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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/06/11 産経新聞朝刊
【教育再興】(68)広島の教育(8)教育長文書(上)「君が代は差別」を確認
 
 広島県内の元小学校長は、現職校長だった平成四年、教職員組合の教員から同県教育長名で出された文書を見せられ、がく然とした。教員はこの文書を根拠に、校長が学校行事で実施しようとした国旗(日の丸)掲揚に反対した。校長にとって、初めて目にする文書だった。
 《日の丸・君が代については、学習指導要領が存在しているので、これを遵守しなければならない立場にある》としながら、君が代について《歌詞が主権在民という憲法になじまないという見解もあり、身分差別につながるおそれもあり、国民の十分なコンセンサスが得られていない状況もある》、日の丸については《天皇制の補強や侵略、植民地支配に援用されたこと、これからもそのあやまちを繰り返すおそれを、日の丸のもつ問題として21世紀の国際社会に生きる児童生徒たちに教育内容としてもりこまなくてはならない。その教育内容の補完があって、日の丸の掲揚ができるものと考える》としていた。
 元校長は「日の丸が侵略や植民地支配に使われた経緯などを事前に教えなければ国旗掲揚はできない−と読める。平成元年に改訂された学習指導要領に沿って国旗・国歌の指導を進めるため、校内の話し合いを重ね、年間計画をつくって『さあ、やろう』と思った矢先で、はしごをはずされたような気持ちだった」と振り返る。
 この文書は四年の県立高校の卒業式が行われる前日の二月二十八日、当時の菅川健二県教育長(現参院議員=改革クラブ)が、広島県高等学校教職員組合(広島県高教組)と部落解放同盟広島県連合会に対して示したもので、「二・二八文書」「菅川確認書」などと呼ばれる。
 
 平成三年、広島県の高校の学校現場では、国旗・国歌の指導をめぐり、県立学校校長会と広島県高教組の代表との話し合いが続けられ、同年十二月五日、日の丸を三脚で立てることなどを内容とした確認文書が交わされた。日の丸を正面には掲げず、三脚で掲揚するやり方だ。
 この後、広島県高教組は同年十二月十七日の拡大委員会決定で《日の丸はすべての学校において三脚掲揚 君が代はすべての学校において斉唱しない》という方針を出した。
 当時の広島県高教組執行委員長の小寺好氏は日の丸の三脚掲揚について、(1)日の丸の是非の議論に校長、教職員の労力が割かれ、子供たちの指導に手抜かりがあっては困る(2)このまま強制阻止と闘えば恣意(しい)的な処分が懸念される(3)日の丸そのものに思想性はなく、かつての反省をきちんとし、教育内容を深める−などの理由を挙げる。
 小寺前委員長は「高教組にとってドラスチックな提案で、私自身去就をかけて提案したもの。組合内部の反対も強く、賛否両論があって卒業式直前まで混乱が続いた」とし、「二・二八文書」について「際限ない議論によって子供たちの指導に悪影響があってはならず、互いに妥協点を見つける中で必要だった」と説明する。
 三脚掲揚であっても、教育委員会には「国旗掲揚を実施した」として報告される。その結果、広島県の公立高校の国旗掲揚率は平成三年三月の卒業式で五二・一%だったが、四年三月は九九・〇%に上がった。
 
 部落解放同盟広島県連は「二・二八文書」が出される二日前の平成四年二月二十六日、日の丸・君が代問題をめぐって、県教委と交渉している。
 その模様を掲載した解放新聞広島県版(同年三月四日付)によると、当時の県教育部長が交渉の場で、《君が代の歌詞は「天皇が統治する世の中が永久に続くように」という意味である。したがって、部落解放の道すじに逆行し、身分差別を強化する意味をもった歌である》など四項目の確認書を出している。
 「二・二八文書」について、部落解放同盟広島県連顧問の小森龍邦・前衆院議員は「当時、衆院議員だった私のところに、菅川教育長から文書がファクスで送られ、意見を聞かれた。日の丸・君が代の強制実施に絶対反対だが、学校現場に混乱を起こさない穏やかな方法として、行政の立場では、やむを得ない内容ではないか−と伝えた。広島は特に被爆県として戦争に対する反省の念が強い。日の丸を揚げるならなおのこと、歴史的経過を教えなければいけない。教育内容とし、次の世代に伝えなければならない」と話す。
 今回、菅川元教育長からは、まだ話が聞けていないが、昨夏、本紙が「二・二八文書」の存在を報じた際、「反対運動の考えも文書に盛り込み、それを説得材料とすることによって教育を推進したかった。国旗・国歌の取り扱いは地域の実情に即したものであってもいいのではないか」と説明している。
 
■国旗・国歌に関する学習指導要領の規定
 入学式や卒業式における国旗・国歌の扱いについて、現行の学習指導要領は「特別活動」の中で「入学式や卒業式などにおいては、その意義をふまえ、国旗を掲揚するとともに、国歌を斉唱するよう指導するものとする」と規定している。旧学習指導要領は「国旗を掲揚し、国歌を斉唱させることが望ましい」としていたが、平成元年の改訂で指導が義務づけられた。
 
 あなたの周辺で起きた教育問題に関する事例や試みについて、情報や意見を手紙でお寄せください。あて先は〒100−8078 東京都千代田区大手町一ノ七ノ二、産経新聞東京本社(FAXは03・3275・8750)の社会部教育再興取材班まで。


 
 
 
 
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