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私はこう考える【教育問題について】

 事業名 組織運営と事業開発に関する調査研究
 団体名 日本財団(The Nippon Foundation  


1998/06/06 産経新聞朝刊
【教育再興】(63)広島の教育(3)「反日教材」 思想押しつけに疑問の声
 
 広島市内の市立小学校でこの冬、一冊の児童図書をめぐる騒動が起きた。五年生の国語の授業。クラスの担任教諭が図書を原稿用紙に書き写した「お手本」を示し、ノートに写すよう宿題を出した。
 しかし図書を見たある保護者は抗議の声を上げる。「韓国・朝鮮人に対する偏見と差別問題を取り上げながら、登場人物に日本人の悪口を言わせるなど、不必要に日本人を卑下する表現が多い」。こう感じたのだ。
 たとえば小学校の教室で教師が、ソウル五輪のビデオを子供たちに見せ、朝鮮人強制連行(徴用)について説明する場面がある。子供たちの反応が次のように書かれている。
 〈「韓国の人が日本人を目のかたきにしたわけがわかったよ。韓国の人は朝鮮人なんだろ。むかし、日本がひどいことをしたから、うらんでるんだ」「そうだ。そのとおりだ」。先生はふかくうなずいた〉(図書から引用)
 「この副教材を選んだ理由を教えてほしい」。保護者は担任らに問いかけた。答えは「六年で歴史を勉強するので、その前勉強として日韓の話を取り上げた」。「歴史の前勉強に、実話ではない文学図書を用いるのか」とたずねると、今度は返事はなかったという。
 保護者の指摘を受けて指導に乗り出した市教委は、校長が教材に使った図書の内容を知らなかったことだけを問題視した。「図書を教材として選択するときは校長も交えて十分に検討するのが当然。しかし思想的な背景はなかった」と田川修司・指導課長は言う。
 この授業は二年度にまたがって続くはずだったが、結局、三月中旬に中止になる。「五年生が理解するには内容が不適当」というのが表向きの理由だが、「やめた理由としてはおかしい。歴史をまだ習っていない子供への偏向した思想の刷り込みだったのでは…」と保護者はいまだに納得がいかない。
 
 福山市内の市立中学校では、二年生の修学旅行の行き先をめぐって問題が持ち上がった。
 鳥取県の大山へのスキー旅行から沖縄県に変更する案が昨年五月ごろ、職員会議で提案された。沖縄県を選んだ理由は「平和学習」。教師から「沖縄で日の丸を燃やした人の話を聞いてはどうか」との意見が出た。旅行の提案書の旅程例(二泊三日)では、一日目に米軍基地を巡ったあと、昭和六十二年の沖縄国体ソフトボール会場で、日の丸を引き降ろし焼き捨てた地元の運動家から聞き取りをする案が明記された。
 「反日の丸思想の押しつけ」と危機感を強めた複数の保護者が疑問の声を上げ、半年以上たった昨年十二月の職員会議で「修学旅行は学校行事なので、中立的な立場で実施すべき」と中止が決まったという。
 今年五月末に開かれたPTA総会で、保護者の質問に校長は「今は観光コースを取り入れた方向で検討している。日の丸を燃やした人の話を聞くことはない」と明言する。
 
 広島市内の県立高校一年の学級では今年一月、「日の丸・君が代を考える」授業が行われた。配られたプリントには、十六項目の「クイズ」があった。
 その一つ。「日中戦争・太平洋戦争のころ、戦場で『日の丸』の旗がないとき、兵士はどのようにして旗をつくったでしょう?」
 生徒たちが選ぶ解答は次のようになっていた。
 1・負傷のキズから流れる血で描いた。
 2・動物を殺してその血で描いた。
 3・ペンキを持参していてそれで描いた。
 教師はあらかじめ答えを用意しており、「さまざまな手段が考えられるが、負傷のキズから流れる血で描いたこともある」。そしてこう話した。
 「日の丸は『神の国 日本』のしるしであり、それを世界の隅々まで立てるのが日本人の神聖な任務だとされた」「日の丸の赤は太陽、つまり天皇であり、太陽に逆らう者は必ず負けるのだと信じられた」
 日の丸が日本のアジア侵略のシンボルとして利用されたという「害悪論」をクイズを解きながら教え込む構図が見える。
 
 この三つの事例は学習指導要領を逸脱した教育が行われているとして、文部省が是正指導している広島県の教育の一端にすぎない。
 こうした現状に明星大学の高橋史朗教授は「国際化時代の到来とともに、文化交流の大切さがいわれるようになったが、それには自国認識と他国認識をバランスよく教えることが重要だ」と指摘する。そして「お互いの文化を比べて、どちらが良いというのではなく、それぞれの良さを見つけることが真の文化交流。特に義務教育の段階では、自国の文化の良さをきっちり教えることが大切で、そうでなければ本当の国際交流は成り立たない」と話している。
 
■学校の教材
 広島県の県立高等学校等管理規則では、「副読本や解説書、資料集、参考書、ワークブックなどの教材を計画的、継続的に使用するときは、校長があらかじめ教育委員会に届け出なければならない」と規定している。市町村が定める管理規則はいずれも県に準じており、小・中学校で教材を選定するときは、やはり所管の教育委員会に届け出て承認を得る必要がある。広島市教委の場合、学校内に校長を含めた選定委員会を設け、使用のねらいや期間などを十分に議論して決定するとしている。
 
 あなたの周辺で起きた教育問題に関する事例や試みについて、情報や意見を手紙でお寄せください。あて先は〒100−8078 東京都千代田区大手町一ノ七ノ二、産経新聞東京本社(FAXは03・3275・8750)の社会部教育再興取材班まで。


 
 
 
 
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