校朝礼時には五分以上前にそろうことが当たり前になっていて、今年四月に着任した仁田原秀明教頭が「時間ぎりぎりに行くと、生徒の前で恥をかく」と苦笑いするほどだ。
 
 新高教組は四十六年から実施された管理職試験や、四十八年の学校管理規則改正による職員会議の校長の諮問機関化などを現場から推し進め、県教委と協力しながら教育改革を進めた。
 平成九年度には、加入者が全教員の約二二%と、高教組の約二八%と肩を並べるところにまで成長。この年、創立二十五周年を記念し、組織の名称を「福岡教育連盟」と改称した。一方で、高教組も平成二年、従来の県教委との対立姿勢を改め、柔軟路線のもとに建設的な提言を行う団体として、方針を変えつつある。
 全国の流れを見ても、高教組が柔軟路線を打ち出した平成二年ごろは、日教組が定期大会で、スローガンを「反対・粉砕・阻止」から「参加・提言・改革」に切りかえるなど、組合運動が転換期を迎えていた。
 だが、小中学校の教員で組織する福岡県教職員組合(福教組)は当時、高教組の柔軟路線に異議を唱えた。その後、県教委の諮問機関に福教組の幹部を送り込むなど歩み寄りは見られるが、各支部単位では今も、非組合員に対する無言闘争が一部で続いているという。
 「教育の改革には、長い時間がかかる。けれども、正常化は時代の要請。畑を耕して、種をまくだけに終わるかもしれないが、それをするのが私たちの使命だ」と福岡県教委のある幹部。吉久さんも「処分すべきものは処分するといった毅然(きぜん)とした態度で臨まないと、教育はすぐに荒廃していく」と話す。
 この言葉は、教育の正常化に向かって動きだしたばかりの広島へのメッセージでもある。
 
■伝習館訴訟
 懲戒免職処分を受けた教師3人は昭和45年12月、「重大な事実誤認があり、懲戒権の乱用にあたる」などとして、処分の取り消しを求めて福岡地裁に提訴。1審は教師の裁量を広く認めて3人のうち2人の処分を取り消し、2審も1審判決を支持したが、最高裁は平成2年、3人とも「処分は適法」とする逆転判決を言い渡した。判決で最高裁は「学校指導要領には法規としての性格があり、教科書は学校教育法によって使用が義務づけられている」と教師の自主性に枠をはめ、「学習指導要領に逸脱したり、教科書の使用義務に違反した場合、懲戒免職処分になりうる」との判断を示した。
 
《福岡県の教育界をめぐる動き》
(昭和)
46年
12月
管理職試験実施。高教組による試験妨害
47年
10月
新高教組結成
48年
2月
職員会議を諮問機関化
60年
 
校長着任拒否闘争が終息
(平成)
2年
6月
日教組、「参加・提言・改革」のスローガンを打ち出す
8年
4月
県教委の諮問機関の委員に福教組と高教組幹部を任命
9年
4月
新高教組が福岡教育連盟に改称
 
 「広島の教育」シリーズは終わります。沢辺隆雄、松尾理也、飯塚隆志、村上栄一、小路克明、田野陽子、田井東一宏が担当しました。
 
 あなたの周辺で起きた教育問題に関する事例や試みについて、情報や意見を手紙でお寄せください。あて先は〒100−8078 東京都千代田区大手町一ノ七ノ二、産経新聞東京本社(FAXは03・3275・8750)の社会部教育再興取材班まで。


 
 
 
 
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