日本財団 図書館

共通ヘッダを読みとばす


Top > 社会科学 > 政治 > 成果物情報

私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/06/07 産経新聞朝刊
【教育再興】(64)広島の教育(4)教職員組合と念書 校長権限がんじがらめ
 
 1 学校の教育方針、学校運営、校務分掌等は職員会議で決定して行うこと
 2 主任等は原則として固定しない
 3 主任は中間管理職ではない
 4 主任手当を(組合に)拠出しない者は命免しない
 5 主任を学校要覧などに記載しない
 今年四月に行われた文部省の調査で、福山市をはじめ全県的に大型ファイル数冊分も見つかった「確認書」「協定書」と呼ばれる文書(念書)の中身である。
 これらの念書は、教職員組合側と校長との間で毎年、取り交わされる。教職員組合側によるサンプルをもとに、各学校の組合員がそのサンプルをアレンジし、校長に署名・押印を求めるという手続きが一般的だという。
 念書の中に登場する「主任制」は、学校教育法の施行規則などに基づいて校長が任免するもので、校長、教頭と教員間の連絡調整を行い、調和のとれた学校運営を行うための制度だ。広島県教職員組合(広教組)は、同福山支区の昨年七月の定期大会資料「『主任制』反対のたたかい」で「教職員支配を確立することをねらいとしたもの」「管理体制強化と民主教育推進を阻害する」と表記しているように、主任制に反対する立場を鮮明に打ち出している。
 これらの念書の発覚によって、学校の最高議決権が本来あるべき校長ではなく職員会議にあり、職員会議が学校運営の主導権を握っていた事実が明らかになった。さらに主任の任免について、校長の人事権が形がい化していた実態も分かった。
 広島市内の県立高校の校長はこう告白する。
 「もう、毎年のことですからね・・・。署名・押印は仕方がありません。どうしても認めることのできない事項だけは、内容の書き換えを組合側と交渉していますが・・・」
 
 「広島の学校では校長が校長として扱われていないような現実があるんです。教職員の中には、校長を『おい』とか『管理職』と呼ぶ人もいました」。広島県福山市中心部の市立中学校の実態を知る保護者は、こう語り始めた。子供が通っていた学校で実際にあった話だという。
 「校長は毎日、作業着姿で校庭の掃除や雑用をたった一人で黙々と続けていました。ほかの教職員が嫌がってやらない仕事を、全部一人で引き受けていた」
 影響は生徒の学校生活にもあらわれた。「平日の日中でも、教師が別の用事で不在の時があって、代わりに教壇に立つのは校長でした。放課後、生徒や保護者が相談したいと思っても、先生はもう学校にいないことも多かった」
 授業の遅れも表面化した。「勉強が半年も遅れるんです。一年間で学年の教科書を消化できない。先生に訴えたら『卒業までには間に合わせます』といわれた」。多い時は週に何度も、早々と帰宅する日が続き、おかしいと思ったこともあった−と、この保護者は苦笑まじりに話す。
 文部省の調査でも、福山市内の中学校の授業の遅れは、はっきりと数字に出ている。国が定めた一年間の標準授業時間は千五十時間。だが、福山市の中学校二十七校を平均すると、三年生は八百五十七時間しかない。しかも、この中には教師不在の「自習時間」がかなり含まれている可能性が高い−と指摘されている。
 木曽功・広島県教育長は「学校経営が教職員の多数決で決まるような状況では、無責任といわれても仕方ない」としたうえで、「是正のためには、校長が本来のリーダーシップを取り戻すことがどうしても必要」と話した。
 
 教職員との間で交わされた多数の念書。それにがんじがらめになってリーダーシップを失っていく校長。
 その背景について、別の中学校長は慎重に言葉を選びながら、「署名・押印を全面拒否すれば、校長と教職員の対立の構図が生まれる。学校運営をスムーズにするために、やむを得ない場合もあるだろう」と証言する。
 しかしその一方で、念書には署名・押印しない校長もいる。「学校経営は地域や保護者、教育委員会と協調して進めるべきだ。教職員組合とだけ約束を交わすことはおかしい」と広島市内の小学校長は話す。
 この校長は「教職員の目が、別の教職員や校長との権利関係にばかり向けられている。本当に大切なのは子供と一緒に泣いたり笑ったりすることのはず」と、教職員の教育者としての意識の低さも指摘した。
 
■念書
 広島県内の多くの小・中・高校では、職員会議を最高議決機関とする約束などについて、教職員組合の代表と校長が書面を交わしている。教職員組合側が作成し、校長に署名・押印を求めるケースが多い。勤務時間や休暇に関するもののほか、学年、教務などの主任の任免についての取り決めもある。
 文部省では「法律上、問題があると認識している」とし、詳しい実態把握と是正指導を進める方針だ。広島では、校長が作成する「校務運営規定」や「校務分掌表」でも、職員会議を最高議決機関とし、校長の権限を同列か下位に位置づけている実態が明らかになっている。
 
 あなたの周辺で起きた教育問題に関する事例や試みについて、情報や意見を手紙でお寄せください。あて先は〒100−8078 東京都千代田区大手町一ノ七ノ二、産経新聞東京本社(FAXは03・3275・8750)の社会部教育再興取材班まで。


 
 
 
 
※ この記事は、著者と発行元の許諾を得て転載したものです。著者と発行元に無断で複製、翻案、送信、頒布するなど、著者と発行元の著作権を侵害する一切の行為は禁止されています。





サイトに関するご意見・ご質問・お問合せ   サイトマップ   個人情報保護

日本財団会長笹川陽平ブログはこちら



ランキング
注目度とは?
成果物アクセスランキング
11位
(28,694成果物中)

成果物アクセス数
493,952

集計期間:成果物公開〜現在
更新日: 2017年4月22日

関連する他の成果物

1.私はこう考える【北朝鮮について】
2.私はこう考える【中国について】
3.私はこう考える【ダム建設について】
4.私はこう考える【死刑廃止について】
5.私はこう考える【公営競技・ギャンブル】
6.私はこう考える【天皇制について】
7.私はこう考える【国連について】
8.私はこう考える【自衛隊について】
9.私はこう考える【憲法改正について】
10.私はこう考える【イラク戦争について】
  [ 同じカテゴリの成果物 ]


アンケートにご協力
御願いします

この成果物は
お役に立ちましたか?


とても役に立った
まあまあ
普通
いまいち
全く役に立たなかった


この成果物をどのような
目的でご覧になりましたか?


レポート等の作成の
参考資料として
研究の一助として
関係者として参照した
興味があったので
間違って辿り着いただけ


ご意見・ご感想

ここで入力されたご質問・資料請求には、ご回答できません。






その他・お問い合わせ
ご質問は こちら から